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技術情報・コラム

岡さんの「混相流は流体シミュレーション解析で勝負!」 第3回

VOF(Volume of Fluid)法

 今回は、多くの流体シミュレーション解析ソフトウェアで採用されている 自由表面流 解析法である VOF(Volume of Fluid)法 を詳しくご説明します。

 VOF法とは、解析領域 の各 要素 に占める 流体 の体積率をF値(0≦F≦1)として定義し、この輸送方程式を解くことにより界面を求める方法です。図3.1はF値の分布例です。F値が0であれば1番目の流体(例えば空気)、F値が1であれば2番目の流体(例えば水)として、それぞれの物性( 密度 粘度 など)を考慮します。F値が0から1の間では、2つの流体の物性をF値で加重平均して考慮しますので、界面近傍の要素を小さくしないと誤差が大きくなります。


図3.1 F値の分布例

 1970年代に米国ロスアラモス国立研究所が開発・公開したプログラムコードSOLA-VOFでは、要素間のF値の移流にドナーアクセプター法が用いられていました。この方法はF値を厳密に保存しますが、界面は図3.2のように矩形で表現されてしまいます。しかしながら、現在では界面勾配を考慮した様々なVOF法が提唱されています。例えば、京都大学大学院の功刀先生が提案された MARS(Multi-interface Advection and Reconstruction Solver)法 があります。


図3.2 矩形界面

 自由表面流解析では、流体の物性として 表面張力 が重要です。VOF法では、界面に作用する表面張力を体積力として考慮するCSF (Continuum Surface Force)モデルが多く用いられています。第1回のコラムで 液液二相 流の解析事例としてご紹介した「水中を上昇していく油滴」で表面張力の影響を見てみましょう。図3.3は水と油にそれぞれの表面張力を考慮した解析事例です。一方、図3.4は水と油の表面張力をそれぞれ1/1000まで小さくした解析事例です。図3.4のように表面張力を小さくすると、上昇していく油滴は形状を保つことができなくなります。

 

図3.3 油滴上昇
 

図3.4 油滴上昇(表面張力小)

 自由表面流解析では、流体の物性だけではなく接触角も重要です。 接触角 とは、図3.5のように壁面と流体の自由表面との角度です。接触角が小さければ壁面は濡れ易い性質(親水性)、接触角が大きければ壁面は濡れ難い性質(撥水性)になります。


図3.5 接触角

 

 毛細管現象の解析事例で接触角の影響を見てみましょう。図3.6は接触角60°の親水性壁面を有する平板(左)と、接触角120°の撥水性壁面を有する平板(右)をそれぞれ1 mmの間隔で並べて、水中に挿入した場合の解析結果です。わかり易いように、平板が向かい合う面だけに接触角を設定しています。図3.6のように毛細管現象により親水性壁面を有する平板内では水面が上昇し、撥水性壁面を有する平板内では水面が下降します。このように接触角により流体の挙動は大きく変化します。


図3.6 毛細管

 それでは、今回も解析事例をご紹介しましょう。土壌への透水現象をMARS法で解析します。図3.7のように深さ30 mm、幅70 mmの土壌断面を考えます。中央部には深さ1 mmの凹みがあります。この土壌を砂地と見なし、 空隙率 を0.15、ダルシー係数を5×10-10 m2 (空隙率を0とした場合の浸透率に相当します)と設定します。この砂地の表面に、一様な高さ0.5 mm(中央部の高さは1.5 mmです)の水位を 初期条件 として、透水していく様子を見ます。


図3.7 解析対象

 図3.8は2秒間の解析結果です。見かけの透水速度は中央部で約10 mm/s になります。図3.9は砂地の保水性を高めるためにダルシー係数を2桁小さくした樹脂(接触角90°、空隙率0.15)を深さ5 mmに一部設置した解析結果です。樹脂(緑色の箇所)により透水が妨げられている様子が再現されています。このような樹脂の応用は、砂地緑化や砂漠化防止で研究されています。


図3.8 砂地への透水

図3.9 砂地への透水 (樹脂設置)

 次回はVOF法を適用する場合の注意点や最新の解析事例をご紹介いたします。

< 第2回 自由表面流解析(1) 第4回 自由表面流解析(3) >
岡森
著者プロフィール
岡森 克高 | 1966年10月 東京都生まれ
慶應義塾大学 大学院 理工学研究科 応用化学専攻 修士課程修了
日本機械学会 計算力学技術者1級(熱流体力学分野:混相流)
日本酸素(現 大陽日酸)にて、数値流体力学(CFD)プログラムの開発に従事。また、日本酸素では営業技術支援の為に商用コードを用いたコンサルティング業務もこなす。その後、外資系CAEベンダーにて技術サポートとして、数多くの大手企業の設計開発をCFDの切り口からサポートした。これらの経験をもとに、現職ソフトウェアクレイドルセールスエンジニアに至る。

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