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機構設計者なら知っておきたい! 電子部品の発熱量計算と熱設計の基礎 第3回 [LTspice] LTspice を使ってみよう (3)

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機構設計者なら知っておきたい! 電子部品の発熱量計算と熱設計の基礎

 今回はLTspiceでシミュレーションを行ってみます。

シミュレーションの実行

 パラメータの設定が終わったので、シミュレーションを実行してみましょう。メニューバーから [Simulate] [Run]を選択するか、ツールバーからをクリックすると図3.1に示すダイアログが表示されます。まずは [Stop Time] [1] と入力し、通電から1秒間の動作をシミュレートしてみます。


シミュレーションの設定
図3.1 シミュレーションの設定


OK をクリックすると、図3.2に示すように上段にグラフ、下段に回路図が表示されます。


シミュレーション実行後のウィンドウレイアウト
図3.2 シミュレーション実行後のウィンドウレイアウト


シミュレーション結果の確認

 結果を確認するために回路図のワイヤ上にマウスカーソルを移動します。そうすると、カーソルの表示が電圧プローブに変化しますので、そのままクリックしてください。その箇所の電圧変化をグラフで確認することができます。例えば、電圧源の+と 電気抵抗 を結ぶワイヤ上では図3.3のようになります。


抵抗に加わる電圧変化
図3.3 抵抗に加わる電圧変化


同様にしてマウスカーソルを電気抵抗に移動すると、カーソルの表示が電流プローブに変化します。そのままクリックすると、図3.4のように電気抵抗に流れる 電流 の変化が表示されます。


電気抵抗に流れる電流の変化
図3.4 電気抵抗に流れる電流の変化


Altキーを押しながら、マウスカーソルを電気抵抗に移動するとカーソルが温度計の形に変化します。そのままクリックすると、電気抵抗の損失の変化が図3.5のように表示されます。


電気抵抗の損失の変化
図3.5 電気抵抗の損失の変化


Ctrlキーを押しながら、グラフタイトルをクリックすると、図3.6に示す情報ウィンドウが表示されます。[Average] が平均値、[Integral] が積分値です。今回は1秒間の積分値であるため両者は等しい値となりますが、積分値の単位がJとなっていることに注意してください。


情報ウィンドウ
図3.6 情報ウィンドウ


図3.6に示す平均値が電気抵抗の損失すなわち発熱量に当たります。詳しくは別の回で説明しますが、正弦波の 実効値 はピーク値のになります。また、電気抵抗の発熱量は 電圧 の2乗を抵抗値で割った値になるため、発熱量は  となるはずです。

しかし、図3.6を見ると発熱量は約7.0 Wとなっています。このように、両者の値が異なるのは数値積分に伴う誤差によるものです。ここでは詳細を割愛しますが、LTspiceで計算を行う際は誤差の蓄積を抑えるために計算時間を数波長分としてください。図3.7は電気抵抗の損失変化を2波長分の計算時間(0.02 s)で求めたものです。このときの平均値は約7.2 Wとなり、発熱量の式から計算した値とほぼ一致した値になります。


計算時間を2波長分としたときの計算結果


計算時間を2波長分としたときの計算結果
図3.7 計算時間を2波長分としたときの計算結果


 このようにLTspiceを用いることで、回路素子の動作や発熱量を容易に求めることができます。本連載では以上でLTspiceの説明を終わりますが、より詳しく知りたい方はLTspiceに関連した書籍がいくつか発売されていますので、そちらをご参照ください。

 次回からは電子工学の基礎に入っていきます。






著者プロフィール
CrEAM(Cradle Engineers for Accelerating Manufacturing)

電子機器の熱問題をなくすために結成された3ピースユニット。 熱流体解析コンサルタントエンジニアとしての業務経験を生かし、 「熱設計・熱解析をもっと身近なものに。」を目標に活動中。

 

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