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岡さんの「混相流は流体シミュレーション解析で勝負!」 第16回 結露解析(3)

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岡さんの「混相流は流体シミュレーション解析で勝負!」

結露解析(3)

 今回も結露( 蒸発 )解析をご紹介します。
 
 本コラムでご紹介しました 粒子追跡法(Particle Tracking Method)と結露解析を組み合わせて解析します。図16.1のように水滴を壁面で結露量に変換します。変換した粒子は消滅させ、それ以上は追跡しません。なお、壁面で結露した水分は静止し、空気中の 絶対湿度 が壁面温度の飽和絶対湿度より小さい場合は蒸発します。



図16.1 水滴から結露量への変換


 それでは、今回も解析事例をご紹介します。夏場の公園やテーマパークなどで見かけるミストスプレーを解析します。

 図16.2のように広さ10m×13mの日除け屋根がある広場を考えます。地面は深さ2cmまでアスファルトタイル、さらに 20cmの深さまでアスファルトを設置しています。日除け屋根の支柱はステンレス鋼、屋根はスレート材とします。日除け屋根の横にはミストノズルがアスファルトタイルに設置されています。



図16.2 日除け屋根がある広場


 地点は横浜、天候は晴れ、日時は8月1日AM 7:00~PM 1:00として 天空日射 も含めて日射を解析します。アスファルトタイルと日除け屋根の上面は日射吸収率0.4(透過率0)の塗装膜とします。AM 7:00における 初期条件 は気温25.7℃、 相対湿度 70%とします。常時、南東方向から風が吹いていると仮定し、べき乗則流速条件(基準高さ19.5 mの流速2.0 m/s、平坦地環境)を設定します。さらに流速条件に相対湿度70%と気温を付与し、その気温は図16.3のように時間変化するものとします。



図16.3 流速条件に付与する気温の時間変化


 図16.4はアスファルトタイル温度分布の時間変化です。図16.4のように12時には 温度 は50℃以上に達しています(素足では歩けそうにありません)。そして、日除け屋根の日影により広場の中央部は温度が40℃以下になることがわかります。



図16.4 アスファルトタイル温度分布の時間変化


 次に、12時から10分間にわたりミストスプレーを実施することを考えます。空気中にミストを浮遊させるのではなく、アスファルトタイルにミストを付着させて結露を生じさせる打ち水効果(水分の蒸発時の気化熱による地面の温度降下)を目的とします。ミストノズルから水滴径120μmのミストを 流量 1.5 L/minで噴霧します。噴霧方向は上空へ垂直、噴霧角度は90°として、落下してアスファルトタイルに付着したミストは結露量に変換します。

 図16.5はミストスプレーを実施してから60秒後までのミストと結露分布の時間変化です。アスファルトタイルに付着したミストが結露量に変化している様子がわかります。図16.6はミストスプレーを実施した時のアスファルトタイル温度分布の時間変化です。打ち水効果により温度が40℃以下になり、12時10分以降のミストスプレー終了後も効果が持続していることがわかります。



図16.5 ミストと結露分布の時間変化



図16.6 ミストスプレー実施時のアスファルトタイル温度分布の時間変化


 なお、図16.4、16.6は時間を1200倍、図16.5は時間を20倍早くして動画作成しています。

 今回のコラムで結露解析は終了です。ご紹介しましたように結露解析では壁面での結露・蒸発、固体内での吸放湿、水滴の壁面での結露量変換などを考慮することができます。これにより様々な解析対象に適用が可能です。





著者プロフィール
岡森 克高 | 1966年10月 東京都生まれ
慶應義塾大学 大学院 理工学研究科 応用化学専攻 修士課程修了
日本機械学会 計算力学技術者1級(熱流体力学分野:混相流)

日本酸素(現 大陽日酸)にて、数値流体力学(CFD)プログラムの開発に従事。また、日本酸素では営業技術支援の為に商用コードを用いたコンサルティング業務もこなす。その後、外資系CAEベンダーにて技術サポートとして、数多くの大手企業の設計開発をCFDの切り口からサポートした。これらの経験をもとに、現職ソフトウェアクレイドルセールスエンジニアに至る。

 

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