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もっと知りたい! 熱流体解析の基礎77 第7章 乱流計算:7.3.3 ハイブリッドモデル

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もっと知りたい! 熱流体解析の基礎

7.3.3 ハイブリッドモデル

 RANS LES のうち、実用計算の大半を占めているのはRANSであり、LESはその計算負荷の大きさから限られた場面で使われるに留まっています。しかしながら、現実にはLESを用いなければ妥当な結果を得ることが難しい問題も存在します。

 LESを困難にしている最大の理由は壁面近傍の メッシュ を非常に細かくしなければいけないことです。壁面近傍のメッシュが十分に細かく、その付近の流れが解像されているLESのことを wall-resolved LES といいますが、現在の計算機性能ではその規模の解析を行うことは容易ではありません。そのため、計算規模を抑える目的で、壁面付近の領域を直接解像するのではなくモデル化されたLESによって計算する wall-modeled LES という試みが行われています。その一つがRANSとLESを組み合わせた ハイブリッドモデル と呼ばれるモデル化手法です。

 ハイブリッドモデルの一つに デタッチドエディシミュレーション、またはその英語表記(Detached Eddy Simulation)の頭文字を取って DES と呼ばれる方法があります。これは、壁面近傍の領域をRANS、それ以外の壁から離れた領域をLESによって計算することによって計算負荷を抑える方法です。なお、壁から離れた部分ではLESと同等の計算となるため、非定常解析 が必須となります。



図7.21 DESの概要


この「Detached Eddy」とは「(壁から)切り離された渦」という意味です。DESでは、この壁から離れた渦を計算することを主目的としています。一方で、壁面近傍の小さな渦は直接計算せず、RANSに基づいた計算が行われます。このようにすることで、非常に細かいメッシュが要求される壁面近傍のメッシュを粗くすることができ、LESに比べて計算負荷を大幅に下げられます。

 その一方で、渦の発生源である壁面近傍をRANSに頼っていることから、一番重要な部分が妥当な計算となっていないという意見や、時間平均モデル であるRANSと 空間平均モデル であるLESという、異なる平均化に基づいた手法の組み合わせに対する指摘があることも事実です。

 しかし、理論面における脆弱さはあるものの、実用的な立場からはDESを用いることによって、RANSでは再現できない流れをLESよりも少ない計算負荷で再現できる場合もあり、現状は有望な選択肢の一つといえるでしょう。

 なお、DESをはじめとしたハイブリッドモデルの概要や計算例については、技術コラム「パッと知りたい!人と差がつく乱流と乱流モデル講座」でも詳しく説明していますので、こちらも併せてご覧ください。





著者プロフィール
上山 篤史 | 1983年9月 兵庫県生まれ
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程修了
博士(工学)

学生時代は流体・構造連成問題に対する計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、既存ユーザーの技術サポートやセミナー、トレーニング業務などを担当。執筆したコラムに「流体解析の基礎講座」がある。   

 

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