機構設計者なら知っておきたい! 電子部品の発熱量計算と熱設計の基礎 第5回 インピーダンス (1)

今回は前回よりも少し複雑な交流回路について考えていきます。
RLC直列回路
図5.1に示す 電気抵抗 R と インダクタンス L のコイルと キャパシタンス(静電容量)C の コンデンサをつないだ直列回路を考えます。このような回路を3つの頭文字を取って、RLC直列回路 といいます。なお、電気抵抗の単位は Ω、インダクタンスの単位は H(ヘンリー)、キャパシタンスの単位は F(ファラッド)です。
図5.1 RLC直列回路
インピーダンス
図5.1の回路に交流電圧 V を印加し、電流 I = Imejωt が流れている場合を考えてみます。電気抵抗の両端に発生する 電圧 VR は オームの法則 から式(5.1)で与えられます。
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(5.1) |
コイルの両端に発生する電圧 VL は、インダクタンスとコイルを流れる電流の時間変化に比例し、式(5.2)で与えられます。
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(5.2) |
コンデンサの両端に発生する電圧 VC は、ある時間までに蓄積された電荷に比例し、キャパシタンスに反比例するため、式(5.3)で与えられます。
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(5.3) |
直列回路では、全体の電圧は各電圧の和で与えられます。したがって、電圧と電流の関係は式(5.4)のようになります。
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(5.4) |
式(4.4)の [] の中を Z と表すことにすると、Z は式(5.5)のように書き換えられます。
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(5.5) |
この Z を インピーダンス といいます。また、第1項の R は電気抵抗のインピーダンス成分で レジスタンス と呼ばれます。また、第2項 XL= ωL はコイルのインピーダンス成分で 誘導リアクタンス、第3項 XC= 1/ωC はコンデンサのインピーダンス成分で 容量リアクタンス と呼ばれ、これらをまとめた X は単に リアクタンス と呼ばれます。このインピーダンスを用いることで、電圧と電流の関係は式(5.6)のようにまとめられます。
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(5.6) |
式の対応関係を見るとインピーダンス Z は、オームの法則の電気抵抗に相当することがわかります。ここから、電流は式(5.7)で与えられます。
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(5.7) |
この式より、電流は 周波数 によって変化することがわかります。特に ωL=1/ωC、すなわち の関係が成り立つときにインピーダンスは純粋な電気抵抗と等しくなり、最小値をとります。このときに電流が最大となりますが、この周波数
のことを 共振周波数 といいます。
次回は、インピーダンスが電圧と電流の位相差に及ぼす影響を考えていきます。
著者プロフィール
CrEAM(Cradle Engineers for Accelerating Manufacturing)
電子機器の熱問題をなくすために結成された3ピースユニット。 熱流体解析コンサルタントエンジニアとしての業務経験を生かし、 「熱設計・熱解析をもっと身近なものに。」を目標に活動中。
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