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流体解析の基礎講座 第19回 第5章 熱流体解析の基礎:5.9.3 直接数値シミュレーション

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流体解析の基礎講座

5.9.3 直接数値シミュレーション(Direct Numerical Simulation: DNS)

  乱流 の解析を行うときに一番シンプルで厳密な方法は 基礎方程式 に対して一切のモデル化を行わずにそのまま解析を行うことです。このような方法を 直接数値シミュレーション(Direct Numerical Simulation) の頭文字をとって DNS (ディーエヌエス)といいます。
 原理的には最もシンプルですが、DNSによって流れを正確に解くためには、分裂を繰り返してできる最小スケールの を解像できるほどの極めて細かい メッシュ を用いる必要があります。この最小の渦スケールは コルモゴロフスケール と呼ばれ、粘性の大きさによって決まります。 粘性 の影響が小さい レイノルズ数 の大きい流れほど最小の渦スケールは小さくなり、解析に必要なメッシュ数も多くなります。3次元のDNSで必要となるメッシュ数の目安は以下の式によって知ることができます。



ここでNはメッシュ数、Reはレイノルズ数を表しています。この式をいくつかの流れに当てはめてみると図5.26のようになります。



図5.26 レイノルズ数とメッシュ数の関係


 この結果から比較的レイノルズ数が低い流れであっても数千億以上の規模のメッシュが必要となることがわかります。
 このように2014年現在のコンピュータの演算速度と記憶容量では計算規模の観点からDNSを行うことは容易ではありません。そのため、DNSの多くは研究目的で使用され、ほとんどの場合、実用計算では前述した RANS LES によるモデル化が用いられます。

終わりに

 本連載では19回にわたって熱流体解析( Computational Fluid Dynamics: CFD )に関する用語や基礎となる考え方について説明をさせていただきました。拙い文章のコラムに最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
 近年の計算手法の発達やコンピュータ性能の急速な進歩の影響もあり、熱流体解析ソフトウェアは設計・製造プロセスにおいてなくてはならないツールの一つになりつつあります。そして、それに伴い業務で熱流体解析に携わる方も増えてきています。熱流体解析ソフトウェアを使いこなすことは決して簡単ではありませんが、この連載の内容が読んでいただいた皆様にとって、熱流体解析に対するハードルを下げる一つのきっかけになれば幸いです。





著者プロフィール
上山 篤史 | 1983年9月 兵庫県生まれ
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程修了
博士(工学)

学生時代は流体・構造連成問題に対する計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、既存ユーザーの技術サポートやセミナー、トレーニング業務などを担当。

 

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