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事例で学ぶ!これだけは知っておきたい最適化の使い方~熱流体編 第31回 最適化オプションを用いた軸流送風機設計(2)

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事例で学ぶ!これだけは知っておきたい最適化の使い方

EOoptiにより軸流送風機の設計を支援する方法を紹介しています。前回は、軸流送風機設計の考え方を説明しました。今回は、設計諸元をもとにモデルを作成し、EOoptiにより実験計画を行います。

設計諸元および目標は下記とします。 流量が100m3/min時に静圧が200Paとなり、翼トルクができるだけ小さくなるような翼の取付角および反り率を求めます。回転速度は1500r/mで、羽根車外径は620mm、同じく内径は310mm、翼数は7枚で翼弦長は150mmとし、簡単のため翼断面形状は内外径ともに同じ形状とします。なお、翼断面形状については、本来は円筒面で規定しますが、今回は一般的な3次元CADでも設計できるように翼断面形状を平面で規定して羽根車を作成します。

前回説明したような設計計算あるいは、設計目標に近い製品が実在する場合、その製品の寸法を参考にするなどして、初期設計を行います。紙数の都合で詳細は省略しますが、初期設計は、図2.1に示す翼取付角が16度で反り率が2%の羽根車とします。



図2.1 羽根車初期設計品外観


初期設計の羽根車を3次元CADで作成したら、次に管路と組み合わせてSCRYU/Tetra用のモデルを作成します。羽根車は7枚翼であるため、図2.2に示すような1/7回転対称モデルとします。設計諸元の「流量100m3/min時に静圧200Pa」については、力の方向は羽根車に向かう方向で大きさが速度の2乗に比例し、流量が100/7m3/minで静圧が200Paとなるような体積力を与える部分を用意します(1/7対称モデルのため)。所定の流量で所定の静圧が体積力として与えられるため、解析結果から流量を求めて、設計目標に達していることが確認できれば静圧についても設計目標を達することになります。羽根車の回転についてはALE法を用いた定常計算とします。以上のようなモデルでSCRYU/Tetraで解析した結果から流量と翼トルクを求めて、7倍にして表示したものが図2.3です。
図2.3を見ると、流量が92m3/minと、設計目標の100m3/minよりも低い値となっていますが、翼取付角や反り率を大きくすることで目標に達する可能性が十分あるため、翼取付角は16~26度、反り率は2~7%の範囲で変化させて、最適値を探索してみます。
設計変数は、翼取付角と反り率の2種類であるため、サンプル数は(2+1)×(2+2)=12となります。EOoptiを起動し、設計変数を翼取付角と翼反り率に、また目的関数を流量と翼トルクにして、実験計画を作成します。
得られた実験計画をもとに、3次元CADで各モデルを作成し、SCRYU/Tetraで解析を行い、流量と翼トルクを求めます。


図2.2 SCRYU/Tetra 用モデル



図2.3 初期設計品の特性


すべてのモデルの流量と翼トルクが得られたら、EOoptiに入力し、目的関数の目標として、流量は最大値、翼トルクは最良値を探索として、最適解を探索させると、設計目標を満足するような翼取付角と反り率の組み合わせが得られます。
 
次回は、最適解探索結果について説明します。


【参考文献】流体機械 原田幸夫 朝倉書店、ユーザーズガイド 最適化編(オプション)





著者プロフィール
御法川 学 氏 | 法政大学 理工学部 機械工学科 教授
環境計量士(騒音・振動) 1992年 法政大学大学院 工学研究科 機械工学専攻

1992年 株式会社荏原総合研究所 入社
1999年 法政大学工学部 助手
2001年 東京工業大学にて学位取得、博士(工学)
2004年 法政大学工学部 助教授
2010年 法政大学理工学部 教授




著者プロフィール
伊藤 孝宏 氏 | オリエンタルモーター株式会社 技術支援部主席研究員

1982年 筑波大学基礎工学類卒業。新日本製鉄株式会社に入社、加熱・冷却設備の開発に従事
1988年 オリエンタルモーター株式会社に入社、送風機の羽根・フレームの開発・設計に従事
2008年 法政大学にて学位取得、博士(工学)
2014年1月現在、オリエンタルモーター株式会社 技術支援部主席研究員

 

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