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流体解析の基礎講座 第5回 第3章 流れの基礎(2):3.1.3 流線と流脈線、流跡線

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流体解析の基礎講座

3.1.3 流線と流脈線、流跡線

  流れ をより直観的に表したものに流線や流脈線、流跡線があります。
  流線 はある瞬間における流速ベクトルを滑らかに結んだ線のことです。ある瞬間における流れのスナップショットと言えるでしょう。



図3.4 流線


  流脈線 は空間中のある点を通過した流体粒子を連ねてできる曲線のことです。煙突から出た煙の軌跡がこれに相当します。



図3.5 流脈線


  流跡線 はある流体粒子がたどる軌跡のことです。例えば、空気中に風船を浮かべたときにその風船がたどる軌跡のようなイメージです。



図3.6 流跡線


 流れに時間変化がない場合(このような流れは 定常 流れと呼ばれます)には流線と流脈線、流跡線は完全に一致します。ところが流れに時間変化がある場合(このような流れは 非定常 流れと呼ばれます)にはこれらは異なる結果になることに注意が必要です。
 例えば、ある時刻から10秒間南向きの風が吹き、その後10秒間東向きの風が吹いたとします。このときに流線と流脈線、流跡線がどのように異なるかを見てみたいと思います。
 流線の場合、それまでの流れには関係なくその瞬間の流速ベクトルによって線が決まります。そのため、最初の10秒間では一様に南向き、その後の10秒間では一様に東向きの線となります。



図3.7 流線の例


 流脈線の場合、最初の10秒間は南向きに直進します。その後、流れが東向きに変わると、それまでに描かれていた線もこれから描かれる線も東向きに動き出すため、20秒後には以下の右図のように折れ曲がった線となります。



図3.8 流脈線の例


 流跡線の場合、同じく最初の10秒間は南向きに直進します。その後、風向きが東向きに変わると、その地点から先の動きが東向きへ変わります。そのため、20秒後の結果は以下の右図のように折れ曲がった線になります。



図3.9 流跡線の例


 解析や実験の結果を可視化する場合には、表現の違いによって結果が異なることをよく理解しておくことが重要です。

 次回は、「第3章 流れの基礎(3)」についてご説明したいと思います。





著者プロフィール
上山 篤史 | 1983年9月 兵庫県生まれ
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程修了
博士(工学)

学生時代は流体・構造連成問題に対する計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、既存ユーザーの技術サポートやセミナー、トレーニング業務などを担当。

 

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