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技術情報・コラム

岡さんの「混相流は流体シミュレーション解析で勝負!」 第19回

凝固・融解解析(3)

 今回も 凝固 融解 解析をご紹介します。前回までのコラムでは、水中の氷のように同じ物質の 液相 固相 を含む 流れ を対象としました。凝固・融解解析の最終回となる今回は、空気中の氷が溶けて水になるというように 気相 も含んだ 気液固三相流 を取り上げたいと思います。

  固体 が溶けて 液体 に変わる場合には、固体の体積率(固相率)が液体の体積率(液相率)に変換されます。水が凍って氷になると体積が変化するように、多くの場合には液体と固体の体積は一致しません。流体シミュレーション解析でこの体積変化を考慮することは難しいため、ここでは図19.1のように液体と固体で体積が変わらないものとして扱います。

固相率と液相率の関係化
図19.1 固相率と液相率の関係

 液体と固体が共存している 要素 では、固相率が流動限界固相率以下の要素のみで流れを解き、それ以外の要素は静止しているものと見なします。このモデル化については前回にご紹介した通りです。また、融解によって生じた液相の流れは 自由表面流 解析法を用いて解析されます。今回の解析事例では、以前に本コラムでご紹介した MARS(Multi-interface Advection and Reconstruction Solver)法 を用いています。

 それでは、今回も解析事例をご紹介したいと思います。アイスがおいしい季節になってきましたが、扇風機に当たりながらアイスを食べていると、すぐに溶けてしまったという経験をされたことがある方は多いのではないでしょうか。ここでは、室内に放置した氷と室温の風を当てた氷で溶け方がどのように異なるのか比べてみたいと思います。今回はこの解析を弊社技術部の上山が行いました。

 解析モデルを図19.2に示します。氷の潜熱は333,623 J/kg, 流動限界固相率は0.7とし、300秒後までの非定常解析を行います。


図19.2 解析モデル  ※クリックで拡大

 解析結果を図19.3に示します。この動画では固相率0.5および液相率0.5の等値面を表示していますが、(a) の無風の場合と比べて、風が当たっている (b) のほうが非常に早く溶けていることがわかります。これは、風速が大きいほど 熱伝達係数 が大きくなり、氷の 温度 が速く上昇することによるものです。


図19.3(a) 固相率と液相率の等値面(風なし)


図19.3(b) 固相率と液相率の等値面(風あり)

 最後に、同じ要領でアイスクリームを模した計算も行ってみました。


図19.4 溶けるアイスクリーム

 アイスクリームの 粘性係数 は水の10倍とし、それ以外の物性値には水や氷と同じ値を用いています。それらしい結果に見えるでしょうか。

 なお、図19.3と図19.4は時間を10倍速くして動画を作成しています。

 今回のコラムで凝固・融解解析は終了です。ご紹介しましたように、液体の凝固や固体の融解だけではなく、気相も含めた気液固三相流解析も可能になりつつあります。これによって、様々な計算対象に適用が可能です。

 次回は「 キャビテーション 流れ解析」についてご紹介します。

< 第18回 凝固・融解解析(2) 第20回 キャビテーション流れ解析 >
岡森
著者プロフィール
岡森 克高 | 1966年10月 東京都生まれ
慶應義塾大学 大学院 理工学研究科 応用化学専攻 修士課程修了
日本機械学会 計算力学技術者1級(熱流体力学分野:混相流)
日本酸素(現 大陽日酸)にて、数値流体力学(CFD)プログラムの開発に従事。また、日本酸素では営業技術支援の為に商用コードを用いたコンサルティング業務もこなす。その後、外資系CAEベンダーにて技術サポートとして、数多くの大手企業の設計開発をCFDの切り口からサポートした。これらの経験をもとに、現職ソフトウェアクレイドルセールスエンジニアに至る。
新卒採用
プロフィール(解析担当)
上山 篤史 | 1983年9月 兵庫県生まれ
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程修了
博士(工学)
学生時代は流体・構造連成問題に対する計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、既存ユーザーの技術サポートやセミナー、トレーニング業務などを担当。執筆したコラムに「流体解析の基礎講座 」がある。

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