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機構設計者なら知っておきたい! 電子部品の発熱量計算と熱設計の基礎 第14回 ダイオードの選定と損失計算 (1)

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機構設計者なら知っておきたい! 電子部品の発熱量計算と熱設計の基礎

 今回からダイオードの説明に入っていきます。

ダイオードとは?

 ダイオード とは一方向に電流を通過させる素子で、回路図では三角形と直線を組み合わせた図14.1の回路記号で表されます。電流の向きは三角形の頂点の方向となるため、この図では左から右に向かって 電流 が流れることになります。



図14.1 ダイオードの回路記号


ダイオードの絶対最大定格と電気的特性

 ダイオードの形状は大きくリード挿入型と面実装型に分けられます。リード挿入型ダイオードとは、図14.2に示すようなリード線を持つダイオードで、電流は帯のある方向に流れます(図14.2では左下から右上方向)。一方、面実装形ダイオードは図14.3に示すようなダイオードで、電流は色がつけられた方向に流れます(図14.3では左下から右上方向)。ここでは面実装形を例に選定方法を説明していきます。また、今回用いるダイオードの 絶対最大定格 と電気的特性を抜粋したものをそれぞれ表14.1と表14.2に示します。



図14.2 リード挿入型ダイオード

図14.3 面実装型ダイオード


表14.1 絶対最大定格(Tl = 25 ℃)
接合部温度 Tj 150 ℃
尖頭逆電圧 VRM 600 V
出力電流 IOTl = 80 ℃) 2.6 A

表14.2 電気的特性(Tl = 25 ℃)
順電圧 VFIF = 2.6 A) Max 1.05 V
逆電流 IRVRM = 600 V) Max 10 μA
熱抵抗 Max 115 ℃/W

ダイオード選定の注意点

 ダイオードを用いる場合も素子に加わる 電圧 と電流、加えて 接合部温度ジャンクション温度)が絶対最大定格を超えないようにしなければいけません。表14.1に示す絶対最大定格のうち、尖頭逆電圧 とは逆方向に加えられる電圧の最大値のことです。また、出力電流は順方向に電圧が加わったときに、ダイオードに流れる電流の最大値になります。

ここで、尖頭逆電圧の条件はTl = 25 ℃、すなわちリード線の温度が25 ℃のときの値になりますが、出力電流はTl = 80 ℃、すなわちリード線の温度が80 ℃のときの値になります。このように仕様書によっては各項目の温度条件が変わることに留意してください。

また、ダイオードは順方向に電流が流れると電圧が降下します。この電圧降下分のことを 順電圧 といいます。順電圧は順電流の大きさによって変化しますが、表14.2の電気的特性では代表値として順電流が2.6 Aのときの値が記載されています。また、この表では最大値が記載されていますが、仕様書によっては中心値と最大値が記載されているなど記載方法が異なります。

 ダイオードを含む回路で出力電流を計算する場合には、順電圧を考慮する必要があります。尖頭逆電圧と順電流は、回路図から手計算で求める、試作回路で測定する、あるいはLTspiceなどの回路シミュレーターを用いることによって求められます。

 一方、接合部温度(ジャンクション温度)はダイオード内部の半導体部分の温度です。これを計算で求める場合、ダイオードの損失を求め、損失 [W] と熱抵抗 [℃/W] の積に基準となる温度を加えた値となります。表14.2では、熱抵抗 は接合部と周囲間で定義されています(添字のjは接合部(junction)、aは周囲(ambient)を表しています)。したがって、周囲温度に損失と115 ℃/Wの積を加えた値が接合部温度となります。ただし、周囲の定義は部品によって異なり、空気の温度を指す場合やリードの温度を指す場合などがあるため注意が必要です。

 ダイオードが故障しないようにするためには、ダイオードに加わる逆電圧と順電流、接合部温度が絶対最大定格を超えていないかどうか設計段階で確認します。実際の回路設計では、これに加えて設計仕様を満足するようにダイオードの動作速度なども考慮していきます。

次回は、簡単な回路を用いてダイオードの選定計算を行ってみたいと思います。






著者プロフィール
CrEAM(Cradle Engineers for Accelerating Manufacturing)

電子機器の熱問題をなくすために結成された3ピースユニット。 熱流体解析コンサルタントエンジニアとしての業務経験を生かし、 「熱設計・熱解析をもっと身近なものに。」を目標に活動中。

 

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