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技術情報・コラム

岡さんの「混相流は流体シミュレーション解析で勝負!」 第6回

自由表面流解析(5)

 今回はミクロスケールの 自由表面流 の解析事例をご紹介いたします。

 近年の電子機器はスマートフォンに代表されるように小型化が進み、1mmよりも小さい電子部品が基板に高密度実装されるようになりました。このような実装では、人手による電子部品のはんだ付けでは量産できません。そのため、ペースト状のはんだ(クリームはんだ)を印刷機で基板に塗布し、そこに電子部品を配置します。そして、基板全体を加熱・冷却し、はんだを溶融・凝固させます。この実装工程はリフローはんだ付けと呼ばれています。

 今回はリフローはんだ付けによる溶融はんだ挙動を VOF法 で解析します。図6.1のように基板上の2ヵ所のランド部にクリームはんだを塗布し、角形チップ抵抗器を配置します。チップ抵抗器は0402と呼ばれるサイズで長さ0.4 mm、幅0.2 mmになります。今回の解析では、溶融はんだの 粘性係数 を100~0.020 ~100 Pa·sと変化させることで溶融を表現します。また、溶融はんだの 密度 を8000 kg/m3 、表面張力を0.40 N/m、ランドやチップ抵抗器との 接触角 を30°と設定します。


図6.1 チップ抵抗器

 次にチップ抵抗器を囲む移動領域と、静止領域の各 要素 と重ね合せる 重合格子 (overset grid)を図6.2のように設定します。チップ抵抗器の移動は6DOF(6 Degrees of freedom)運動方程式を解析することにより、溶融はんだから受ける力を考慮して並進および回転させます。


図6.2 重合格子

 図6.3は溶融はんだ表面の解析結果です。図6.3のようにチップ抵抗器の両端に溶融はんだ表面のフィレットが形成されていく様子が再現されています。図6.4は両端のフィレットを正面から見た図です。


図6.3 溶接はんだ表面(ズレなし)


図6.4 フィレット(ズレなし)

 図6.5は上からチップ抵抗器を見た図です。このようにチップ抵抗器が斜めズレで配置されてしまうことがあります。図6.6は斜めズレの溶融はんだ表面、図6.7は斜めズレのフィレットになります。このように多少の斜めズレならフィレット形成には問題ないことがわかります。



図6.5 チップを上から見た図(斜めズレ)


図6.6 溶接はんだ表面(斜めズレ)


図6.7 フィレット(斜めズレ)
 

 次に、図6.8のようにチップ抵抗器が横ズレで配置されている2通りの条件1、条件2を解析します。斜めズレはありません。図6.9は横ズレ条件1の溶融はんだ表面、図6.10は横ズレ条件1のフィレットになります。図6.9のようにチップ抵抗器は左右に揺れますが、多少の横ズレならフィレット形成には問題ないことがわかります。



図6.8 横ズレ(条件1、条件2)
 


図6.9 溶接はんだ表面(横ズレ条件1)


図6.10 フィレット(横ズレ条件1)
 

 図6.11は横ズレ条件2の溶融はんだ表面です。図6.11のように電子部品が立ってしまう現象は、米国ニューヨーク市のマンハッタン区の高層ビルに例えてマンハッタン現象(チップ立ち)と呼ばれています。このように流体シミュレーション解析でもチップ立ちが再現されることがわかります。



図6.11 溶接はんだ表面(横ズレ条件2)

 今回のコラムで自由表面流解析は終了です。計算時間など課題はありますが、最新の流体シミュレーション解析はミクロからマクロまで様々な解析対象に適用できるようになっています。

 次回のコラムからは 粒子追跡 解析についてご紹介いたします。

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岡森
著者プロフィール
岡森 克高 | 1966年10月 東京都生まれ
慶應義塾大学 大学院 理工学研究科 応用化学専攻 修士課程修了
日本機械学会 計算力学技術者1級(熱流体力学分野:混相流)
日本酸素(現 大陽日酸)にて、数値流体力学(CFD)プログラムの開発に従事。また、日本酸素では営業技術支援の為に商用コードを用いたコンサルティング業務もこなす。その後、外資系CAEベンダーにて技術サポートとして、数多くの大手企業の設計開発をCFDの切り口からサポートした。これらの経験をもとに、現職ソフトウェアクレイドルセールスエンジニアに至る。

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