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機構設計者なら知っておきたい! 電子部品の発熱量計算と熱設計の基礎 第20回 トランジスタ (2)

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機構設計者なら知っておきたい! 電子部品の発熱量計算と熱設計の基礎

電界効果トランジスタ(FET)

 電界効果トランジスタ は、電流 を運ぶ媒体として 電子 正孔(電子が欠けた状態)のいずれか一方を用いるトランジスタで、配管に取りつけられたバルブのように、ゲートに加える電圧によって電流を制御します。電流を運ぶ媒体が電子または正孔のいずれか一方であることから、ユニポーラ(単極)という単語を伴って ユニポーラトランジスタ ともいいますが、英称であるField Effect Transistorの頭文字を取って、FET と呼ばれることが一般的です。

 FETは、ソース(source)・ドレイン(drain)・ゲート(gate)の三つの端子を持つ構造で、接合型電界効果トランジスタ(junction field effect transistor: JFET)や MOS形電界効果トランジスタ(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor: MOSFET)などの種類がありますが、以下では、MOSFET を例に取って説明していきます。

 MOSFETには、ソースとドレインが N型半導体 で構成される N型チャネルMOSFET と、ソースとドレインが P型半導体 で構成される P型チャネルMOSFET があります。N型チャネルMOSFETの構造とMOSFETの図記号をそれぞれ図20.1と20.2に示します。



図20.1 N型チャネルMOSFETの構造



図20.2 MOSFETの図記号


 いずれのMOSFETもドレインに負荷を接続し、ゲート電圧によってドレイン・ソース間を流れる電流を制御します。N型チャネルMOSFETでは、ゲートに正電位を加えると、図20.3に示すように絶縁膜の下に電子が引き寄せられN型チャネルが形成されます。P型チャネルMOSFETではこの逆となり、ゲートに負電位を加えると、正孔がドレインに引き寄せられP型チャネルが形成されます。いずれもゲートにわずかな電圧を印加することで、ドレインとソースの間に電流の通り道(チャネル)が形成されて電流が流れるようになり、スイッチとして動作します。



図20.3 N型チャネルMOSFETの動作


 バイポーラトランジスタ では、電流をベースに流入もしくは流出させてスイッチング動作を行うため、ベース駆動回路で損失が発生します。しかしながら、FETでは、ゲート電圧のみでスイッチング動作を行うため、ゲート駆動回路では損失がほとんど発生しません。そのため、インバータなどではFETが多く使われています。

 次回からは、トランジスタを用いた簡単なスイッチング回路の設計を行います。






著者プロフィール
CrEAM(Cradle Engineers for Accelerating Manufacturing)

電子機器の熱問題をなくすために結成された3ピースユニット。 熱流体解析コンサルタントエンジニアとしての業務経験を生かし、 「熱設計・熱解析をもっと身近なものに。」を目標に活動中。

 

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