機構設計者なら知っておきたい! 電子部品の発熱量計算と熱設計の基礎 第27回 [PICLS] ヒートシンクを用いた放熱
今回は基板専用熱解析ツール PICLS でヒートシンクを用いた冷却について見ていきます。
ヒートシンクによる放熱
これまで、放熱パターンやサーマルビアを用いた放熱設計を見てきましたが、これらの方法は部品から発生した熱をスムーズに基板へ放熱させるためのアプローチでした。
しかし、部品の発熱量が大きい場合や、基板が設置される環境の雰囲気温度が高く、温度マージンが十分に取れないような場合にこれらの方法を用いようとすると、放熱パターンの面積を非常に大きく取る必要があり、現実的な部品レイアウトを取ることが困難になります。そこで今回はより積極的な放熱対策として、ヒートシンクを用いた放熱について見ていきたいと思います。(※ 今回の内容は有償版のPICLSのみで可能な内容となります。あらかじめご了承ください。)
ヒートシンクの影響
それでは、PICLS を起動して計算してみましょう。まず、① [寸法と構成] から基板を作成します(大きさや層数は適当な値で構いません)。そして、②[部品] をクリックします。ダイアログの [外形寸法] の [X], [Y] に [10][mm] と入力し、発熱量に [5][W] と入力します。
続いて、③ [ヒートシンク] をクリックし、ヒートシンクの設定を行います。[タイプ] から [プレートフィン] を選択し、[サイズ] の [X], [Y], [Z] に [30][mm] と入力します。さらに [ベース厚み] に [5][mm], [風速] に [1][m/s] と入力して OK をクリックします。
最後に、マウスのドラッグ&ドロップでヒートシンクの位置を部品の直上に調整し、④ [結果] をクリックします。ヒートシンクありで風速が1 m/sと5 m/sの場合、ヒートシンクなしの計3パターンの結果を、図27.1 (a) ~ (c)に示します。
(a) ヒートシンクあり(風速1 m/s)の場合
(b) ヒートシンクあり(風速5 m/s)の場合
(c) ヒートシンクなしの場合
図27.1 ヒートシンクの有無や風速による部品温度の違い
これらの結果からヒートシンクの追加によって、部品温度が大幅に下がっていることが確認できます。また、ヒートシンクを設置した場合には、風速が大きいほどより温度が低下していることや、部品で発生した熱の多くはヒートシンクを経由して放熱されるため、熱が伝わりにくい基板の温度はほとんど上昇していないことも分かります。
部品に対するヒートシンクの選定は、メーカーが公開している熱抵抗から行うことができますが、大きさと配置によっておおよその能力が決まってきます。構想設計の段階では、具体的なヒートシンクの設定よりも、搭載できる大きさかどうかや、どの程度の風速が必要となるのかを大まかに把握することが重要といえます。
次回は、ヒートシンクを用いない放熱方法をPICLSで計算していきます。
著者プロフィール
CrEAM(Cradle Engineers for Accelerating Manufacturing)
電子機器の熱問題をなくすために結成された3ピースユニット。 熱流体解析コンサルタントエンジニアとしての業務経験を生かし、 「熱設計・熱解析をもっと身近なものに。」を目標に活動中。
最後までお読みいただきありがとうございます。ご意見、ご要望などございましたら、下記にご入力ください