Cradle

 

投稿一覧

Launcher (Autodesk® Revit®) 、 Launcher (ARCHICAD)の開発背景

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
Launcher (Autodesk® Revit®) 、 Launcher (ARCHICAD)の開発背景

ソフトウェアクレイドル 開発部(理学)水野 高志
Launcher(Autodesk® Revit®)
Launcher(ARCHICAD)

建築の分野で普及し始めている3次元のBIM(Building Information Modeling)CAD。その代表的な2つのCADであるAutodesk® Revit®Architecture、ARCHICADからデータを直接読み込むことができるインター フェースオプション機能を温熱気流解析ソフトウェアSTREAM®に実装しました。オリジナルデータを直接読み込むことに何故こだわったのか、どのようなメリットがあるのかを開発者であるソフトウェアクレイドル開発部 水野 に聞きました。


eto02_fig1.jpg
株式会社ソフトウェアクレイドル
開発部 水野 高志


自らの体験を元に開発された機能と聞きましたが?

 建築分野では、BIMという建物のデータを設計して作るところから現場、そしてその後の管理も含めたライフサイクルの中で一元管理をしていこうという大きな流れが起きていて、建築CADがどんどん3D化していきました。その大きな流れの中で、当然ユーザー様からも3次元データを使っていきたいという話があり、それらの要望に応えるために、開発することになりました。

 実は開発に携わる前に受託解析などで解析を担当していた時期もありました。その当時は2次元図面をお借りして、それをもとにSTREAM®の中で3次元化してモデリングする作業をしていましたが、誤解を恐れずにいいますと、「かなり面倒!」だと思っていました。3次元のデータがあれば、簡単に解析をしてしまえるのに。そんな思いを抱えながら解析をしていました。また、2次元図面からモデリングしていくと、3次元モデルを正確に再現するのが難しいケースもあります。流行のBIMCADをそのまま読み込めれば、簡単に作業が終わる!という思いは私も持っており、当時に欲しかった機能を盛り込んで開発を進めました。


mizuno_fig01.jpg
図1 ARCHIiCADからSTREAMへのデータ変換


なぜIFCではなくオリジナルデータなのか?

 今回のインターフェースの一つの特徴はオリジナルのデータを直接読み込むことができるところにあります。3次元建築CADの間では、共通のデータフォーマットとしてIFCという形式がありますが、IFCを通じたデータ交換では情報が欠落してしまうという問題がありました。たとえば、IFCでは部品面の構成などを把握できませんでした。建築CADと熱流体解析では必要な情報が違うので、データの欠落が起こりやすいようです。また、CAD上ではぴったりとくっついているように描かれているデータも、解析用のデータとして読み込むと、面が離れてしまうという問題もよくあります。面が繋がっていなければ、流体解析に使用するのは困難です。その点、オリジナルデータを利用すると、床の情報や高さ情報などを認識して、内部で修正をしていくことも可能になります。ソフトウェアの機能の作り込みで、データの不具合を修復できるところは、お客様が解析を実行していくうえで、最もメリットの大きな点ではないかと思っています。また、このオプション機能は建築CADにアドインした状態で機能しているので、図のようにメニューにSTREAM®というタブが追加される形になります。データの物性情報などもCAD上で登録ができるので、設計者がより使い慣れた環境で設定ができ、また、CADデータを渡すだけで、解析の設定情報をほかのマシンで参照することも可能になります。

開発にあたっての苦労や発見などをお聞かせください

 建築CADに触ったのは初めてでしたが、建築CADと製造業のCADの文化や、考え方の違いに戸惑いました。製造業のCADはスイープ(平面に2次元で製図し、それを押し出すこと)し、削るといった作り方をしますが、建築CADはドアの部品をそこに設置するようなイメージでモデリングが進められていきます。階段も柱も、全てが部品として存在していて建物全体をつくっていくので、端的な違いは部品点数が非常に増えるという点が挙げられます。柱の小さな部品が100個くらいずらっとあり、窓部品も同様にたくさん存在するような形になります。そのような中で、どのように部品を扱うかを考えるのが大変でした。


 また、出力される形状は、解析に使えるような精度を持っていなかったので、そこを自動で修正し、クリーニングする部分の作りこみも大変でした。逆に、解析には使われないような細かい部品が作り込まれているケースもあります。たとえば、ドアがわかりやすいと思うのですが、ノブや鍵穴まで作りこまれていたりします。そのような部品があると、余計なメッシュを作ってしまい、解析精度の低下を招くので、簡略化するという方法で回避しています。このようなSTREAM®と建築CADの部品の取り扱いの違い、文化の差は微調整の繰り返しとなり、作り込みには苦労がありました。


mizuno_fig02.jpg
図2(上)ARCHICAD のアドインイメージ
図3(下) Autodesk Revit Architecture のアドインイメージ


 部品点数が多くなってしまうという問題には、出力部品を制限するという機能のほかに、グループをいくつかに分けるという手法を導入しました。STREAM®にデータが渡った時に視覚的に取り扱いやすくなるように、階層として表現する機能を設けました。

 たとえば床や壁など、部品の種類ごとの分類をカテゴリと呼んでいますが、カテゴリ毎にグループを作り、ツリー形状にすることで見やすくなるように工夫しています。また、家具など通常は解析には利用しないようなデータに関しては、あらかじめSTREAM®にはデータを渡さないこともでき、できる限りシンプルな形で解析がスタートができるようにしています。

お客様からのフィードバック


 それから、パイロットユーザーとして、ご協力して頂いたお客様(日建設計様他)からの意見も取り入れさせていただきました。性能面での強化が中心ですが、機能面で一つ例を挙げると、建築CADから出力する部品名のカスタマイズという機能があります(ARCHICADのみ)。


mizuno_fig05.jpg
図4 部品一覧表

mizuno_fig06.jpg
図5 部品名のカスタマイズ(ARCHICADのみ)


 ユーザー様によって建築CAD上にあるどの情報を部品の名前に使うかはさまざまで、塗りつぶし名やレイヤー名、部品のIDなどを分類名として利用しているといった現場レベルでの声を聞かせて頂けたのは本当に大きいと思っています。この分類を上手に現場では使っているのですが、私はそこまで把握できてはいなかったので、実際に使って頂き要望をお聞きして、初めて実現できた機能の一つだと思っています。具体的には、ARCHICADの各情報(階層、カテゴリー、切断塗りつぶし、ID、レイヤー)を部品名に反映できるように準備してあり、どれを使用するか、順番をどの並びにするかといったことが指定できます。(図5参照)。先頭に適切な情報を選択することで、STREAM®の部品一覧表の並び替えなどの際に、思い通りに整頓されるので、作業効率の向上が期待できます。ちょっとしたことですが、開発現場ならではの声を反映した機能ではないかと思います。性能面でも、実際の物件を使ってのトライアンドエラーを繰り返してきたおかげで、実用的な性能を実現できたと考えています。

結果どのようなものができましたか?


 その他には機能としては、物件の地理情報を入力できるプロジェクト設定や、データの簡略化機能があります。

 簡略化の例を一つ挙げますと、窓ガラスをどのように扱えば良いか?という問題によく遭遇します。温熱環境解析をする場合、CAD図面上に描かれた数センチの窓ガラスの厚みをそのまま解析に用いると、あまり重要でない部分に大きな計算コストを費やしてしまう一因となります。そこで、簡略化機能を実装し、厚みを壁厚に合わせたモデルにも自動で変換できるように工夫しています。


mizuno_fig05.jpg
図6 プロジェクト設定画面


機能の構成や簡単な使い方を教えてください

 使っていくうえでのコツとしては、一般論になってはしまいますが、解析に不必要なデータは極力省いた状態でCAD側からSTREAM®に渡すことが重要になります。また、CADには検索、抽出などの優れた部品管理機能がありますので、それらの機能と連携して解析条件設定などをしていただけると、よりスムーズに作業が進められると思います。


mizuno_fig06.jpg
図7 簡略化機能 
― 壁、床をスケッチ部品、ドア、窓を切抜き部品に変換、その他をポリゴンとして取得


最後にユーザー様にひとことお願いします

 今後、BIM文化の浸透に伴い、三次元での建築CADデータの利用はますます広がりを見せていくと思います。オプション機能を使って、CADデータをうまく利用して、環境設計に役立てて頂ければ嬉しいです。ご要望などがありましたら、ぜひお聞かせください。



※STREAMは、日本における株式会社ソフトウェアクレイドルの登録商標です。
※その他、本インタビュー記事に記載されている会社名、製品・サービス名は、各社の商標または登録商標です。
※本インタビュー記事の内容は2013年9月現在のもので、予告なしに変更する場合があります。また、誤植または図、写真の誤りについて弊社は一切の責任を負いません。

 


PDFダウンロード

 

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ピックアップコンテンツ