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解析してみました「結露防止に網戸&扇風機?」02

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これってどうなの? 身近な疑問、解析してみました!

【おことわり】
各シミュレーション結果は、ある条件の下での結果であり、かつこのような結果になることを保証するものではありません。 また、この内容を参考にしたことによる事故・損害等に関しては、責任を負いかねます。

残念ながら網戸の効果は限定的

 このように、網戸は結露対策に効果的・・・と言いたいところですが、実際1℃の差でインターネットの紹介記事のように、左右の窓ガラスで結露の有無が分かれる状態になるのは、ごく限られた条件のときだけ発生するレアケースだと言えます。

 もっとも、窓ガラス表面の温度が高いということは、結露をしたとしても量としては少なくなっているはずなので、効果が全くないわけではありません。しかしながら、検証した8畳の部屋が、一般的な冬の室内の環境(22℃40%)だったとすると、窓ガラスが7.8℃を下回ると結露します。この結露が発生する温度の前後1℃の違いでは、部屋の空気が全て結露して、もうこれ以上結露しない状態になったとしても、網戸の有無による結露量の差は15g(大さじ1杯)も無く、残念ながら目に見える劇的な効果は期待できそうにありません。

 

検証2:カーテンは結露防止には逆効果だった。が・・・

 寒い冬、冷たい窓からの冷気を抑えたり、室内の暖かい空気を逃がさないようにしたり、カーテンは目隠し以上の効果があります。特にカーテンを利用した断熱、省エネ効果を紹介しているサイトなどでは、カーテンはできるだけ隙間を小さくして、窓とカーテンの間の空気を室内に入れないのが効果的と書かれています。つまり、窓とカーテンの間に冷たい空気を閉じ込めるということです。でも待ってください・・・それでは窓ガラスも冷たくなってしまいます。
 心配なので、どれだけ冷たくなってしまうのか検証してみましょう。

 まずは一般的な状況を想定して、カーテンは窓枠から2.5cm離れたところに窓枠より左右は10cm、下は20cm長い厚手のカーテンとしました。上部に隙間はありませんが、左右と下は隙間が空いています。
 やはり予想通りカーテン無しの時と比較して、窓ガラスの温度が低くなりました(図4)。つまり結露防止にカーテンは逆効果と言えます。 ただ、カーテンと窓枠の間に隙間があり、空気が密閉されていないため、温度が低くなったといっても0.3℃~0.5℃程度とごくわずかです。この程度の違いであれば、カーテンを使って少しでも寒さを防いだほうがいいのではないでしょうか。

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図4 カーテンがある場合とない場合の窓ガラスの平均温度

ただし、隙間を無くしてしまうと話は別

 それでは、カーテンを窓枠に密着させ、室内に空気が漏れないようにしたらどうなるのでしょうか? 計算上は完全に密着し窓と室内との空気の出入りはありません。ただし、カーテンを通る熱(カーテンの断熱性能)は考慮しています。
 早速結果を見てみましょう。カーテンを窓枠に密着させてしまうと、カーテンと窓との間の空気がどんどん冷やされ、結果的に窓ガラスも冷えていきます。今回の計算では、カーテンが無い時と比較して、窓ガラス表面の平均温度が約3℃低くなりました(図5・左)。断面の温度分布からも、密閉されている窓ガラスとカーテンの間の部分で極端に温度が低いことが分かります(図5・右)。

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図5 カーテンの隙間をなくした場合

ここまで違うとその影響は無視できません。一般的な冬の室内の環境(22℃40%)で、屋外の風速が2m/sの時には、カーテン無しまたは隙間ありカーテンでは結露しませんが、隙間なしのカーテンでは窓ガラス全面が結露する状態になります。ちなみに、室内の温度(窓面の断熱性)はというと、隙間なしカーテン>隙間ありカーテン>カーテン無しの順番となり、断熱という観点では隙間なしカーテンが一番効果的であると言えます。結露を犠牲にして断熱性を取るか、断熱性を犠牲にして結露防止を取るか、悩ましい選択になりそうです。

検証3:夏の風物詩、すだれは結露防止には無力だった

 検証1で屋外の風速が速ければ速いほど窓ガラスの温度が下がる傾向が分かっていました。 ということは窓ガラスに当たる風を弱められれば、結果的に窓ガラスの温度を上げることができるのではないでしょうか? そして、網戸程度でも違いがあったので、こちらも夏の風物詩、すだれを窓の外に設置してみました。設置したすだれは外壁から5cmの距離に、窓枠より少しだけ大きい大きさとして、周りは空いている状態にしました。

 さて、結果ですが、びっくりするほど変化が無い結果となりました(図6・左)。残念ながら、すだれがあってもなくても窓ガラスの温度は変わらないということです。

 断面の風速分布を確認すると、確かにすだれのところで流れが遮られているように見えますが、窓ガラスに当たる風速にそれほど大きな違いは見られません(図6・右)。周囲の隙間を無くせば、また傾向が変わるかもしれませんが、一般的な設置方法では効果が無いことが分かりました。

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図6 すだれのある場合とない場合の窓ガラスの平均温度

検証4:扇風機に劇的効果!!!もう他の結露対策は必要ない?

 検証3のすだれは企画倒れでしたが、もう一度「窓ガラスを暖める」という原点に返り、またもや夏の風物詩、扇風機に注目してみました。扇風機を使って室内の暖かい空気を当て続ければ、窓ガラスが暖かくなるのでは? と思ったからです。今回は扇風機は窓から1m離れた位置に置き、風速は1m/s(弱または微弱設定程度)としました。
 早速結果です。屋外の風速によって温度が変わるのはこれまでと同じ傾向ですが、これまでの検証よりもはるかに温度差が大きく、平均温度が最大で6℃も高くなりました(図7・左)。さらに、室内の空気が撹拌されて、天井付近に溜まっていた暖かい空気を部屋全体に行き渡らせることができるおまけ付きです(図7・右)。今回の条件では、通常、屋外の風速が2m/sを超えると結露が発生しますが、扇風機を使うと外部風速が8m/sになっても結露の心配が無い温度にすることができます。

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図7 扇風機がある場合とない場合の窓ガラスの平均温度

 ただ、この方法には1つだけ注意点があります。今回の条件は室内が暖房されている状態を想定しました。つまり、扇風機から送られる風も常に暖かいものになります。一方、夜間など暖房を止めてしまった場合は、室温も下がり、扇風機からの風も温度が下がります。そして室温が窓ガラが結露する温度近くになってしまった場合には、この方法で結露防止をすることができません。

 最後に、室温と相対湿度別の結露が発生する温度を表にまとめてみました(図8)。みなさんのアイデアで、結露が発生するところを、この温度以上にすることができれば、結露を抑えることができるはずです。

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図8 結露の発生する室温と相対湿度


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