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事例で学ぶ!これだけは知っておきたい最適化の使い方~熱流体編 第34回 最適化オプションを用いた遠心送風機設計(2)

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事例で学ぶ!これだけは知っておきたい最適化の使い方

EOoptiにより遠心送風機の設計を支援する方法を紹介しています。前回は、遠心送風機設計の考え方を説明しました。今回は、設計諸元をもとに初期設計を行い、次いで、EOoptiによる実験計画と、得られた組み合わせによるモデルの作成と解析を行います。
 
設計諸元および目標は下記とします。
流量が50m3/min時に静圧が1000Paとなるような管路に接続した際に、羽根車のトルクが小さく、流量が大きくなるような羽根車の入口角および出口角を求めます。回転速度は1500r/mで、スクロール外形寸法は図2.1とします。羽根車の入口角は、図2.2で羽根車内径円と翼中心線の交点において翼中心線の接線と内径円の接線とが成す角です。同様に、出口角は、羽根車外径円と翼中心線の交点において翼中心線の接線と外径円の接線とが成す角です。 遠心ファンは、放射状の翼を持つ羽根車と渦巻き状のスクロールとから構成されます。図1.1に示す遠心ファン内部の静圧分布をもとに動作を説明します。羽根車中心から吸い込まれた空気は、羽根車とともに回転することにより遠心力が加わり、圧力が上昇します。図1.1からも羽根車中心から外周に向かうにしたがって静圧の大きさを示すコンターは緑色から黄緑色に変わり、羽根車内部で静圧が上昇していることがわかります。一方、羽根車から流出した空気は、羽根車回転方向に旋回する高速の流れとなります。この高速の空気を、断面が徐々に拡大するスクロールにより減速させます。ベルヌイの定理により動圧と静圧の和は一定であるため、減速により静圧が上昇します。図1.1からもスクロールの拡大とともに静圧の大きさを示すコンターは黄緑色から黄色に変わり、圧力が上昇していることがわかります。

最適化はEOoptiとSCRYU/Tetraで行うため、最初に概ね設計目標を満足するようなものを初期設計として用意します。もし、設計目標に近い製品が実在する場合、その製品の寸法を参考としてもかまいません。ここでは、参考文献の「流体機械(原田幸夫、朝倉書店)」を参考に羽根車を設計してみます。



図2.1 スクロール外形寸法



図2.2 遠心ファン各部寸法


始めに全圧を求めます。設計流量およびスクロール吐出し口寸法から流速を求めると全圧PTは、以下のようになります。ここで、空気密度は1.2kg/m3 としています。


羽根車外径、内径、翼数は、下記の式で求めます。


ここで、ηは効率、Nは回転速度[r/m]、ρは空気密度[kg/m3 ]です。ここでは、η=0.84、ρ=1.2としました。なお、(2)式の羽根車内外径の比0.67は設計諸元により異なります。詳しくは参考文献を参照願います。羽根車厚みは、羽根車外径の1/4としました。

(1)~(3)式から寸法を求め、翼入口角・出口角は90度として羽根車を設計すると、図2.3に示した形状・寸法となります。



図2.3 羽根車外形寸法


次に、得られた羽根車をスクロールに組込み、SCRYU/Tetra用のモデルを作成します。スクロール先端に図2.4に示すような体積力を与える部分を設けます。流量が50m3/minで圧力1000Paを発生するように体積力を設定し、解析結果から流量が50m3/min以上得られていれば、設計諸元を満足することになります。図2.3の羽根車との組み合わせで解析した結果は、流量が51.9m3/minとなり、設計諸元を満足します。ただし、図2.2の羽根車は直線状の翼であるため、翼トルクが19.2Nmと大きな値になります。そこで、翼入口角と出口角を設計変数として、流量が最大化し、羽根車トルクが最小化する条件を探索します。入口角が8~20度、出口角が15~45度として、EOoptiで実験計画を行います。得られた入口角と出口角の組み合わせで、羽根車を設計し、SCRYU/Tetraで解析します。次いで、解析結果から流量と羽根車トルクを目的関数として、流量が最大、羽根車トルクが最小となる条件を探索させれば、最適設計案が得られます。



図2.4 SCRYU/Tetra解析モデル



ここで、羽根車内径、外径、入口角、出口角から翼中心線の形状を作図する方法を説明します。図2.5は翼中心線の形状を示したもので、図中、Diが羽根車内径、Doが外径、βiが入口角、βoが出口角です。始めに、xy軸と原点を中心としたDi、Doの同心円を作図します。次に、翼中心線の半径Rを下記の式で求めます。


翼中心線の円弧の原点は、原点を中心とした下記の式で表される半径rの円とy軸との交点となります。


(4)式でRを求め、次いで、(5)式でrを求めた後、原点を中心として半径rの円を作図し、先の円とy軸との交点を原点として半径Rの円を作図すると、羽根車内径Diから外径Do間の円弧が翼中心線となります。
 



図2.5 翼中心線作図



すべてのモデルを作成し、解析を行い、EOoptiに結果を入力すると、最適解を探索できます。
次回は、最適解探索結果について説明します。
 


【参考文献】流体機械 原田幸夫 朝倉書店、ユーザーズガイド 最適化編(オプション)





著者プロフィール
御法川 学 氏 | 法政大学 理工学部 機械工学科 教授
環境計量士(騒音・振動) 1992年 法政大学大学院 工学研究科 機械工学専攻

1992年 株式会社荏原総合研究所 入社
1999年 法政大学工学部 助手
2001年 東京工業大学にて学位取得、博士(工学)
2004年 法政大学工学部 助教授
2010年 法政大学理工学部 教授




著者プロフィール
伊藤 孝宏 氏 | オリエンタルモーター株式会社 技術支援部主席研究員

1982年 筑波大学基礎工学類卒業。新日本製鉄株式会社に入社、加熱・冷却設備の開発に従事
1988年 オリエンタルモーター株式会社に入社、送風機の羽根・フレームの開発・設計に従事
2008年 法政大学にて学位取得、博士(工学)
2014年1月現在、オリエンタルモーター株式会社 技術支援部主席研究員

 

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