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ブーストヒート 様

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ブーストヒート 様インタビュー

ボイラー開発にscFLOWを用い世界最高水準の省エネ化を実現

  従来、住宅用暖冷房システムの開発現場では、標準的な構造と部品を用いた設計手法が確立されており、各社ともほぼ同じ性能基準に基づいて開発が行われていた。ところがその性能は、将来必要とされる性能には達していないという。そのような業界に革新を起こそうと、2011年に創業したのがブーストヒートだ。省エネ製品への需要の増加や規制強化、消費者の価格要求への対応は、避けられない課題になっている。そこで、最新の熱交換技術を用い、価格と消費者が環境に与える負荷(エコロジカル・フットプリント)の2つの側面で低減を図ることで、保守的な市場にイノベーションを起こすのがブーストヒートの目標だ。製品の販売開始から5年、数々の賞を受賞し、着実にボイラー業界に対して新風を吹き込んでいる。


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ブーストヒート R&D部リーダー トーマス・ぺドット 氏


 ブーストヒートは、高性能でよりグレードの高いボイラー製品を一般家庭向けに販売することで、省エネ製品に対する従来のイメージを刷新し、他社製品との差別化も行えるはずと考えた。そして、その開発には、これまでにはない新しいアプローチを用いたという。

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BoostHEAT.20(20kW級一般家庭向けボイラー) 

 
従来のヒートポンプの設計では、下記の4つが重要な要素として挙げられる。

  • 蒸発器(エバポレーター):外気の熱エネルギーを吸収
  • 圧縮機(コンプレッサー):気体を圧縮
  • 凝縮器(コンデンサー):熱エネルギーを暖房回路に輸送
  • 調整器(レギュレーター):空気圧を低減する膨張弁

 

 ヒートポンプ内の密閉された空間では、冷媒圧力と冷媒温度はコンプレッサーによって変化する(図1)。コンデンサーならびにエバポレーターと合わせて暖房回路に接続することで、外気の熱エネルギーを吸収し暖房回路に送ることができる。冷房の場合はその逆を行う。

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図1 ブーストヒートのヒートポンプボイラー概略図


 ボイラー設計におけるガス燃焼(天然ガスおよびプロパンガス)に関わる部分で、ブーストヒートは多くの特許を取得している。その中でも、熱エネルギーを回収しコンプレッサーの運転に割り当てる仕組みは画期的だ。この再利用型コンプレッサーを採用することで、ヒートポンプ自体の稼働エネルギーと合わせて、従来製品の2倍の効率を実現できたという。ペドット氏は続ける「わが社の調査では、最新型の製品『BoostHEAT.20』の性能はこのタイプにおいてはトップクラスです。また、コンプレッサーは潤滑油なしの状態でも摩擦が発生しないフリクションレスの設計になっています」。


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図2:ヒートポンプボイラー比較(ブーストヒートと他社製品)

 

 ブーストヒートが独自に開発し特許を持つ、ボイラーとヒートポンプを一体化させ、スターリングサイクルの概念を応用した再利用型コンプレッサーは、700℃の高温において80バールの圧縮サイクルを実現することで高い熱エネルギーを生み出すことに成功した。加えて、機械的な駆動がないこのコンプレッサーは、オイル交換やメンテナンスをすることなく5万時間運転することができ、従来の製品に存在する保守の問題を解決している。この次世代ヒートポンプは、熱サイクルを完璧に活用することで、天然ガスのエネルギー効率を200%まで増幅させることができるという(図2)。ある独立監査機関による調査でもブーストヒートの技術は高く評価されている(図3)。


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図3 監査機関CRIGENによるブーストヒートの調査結果(2013年6月)


 ブーストヒートの成功の秘訣は革新的な取り組みにあり、ボイラーの設計開発にはCFDも活用している(図4)。ソフトウェアクレイドルのscFLOWは、熱流束(熱エネルギーの輸送)を最適化し、世界最高水準の省エネを実現するためには欠かせないツールだという。「新しい物理特性、新しい素材や手法、新しいデザイン、新しい製造方法、これらは言うまでもなく住宅の法規制に対応するもので、つまり私たちは、短期間に可能な限り多くの知見を得る必要があったのです。そして、もし私たちがCFDに出会っていなかったら、今回の新しい製品における複雑な現象や性能を突き止めることができなかったでしょう」(ペドット氏)。

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図4 scFLOWによる解析結果。ボイラー内部の流れと圧力分布が確認できる。


 ブーストヒートはscFLOWを用い、20の主要な設計パターンを解析した。同時に解析と実験を並行して行う『デジタルツイン』の環境を構築し、規制に沿う条件で検証作業を行った。様々な段階でこの”デジタルツイン”を活用することで、高温高圧下における実験との高い相関関係を得ることができたという。「このような取り組みは、私たちのようなスタートアップ企業にとってとても重要です。そして、MSC(ソフトウェアクレイドル)のサポートを得てCFDを活用できた結果、達成できたと言ってもいいでしょう」(ペドット氏)。

 最後に、ペドット氏はこんな言葉で締めくくった。「もしあなたが『未来はどうなりますか?』と質問したら、私たちは苦笑いするでしょう。確かに最初のモデルは成功し、すでに注文も受けています。しかし私たちはやり終えたわけではありません。さらにマルチフィジックスや最適化を活用したシミュレーション、そして革新的なことがまだ残されています。そしてその挑戦は私たちそしてわが社にとって、とてもエキサイティングな時間になるでしょう」。

ブーストヒートの会社および製品概要については、以下をご覧ください。
https://en.boostheat.com/

 


 

<p< ※その他、本インタビュー記事に記載されている会社名、製品・サービス名は、各社の商標または登録商標です。
※本インタビュー記事の内容は2018年11月現在のもので、予告なしに変更する場合があります。また、誤植または図、写真の誤りについて弊社は一切の責任を負いません。​

 

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