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岡さんの「混相流は流体シミュレーション解析で勝負!」 第21回 沸騰流解析(相変化を伴う自由表面流解析)

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岡さんの「混相流は流体シミュレーション解析で勝負!」

沸騰流解析(相変化を伴う自由表面流解析)

  気液二相流 解析として沸騰流解析があります。最近の飛躍的に進化したコンピューターを使うことにより、 混相流 に関する課題が流体シミュレーション解析で解決できるようになってきました。それでも、未だ解析が困難な混相流現象もあります。その1つが沸騰流です。沸騰流は熱交換器や冷却システムなど工業分野で幅広く利用されていますが、 液体 と伝熱面の温度差などにより流動様式が変化する複雑な流れです。沸騰流をミクロスケールでアプローチすると伝熱面に気泡核が生じ、その気泡が成長・離脱するモデル化が必要になりますが、普遍的に確立した解析法はありません。そのため、マクロにアプローチすることを考えます。

 図21.1のように沸騰流を 自由表面流 解析法である VOF法 により解析し、 蒸発 凝縮 の相変化をF値(流体の体積率)の増減によりモデル化します。併せて、潜熱と体積(気液の密度差)の増減を考慮します。これらの増減は局所平衡を仮定し、米国ロスアラモス国立研究所のLeeによるモデル(1980年に提案された蒸発と凝縮に関する一連の 基礎方程式 )などで表すことができます。図21.2のようにLeeによるモデルは各流体要素で液温が飽和温度(沸点)以上で高ければ蒸発、液温が飽和温度より低ければ凝縮が起きると仮定し、液温と飽和温度の温度差、気体と液体の各密度を考慮して相変化量を算出します。


沸騰流のモデル化
図21.1 沸騰流のモデル化


Leeによるモデル
図21.2 Leeによるモデル


 それでは、今回も解析事例をご紹介したいと思います。今回は一連の解析を弊社技術部の前田が行いました。まずは図21.3のように、水が入った四角い容器の下面を熱し、 液相 から 気相 への 相変化 を解析した事例を以下に示します。VOF値0.5の面を等値面で表しています。下面が熱せられ、気相(気泡)が発生し、それが 浮力 によって上昇していく様子が見られます。



図21.3 容器の下面を加熱した事例


 さて、気相から液相への相変化では物質の 密度 が変化します。気相の方が液相よりも密度が小さく、閉じた空間で液相から気相に相変化すると、その分内部の 圧力 が大きくなります。このような閉じた空間の解析事例として、図21.4のようなコーヒーサイフォンの解析を行ってみました。図21.3と同様に容器の下面を温めています。実際のコーヒーサイフォンの容器内は空気と水蒸気の混合ですが、ここでは水蒸気のみにしています。
 下の容器で気泡が発生し、それと同時に真ん中の細い管を通って水が上昇しているのが分かります。下の容器は閉じた空間なので、水が蒸発することで内部の圧力が上がり、下の容器の水を押し上げているものと考えられます。(左側の図は途中で界面の色をコーヒー色に変更しています。)



図21.4 サイフォン式コーヒーメーカー(左:VOF値0.5の等値面、右:圧力分布)


 最後にヒートパイプのように流れがあるようなモデルで、解析した事例をご紹介します。板状の 固体 の上に管径3mmのヒートパイプがあるようなモデルで、固体下面を発熱させ、パイプ内の相変化を解析します。パイプには、水が手前側の流入口より0.1m/sで入ってきて、奥側の流出口より出ていきます。固体が徐々に温められ、パイプ下部より気相が発生し、それが流れていく様子が見てとれます。さらに加熱が続くと気相が大きくなりパイプ内のほとんどを占めるようになっていきます。



図21.5 ヒートパイプの解析例(コンター:温度分布)


 次回は 2流体モデル をご紹介いたします。





著者プロフィール
岡森 克高 | 1966年10月 東京都生まれ
慶應義塾大学 大学院 理工学研究科 応用化学専攻 修士課程修了
日本機械学会 計算力学技術者1級(熱流体力学分野:混相流)

日本酸素(現 大陽日酸)にて、数値流体力学(CFD)プログラムの開発に従事。また、日本酸素では営業技術支援の為に商用コードを用いたコンサルティング業務もこなす。その後、外資系CAEベンダーにて技術サポートとして、数多くの大手企業の設計開発をCFDの切り口からサポートした。これらの経験をもとに、現職ソフトウェアクレイドルセールスエンジニアに至る。




著者プロフィール
前田 悟志 | 1985年3月 和歌山県生まれ
京都大学 大学院理学研究科 物理学・宇宙物理学専攻 博士後期課程修了
博士(理学)

大学院では、宇宙初期における磁場生成の理論的な研究に従事。入社後は、コンサルティングエンジニアとして、既存ユーザーの技術サポートやセミナー業務、受託解析などを担当。

 

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