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機構設計者なら知っておきたい! 電子部品の発熱量計算と熱設計の基礎 第17回 [PICLS] 部品温度と放熱パターンの関係 (1)

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機構設計者なら知っておきたい! 電子部品の発熱量計算と熱設計の基礎

 今回は基板専用熱解析ツール PICLS で部品温度と放熱パターンの関係を見ていきます。

放熱パターンの有無による違い

 パワーデバイスは使用状況によって損失が非常に大きくなる場合があり、適切な熱設計が行われていなければ絶対最大定格を満たすことができません。パッケージの種類にも依存しますが、こういった問題に対して一般にはヒートシンクに接続する、放熱用の銅パターンに熱を逃がす、といった対策が取られます。ここでは、放熱パターンを用いた場合の温度を予測してみましょう。

 部品はダイオードとし、発熱量は第15回で求めた値(0.371 W)、部品のサイズは 7.6 mm × 4 mm × 2.8 mm とします。

 では、PICLSを起動して計算してみましょう。まず、① [寸法と構成] から基板を作成します(大きさや層数は適当な値で構いません)。続いて、② [部品] をクリックします。ダイアログにダイオードの外形サイズと発熱量を入力し、基板の任意の場所に配置します。この状態で ③ [結果] をクリックすると、図17.1のように温度分布が表示されます。



図17.1 放熱パターンなしの温度分布


 次に放熱パターンを追加します。もう一度、① [結果] をクリックして編集画面に戻ります。画面右上の作業レイヤーから ②  L1  をクリックします。続けて ③ [配線] をクリックし、ダイオードの下にマウスドラッグで矩形の放熱パターンを配置します(大きさは適当で構いません)。

④ 配置した配線部品をダブルクリックすると、配線(変更)ダイアログが表示されますので、[外形寸法] [X] [20][mm], [Y] [10][mm] と入力し 適用 をクリックします。そして、マウスのドラッグ&ドロップで図17.2 (a)の位置に配置します。この状態で ⑤ [結果] をクリックすると、部品温度が図17.2 (b)のように表示され、放熱パターンの追加によって部品温度が低下していることが確認できます。



(a) 放熱パターンのレイアウト


(b) 放熱パターンがあるときの温度分布
図17.2 放熱パターンありの場合


放熱パターンの面積の影響

 この放熱パターンの大きさを変更してみましょう。① 配線部品をダブルクリックして、[外形寸法] [X] [20][mm], [Y] [20][mm] と入力し 適用 をクリックします。そして、再度 ② [結果] をクリックします。結果を図17.3に示しますが、図17.2(b)に比べて部品温度が下がっていることが確認できます。



図17.3 放熱パターンの面積を大きくしたときの温度分布


 では、放熱パターンを大きくしていくと部品温度は下がり続けるのでしょうか。上記の要領で放熱パターンの面積を変えた計算を複数行い、部品温度と放熱パターンの面積の関係をまとめたものを図17.4に示します。この関係を把握しておくことで、目標温度に対してどの程度の放熱パターンが必要となるかを知ることができます。



図17.4 部品温度と放熱パターンの面積の関係


 この図から放熱パターンの面積が大きくなるにつれて部品温度は低下するものの、面積がある程度大きくなると、効果が小さくなることが分かります。しかし、部品温度と放熱パターンの面積の関係は、常に一定というわけではなく、基板の厚みや層数、部品の発熱量や大きさなどによって異なります。そのため、部品の実装環境に合わせて検証を行う必要がある点に注意してください。

 前回は手計算によって接合部温度(ジャンクション温度)を求めましたが、面実装部品では熱抵抗がジャンクション-リード間で定義されている場合が多く、接合部温度(ジャンクション温度)を計算するためにリード温度が必要となります。 ところが、これまでに示したようにリードを含めた部品温度は、放熱パターンの有無や銅箔厚によって大きく異なるため、事前にリード温度を仮定することは容易ではありません。このような場合には、PICLSを用いて部品やその周囲の基板を含めた温度予測を行うことが非常に効果的といえます。

次回も引き続き放熱パターンの影響をPICLSで計算していきます。






著者プロフィール
CrEAM(Cradle Engineers for Accelerating Manufacturing)

電子機器の熱問題をなくすために結成された3ピースユニット。 熱流体解析コンサルタントエンジニアとしての業務経験を生かし、 「熱設計・熱解析をもっと身近なものに。」を目標に活動中。

 

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