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サウスダコタ・スクール・オブ・マインズ・アンド・テクノロジー 様

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サウスダコタ・スクール・オブ・マインズ・アンド・テクノロジー 様インタビュー

写真 (上:左から右)ラウル・バーガバ氏、サイプラサッド・スリクマール・アジサ氏、ヨン・パン氏、ケヨード・アジャイ氏 (下:左から右)ゲメチュ・トゥーリ氏、プルショサン・タッカラージャ博士

地下採鉱の安全性向上対策でシミュレーションを活用

採掘の現場では、作業員の健康と安全を脅かす原因として不十分な換気が長らく問題視されてきた。今回は坑内換気をテーマに、SCRYU/Tetraによる作業エリアの気流シミュレーションを行った、サウスダコタ・スクール・オブ・マインズ・アンド・テクノロジー(以下サウスダコタ・スクール)の学生らによる研究について紹介する。

CFDを使って地下採鉱場の換気を検証

 現場の技術者にとって、坑道の換気が十分に機能しているのは重要な課題だ。ところが、気流や圧力は目に見えない上に、現場で物理的な検証をするのは難しい。

 地下換気に関してこれまでは、1次元式を用いた計算と、システムの設計経験がある技術者の勘に頼るしかなかった。流体力学の応用は複雑で、正確なモデル化が難しいとされていたためである。しかし近年では、3次元の形状作成を可能にするツールの登場と高性能PCの普及により、鉱業エンジニアリングを専攻する学生たちの中で、採鉱現場のCFD(Computational Fluid Dynamics)モデリングが重要視されている。その流れを受け、サウスダコタ・スクールでは、CFDを用いた換気条件の評価を行った。プルショサン・タッカラージャ博士の率いる学生グループは、国立労働安全衛生研究所(National Institute for Occupational Safety and Health: NIOSH)から助成金を受け、CFDを用いた坑道環境における換気シミュレーションをテーマに、2種類の論文を発表した。その後発表した論文は、第16回北米坑内通気シンポジウムで高く評価され出版されるまでに至っている。

「地下の採鉱現場の換気シミュレーションは複雑なので、CFDが大いに役立ちました。多孔質体や拡散モデル、化学反応といったモデルを中心に研究を進めていました。」(タッカラージャ博士)鉱業分野の技術者にとって、質量流量や圧力損失、気体の拡散を正確に把握し可視化するにあたり、CFDは有用な手段だったようだ。


ブロックケービング法とは

 ブロックケービング(block cave mining)とは地下採鉱の手法のひとつで、従来の露天採鉱と比べて、費用的にも生産性の面でも効率よく行える方法だ。掘削をしたい岩盤の下深くに2つのトンネルを設け、下のトンネルは採取・運搬用(生産工程もここで行われる)、上のアンダーカット用のトンネルでは岩を粉砕するために火薬を用いる。鉱石の採取点となるドローポイントから垂直に削孔することで岩盤の崩落を促し、鉱石を採掘できる仕組みだ。鉱石を採取できた段階で重力によって岩盤はドローポイントへ崩落する。正しい手順でこれを行うと、岩の重力によって崩落は続き、鉱石はドローポイントまで到達する。


 図1:ブロックケービング法

 

 岩の崩落により、砕けた岩と砕けなかった岩の間に空気が溜まる。大量の空気が溜まるとエアブラストが起き、作業員が怪我を負う可能性があるため、作業員は特殊な機器を使い、溜まった空気の状況を観察している。崩落の継続と生産の進行具合を常に把握することで、溜まっていく空気量を制御できるという。タッカラージャ博士が率いるグループはCFDを用い、現場の換気を維持するのに最適な空隙の高さを計算した。


図2:ブロックケービングモデル




図3:CFDで解析した空隙高さの速度コンタ―

 

 採鉱現場の作業員にとってもうひとつ、見えない災害がある。鉱石の採掘時にウランを含んだ鉱体が発掘されると、有害なラドンガスが発生し作業現場に流れ込んでしまう。ラドンは無味無臭で不活性だが、発がん性のある危険な放射性物質だ。岩の崩落と同時にラドンガスが作業現場に流れ込んでしまうため、作業現場におけるラドン濃度は安全なレベルまで薄める必要がある。ブロックケービング法を用いた掘削では、高濃度ラドンを薄めるのに取り込むべき外気の空気量との経験的関係を求めるべく、技術者たちが実験および検証を進めている。しかし、経験的関係を求めるだけでは、異なる採鉱現場におけるそれぞれのラドン濃度を把握することや、ラドンを安全なレベルまで薄めるための正確な空気量を予測することはできないと言われている。

 

CFDを用いたブロックケービング法の評価

 サウスダコタ・スクールのグループは、ブロックケービング法による採鉱現場における換気システムで崩落した岩石の空隙がどのように作用するかを、SCRYU/Tetraを利用して解析した。形状が異なるモデルを用い、流入速度の条件は固定して定常解析を行った。速度条件は一定にしたため質量流量は変わらない。しかし、流入口と流出口の間における圧力に変化があった。

ブロックケービング法の環境をCFDで再現 

 崩落を想定したそれぞれのモデルで、空気の吸い込み口から排出口までの間に圧力が低下することが分かった。そこで、崩落時の抵抗力と衝撃損失を計算し、最終的な圧力損失と質量流量を把握することで、どのようなファンを用いれば現場全体に一定の空気を流せるか検討することにした。4mから12mの大きさの空隙では、抵抗力と衝撃損失は低い。12mから18mになると最低値になり、18mより大きな空隙は抵抗力と衝撃損失が上昇することが分かった。

ラドン濃度の予測

 グループの次の課題は採鉱現場のラドンの濃度分布を予測することだった。鉱業分野に技術者の従来の実験的手法は、採鉱現場のすべての拠点でラドン濃度を観測することだった。しかし採鉱場内のすべての場所で観測をすることは不可能なため、今回CFDでの検討が試みられた。

 ラドンは放射性希ガスに区分される物質で、より安定した元素へ崩壊遷移する際に放射エネルギー(崩壊生成物)が発生する。崩壊遷移期間は半減期と言い、ラドンの質量の半分が崩壊するまでに変化するまでにかかる時間を指す。半減期の長さは元素によって異なり、気体の密度も時間とともに変化する。サウスダコタ・スクールのグループの学生らはSCRYU/Tetraの化学反応機能を用い、ラドンの崩壊プロセスを解析した。これにより、採鉱現場に拡散するラドンガスが崩壊する際の物質変化を考慮しての解析が可能となった。

 解析後、経験値から得られた、一般に用いられる高濃度ラドンを薄めるのに取り込むべき外気の空気量と解析結果と比較してみたところ、同じ傾向が確認できたと言う。従来手法によって比較に差異は出たものの、従来の手法では取り込むべき空気量を過小に見積もっているという研究もあることを踏まえ、総合的に見て解析結果の正確性は証明できたようだ。

 学生らが採用したラドンガスのモデリング方法は、今後も検証を重ねる必要があると言うが、試験的な解析では良い結果が出ており、従来の手法に勝る利点がいくつも確認できたそうだ。坑道の出口付近のラドン濃度のみを評価する従来の手法に比べて、CFDを用いた手法では空間と時間の条件も付加することができ、採鉱現場内のラドン濃度を実際の値に近い数値で予測することができると言う。ラドンを薄めるために必要な空気量の予測も、CFDの方がより詳細に行えるそうだ。

 サウスダコタ・スクールのグループは、CFDモデルと実測・解析値の検証を官民で進めるべきだと言う。鉱業の分野におけるCFDの可能性について、タッカラージャ博士は以下のように語る。「鉱業の分野において現場での実測は難しいのです。実測値との比較が必須となるCFDが鉱業分野の技術者たちの間で用いられる機会が少なかったのは、このためです。また、採鉱現場の中には、CFDでも検証が難しい種類の現場もあります。しかし、今後CFDによる検証が進むことで、CFDを用いた研究・開発を鉱業分野でも行うべきだという声が広がるはずです」。

 

SCRYU/Tetraを用いた換気シミュレーション

 サウスダコタ・スクールのグループがSCRYU/Tetraを選んだ決め手は、プリプロセッサだと言う。ロバストで使いやすく、複雑なブロックケービングの形状を構築するのに適していたそうだ。化学反応など、さまざまな物理現象をモデリングできたのも良かったと言う。機能的にすばらしく、処理速度も速い上、技術サポートも満足だったようだ。

「鉱業の分野にCFDを導入する上で最も大きな課題だったのは、採鉱現場の複雑な運転環境を再現できるかどうかでした。地下坑道は、それぞれ違う設計が適用されており、ソフトで再現するのは難しいのです。また、坑道の形状が複雑なため、メッシュ生成が困難です。」(タッカラージャ博士) 

 今回のプロジェクトでSCRYU/Tetraを採用したことについて、タッカラージャ博士は次のように語る。「地下採鉱現場の換気を検証するにあたって、SCRYU/Tetraは優れたツールです。使いやすく、メッシュも効率よく解析できました。今後もSCRYU/Tetraを使って研究を進めたいと思っています」。

 





サウスダコタ・スクール・オブ・マインズ・アンド・テクノロジー

  • 創立:1885年
  • 種類:The Higher Learning Commission認定
  • 所在地:サウスダコタ州ラピッドシティ(アメリカ)

 

※SCRYU/Tetraは、日本における株式会社ソフトウェアクレイドルの登録商標です。
※その他、本インタビュー記事に記載されている会社名、製品・サービス名は、各社の商標または登録商標です。
※本インタビュー記事の内容は2017年2月現在のもので、予告なしに変更する場合があります。また、誤植または図、写真の誤りについて弊社は一切の責任を負いません。

  

 

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