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もっと知りたい! 熱流体解析の基礎30 第4章 伝熱:4.3 熱の移動形態

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もっと知りたい! 熱流体解析の基礎

4.3 熱の移動形態

  の移動形態には 熱伝導 対流熱伝達 熱放射 の3種類があります。図4.5に示した部屋を例に取ると、床と身体が接している部分で床暖房の暖かさを感じるのは熱伝導、エアコンから吹き出される暖房を暖かく感じるのは対流熱伝達、ストーブを温かく感じるのは熱放射によって熱が伝わるためです。

次節からはそれぞれの伝熱形態について、もう少し詳しく見ていきたいと思います。


熱の移動形態
図4.5 熱の移動形態


4.4 熱伝導

 物体の 温度 が均一でない場合には、物質を構成する原子や分子、自由電子の運動によって、温度が高いほうから温度が低いほうへと が伝わっていきます。このような熱の伝わり方を 熱伝導 といいます。熱を伝える原子や分子はある場所を中心に振動しているだけで、物質自身は移動しません。固体 や静止した 流体 では、熱伝導のみによって熱が伝わります。

 図4.6に示すようにフライパンで目玉焼きを焼く場合、コンロからの熱は直接卵を熱するわけではなくフライパンを熱しています。しかし、熱伝導によって熱がフライパンの内部を伝わるため、卵にも熱が伝わり次第に目玉焼きが焼けていきます。


熱伝導の例
図4.6 熱伝導の例


 ところで、熱伝導によって生じる 熱流束 q [W/m2] は、物質内部の 温度勾配 dT/dy [K/m] に比例することが知られており、この関係を示したものを フーリエの法則 といいます。熱流束と温度勾配の比例係数は、熱の伝わりやすさを表す 物性値 熱伝導率 λ [W/(m·K)] です。これらの関係をまとめると、以下の式のようになります。



フーリエの法則
図4.7 フーリエの法則


右辺のマイナス記号は、温度が高いほうから温度が低いほうへと熱が伝わること、すなわち温度勾配と逆の向きに熱が伝わることを表しています。

 フーリエの法則から温度勾配が等しければ、熱伝導率が大きな物質のほうがより多くの熱を伝えられることがわかります。プロの料理人が銅製の調理器具を使っていることがありますが、これは銅の熱伝導率が高く器具が均一に温まること、そして熱が食材によく伝わることが理由のようです。

 もっと知りたい   ニュートンの粘性法則とフーリエの法則

3.3.1 粘性と非粘性 で紹介した ニュートンの粘性法則 は、以下の式によって表されます。



先ほどのフーリエの法則と見比べると、式の形がよく似ていることが分かります。

 ニュートンの粘性法則は せん断応力 、すなわち単位面積あたりの力を表したものです。一方、フーリエの法則は熱流束、すなわち単位面積あたりの 熱量 を表したものです。通過する「量」は異なりますが、両者は力と熱の伝わり方に 相似性 アナロジー )が成り立つことを表しています。





著者プロフィール
上山 篤史 | 1983年9月 兵庫県生まれ
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程修了
博士(工学)

学生時代は流体・構造連成問題に対する計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、既存ユーザーの技術サポートやセミナー、トレーニング業務などを担当。執筆したコラムに「流体解析の基礎講座」がある。 

 

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