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Tomo技術士事務所 様

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ファンのプロフェッショナルが開発に活用
特殊な現象や超音波解析にも取り組む

ファン開発やCFD技術のコンサルティングなどを行っているTomo技術士事務所の業務において不可欠なのが、ソフトウェアクレイドルの熱流体解析ツール「SCRYU/Tetra®」だ。長年あらゆるファンの研究開発に実験とシミュレーションの両面から取り組んできたという同事務所の友廣輝彦氏に、最近の解析事例や、CFDツールへの期待を聞いた。

 Tomo技術士事務所は、ファン開発を専門にしながら、その知識を生かしてCFDの技術コンサルティングなども行っている。同事務所の友廣輝彦氏は「CFDは様々な場面で使用されており、とりあえず解析結果を出すことは可能です。ですがその結果をどう分析するかにはノウハウが必要。そのためのアドバイスも行っています」と語る。そのことから講演や勉強会などで、CFDの使いこなし方などもレクチャーしている。



写真1 Tomo技術士事務所 技術士(機械部門、情報工学部門) 友廣 輝彦 氏


 友廣氏は約30年間パナソニックに勤めたのち2011年に独立し、Tomo技術士事務所を開設した。パナソニック在籍時には、様々な送風機の研究開発および各種CFDによる解析に従事した。軸流ファンや遠心ファン、クロスフローファンなどの空力性能や騒音性能について、試作、実験とCFD解析の両面から取り組んできたという。関わった商品はエアコンや石油ファンヒーター、調理機器、燃料電池など多岐にわたる。またファン設計のためのソフトウェアの開発経験もあり、ソフトウェアへの造詣も深い。独立後はこれらの経験をベースにしながら、ソフトウェアクレイドルの非構造格子系熱流体解析ソフトウェア「SCRYU/Tetra」を駆使して業務を行っている。なおパナソニック社内では、ソフトウェアクレイドルが販売を開始した当時に構造格子系熱流体解析ソフトウェア「STREAM」のユーザーであり、2000年頃、ファン解析が実用的になり始めたときには本格的にSCRYU/Tetraを使い始めたそうだ。

性能が予測できないクロスフローファン

 友廣氏は現在、プロペラファンなどベーシックなファンの開発に加え、特殊なファンとなるクロスフローファン、また流れ場中の超音波の伝播シミュレーションと言ったことにも取り組んでいる。



図1 プロペラファンの解析例 ― 近年、翼端渦の生み出す性能低下や騒音への対応が注目されている


図2 クロスフローファン ― 羽根車を二回通過する貫通流れと偏心渦が特徴


 図1はプロペラファンのシミュレーション結果だ。プロペラファンの近年のトレンドとして、翼端にできる渦がファンの性能や騒音にも影響しているということで注目されている。③番の図では、翼端渦がとくにはっきりと確認できる。

 友廣氏が取り組むテーマの一つが、クロスフローファンだ。これは家庭用エアコンなどで使用される細長い円筒状のファンで、幅の広い風を送ることができる。通常の遠心ファンとは異なり、円筒の内部を空気が通り抜けられるようになっている。エアコンの前面や上面のグリルを通じて取り込まれた空気は、羽根車の上側から羽根を通って円筒の内側に入り、内部を通過したのち、再び下側の羽根を通って外に出ていく。このような貫通流れと内部にできる偏心渦が特徴で、空気が羽根車の内部を横切るためにクロスフローファンと呼ばれる(図2)。

 クロスフローファンの特殊さについて、友廣氏は「プロペラファンやターボファンは理論的な設計方法が確立されています。ですがクロスフローファンにはそのような理論はありません」と語る。つまりクロスフローファンを使ったエアコンは各社から販売されているが、現状は試行錯誤に基づいて設計されているということだ。

 クロスフローファンの羽根車単独で流れのシミュレーションを行った結果が図3だ。無風で静止した状態から羽根車を回し始めると、やがて渦ができ、一部では空気が円筒内部に流れ、一部では外部に出ていくという流れができはじめる。はじめは複数の場所で流れが強くなるが、次第にそれぞれの流れは合体して最終的には1つになり、それが羽根車の周りを羽根車の回転より遅い速度で回るという現象が観察される。



図3 クロスフローファンを単独で回した場合の流れ場の変化
はじめに円筒外に出ていくいくつもの流れが起こるが、やがてそれらは合体して1つになり、周囲をファンの回転速度より遅い速度で回る

 このようにクロスフローファンは本来、何もないところで回すと特徴的な流れを作るファンであることがわかる。言い換えれば、このファンが生み出す流れ場は不安定であるともいえる。この周囲にケースを取り付けることで、エアコンとしての安定した流れを発生させているのだ。このような現象が起こっているということも、CFDツールを使えば容易に推測することが可能だ。「実際に羽根車を回しても、風が来たり来なかったりという現象が観察されるだけです。はじめたくさんの渦ができ、やがて一つになり、かつそれが回っているということは、単に現物を回していてもわからないのです」(友廣氏)。もちろんエアコンが生まれて何十年もたっているため、経験的に性能のよいファンは生まれている。だが、なぜそれがよい設計であるかは明らかではないのだ。

 なお友廣氏がパナソニックに入社して最初に取り組んだのがクロスフローファンであり、内部流れ計測の経験もあるという。プロペラファンやターボファンには、各部の寸法や角度、羽根の枚数などさまざまなパラメータをどうすればどのような性能が得られるか、定性的に予測できる。だが「クロスフローファン自体が非常に特殊なので、あまりきちんとした研究はされてきませんでした。現在のところ、羽根車やケーシングなどの形状だけからの性能予測はほぼ不可能と言ってよいでしょう。ですが研究を進めれば、より理論に基づいた性能予測は可能になると考えています」と友廣氏は話す。

流れ場における超音波を予測する

 ファン以外にも興味深い例として、友廣氏は流体解析ツールを使った超音波の伝播の解析も行っている。超音波を扱うシミュレーションツールは以前からあるが、流れのないところ、とくに固体中の伝播を扱うものがほとんどだった。流れ場における音波の伝播解析ツールは、友廣氏が超音波解析を始めた当時はほぼなかった。だが音は空気の粗密波であることから、市販のCFDツールでも圧縮性流体の解析で基本的に解けるはずだと考え、取り組みをスタートしたという。

 取り組んだ理由として「流れの中を伝わることにより超音波がどう変化するのか、あるいは流れが変化すると超音波にどのような影響が出るのか、実験だけではなかなか分かりませんでした」と友廣氏はいう。「シミュレーション精度との兼ね合いになりますが、傾向としてこういった流れの変化があれば、超音波の伝播がどう変わるかなど、定性的な部分で使えるようにしていきたいですね」(友廣氏)。



図4 流体中で超音波が伝播していく様子 超音波の周波数は40kHz、非定常解析
超音波の発生は、振動する壁面領域に流体の流入と流出が生じるという条件で与えている


 図4は四角い壁に囲まれた気体中で超音波が伝播していく様子の圧力コンター図になる。ここでは流れのない状態で解析している。超音波の周波数は40kHzで非定常解析である。超音波の発生条件として、振動する壁面領域から、流体の流入と流出が生じるという条件を与えており、伝播・反射・回折などがうまくシミュレーションできていることがわかる。

 CFDツールにおける超音波のシミュレーションの難しさは、「ある意味特殊な使い方をしているため事例も少なく、何が正しいかの判断が難しい」(友廣氏)ことだという。市販のCFDツールで音の解析が行われ始めたのは2000年より後だった。それ以前は音を解析したいと言っても、ベンダーの対応は「そういった使い方をするツールではない」といった雰囲気だったそうだ。「流れに比べて音の圧力の変化は非常に小さいので、その変化をきちんと捉えられるようなプログラムでなければ精度は出ません。ですがある程度定性的には得られるかなと考えています。まだ使えるとは言い切れませんが、実用には足りるようもっていきたいですね」(友廣氏)。

業務では十分な機能と精度

 友廣氏はSCRYU/Tetraの業務への貢献度について、「少なくとも自分の業務範囲では、十分な機能と精度を持っています」と話す。独立の前は実験もシミュレーションも行うことができたが、現在は実験環境はない。そのためアイデアを検討したり、顧客への提案といったときには必然的にシミュレーションを使用することになる。そういう意味では非常に役に立っていると友廣氏はいう。

 なおソフトウェアクレイドルはポリヘドラルメッシュを採用した新熱流体解析ソフトウェア「scFLOW」の提供を2016年11月に開始した。「今までと同じモデルに対する解析結果はscFLOWでも同じように出てほしいというのはありますね」と友廣氏はいう。「いずれはscFLOWに衣替えする形になるので、うまく引き継げるよう大いに期待しています」(友廣氏)。

大規模計算やAI活用への期待も

 友廣氏はCFDツールの進化へ期待することとして、大規模計算への対応やAI活用を挙げた。大規模計算が増えてきていることについては、「何千万、何億といったメッシュ数になっています。読み込みや書き出しだけでも大変になり、ハードの能力さえ上げれば対処できるという状態ではなくなっていくでしょう。そのあたりは新しい手法を取り入れていく必要があると思います。また解析結果は圧縮しても差し支えないケースもあると思います」(友廣氏)。

 また友廣氏は、AI活用による解析データ分析の効率化への期待も語った。「ファンやダクトの流れ現象においては、抵抗や損失を減らしたいという話がよく出ていきます。過去の多くの解析例を学習することで、新たに得られた解析結果データから損失の大きい領域を抽出して表示したり、損失の発生原因によって色分けしたりすることができれば、開発現場の設計者にとっては非常に有効です」(友廣氏)。

現物が分かる人がより増えれば

 また友廣氏は、ソフトウェアベンダー全般に言えることでもあるものの、実際の設計現場や実験の経験がある人をもっと増やしてほしいと要望を語った。「ソフトウェアのユーザーにとって、アドバイスをくれるベンダーの人はシミュレーションの専門家であることに加えて、実際の実験や設計の経験があるかどうかは非常に大きいです。設計現場との意思の疎通がうまくいきますし、ユーザーからすればアドバイスの重みが違います」(友廣氏)。またユーザー側の人間であっても、社内で専門にシミュレーションだけを行っている人もいる。「そういう立場の人に対しても、現場を知っている人たちのアドバイスは非常に役に立つでしょう」(友廣氏)。

 ファンを中心とするあらゆるテーマに取り組むTomo技術士事務所。興味深い事例を聞かせていただくとともに、ソフトウェアの進化への期待を聞くこともできた。ソフトウェアクレイドルはその期待に応えるべく、絶えず機能革新を続けていく予定だ。



Tomo技術士事務所

  • 設立:2011年4月
  • 事業内容:送風機の研究・開発・設計に関するコンサルティング、コンピュータによる流体解析に関するコンサルティング
  • 代表者:友廣 輝彦
  • 所在地:奈良県生駒市

 

※STREAM、SCRYU/Tetraは、日本における株式会社ソフトウェアクレイドルの登録商標です。
※その他、本インタビュー記事に記載されている会社名、製品・サービス名は、各社の商標または登録商標です。
※本インタビュー記事の内容は2017年1月現在のもので、予告なしに変更する場合があります。また、誤植または図、写真の誤りについて弊社は一切の責任を負いません。

  

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