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森永乳業株式会社 様

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森永乳業株式会社  様インタビュー

“おいしい”の根拠を科学的に分析する 
乳製品の製造工程にCFDを導入

森永乳業では製造装置や工程の開発・改良、製造環境の管理などにCFD解析を活用している。今まで経験で作られてきた装置を科学的な視点から分析し直すことで、新たな知見や発見が日々生まれているという。。

 森永乳業は、一般向けまたは業務用の乳製品を中心とした商品を開発、製造する会社だ。そのラインナップは各種飲料やヨーグルト、アイスクリームなどのデザートと幅広い。身近にみられるマウントレーニア カフェラッテやビヒダスヨーグルト、アロエヨーグルト、アイスクリームのピノやパルムも同社の製品だ(写真1)。ま た牛乳、チーズ、乳児用の粉ミルクなどの乳製品や、ビフィズス菌、ラクトフェリンなどの機能性素材も手掛ける。コーポレートスローガンは「“おいしい”をデザインする」。このために独自の技術を結集し、常においしく、安心、安全、高品質な商品を追求している。



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写真1 森永乳業の商品一例

 

 これらの製品を作るためにはそれぞれの目的に合った様々な機械や設備が必要だ。同社では商品をより効率よく、安全に生産するために、社内で装置や設備に関する研究開発を行っている。その設計・開発を手掛けているのが、森永乳業の研究所の一つである装置開発研究所である。

​ 例えば新商品の開発のために新しい装置が必要となった場合は、自社で装置を設計したり、関連会社と協力して製作したりすることもある。また、新しい装置を導入して自社の生産ラインに組み込むための様々なチェックを行うといった作業も含まれる。取り組む研究分野は食品工学にはじまり、生産プロセス技術や製造技術など多岐にわたる。これまでに、直接生産にかかわる超高温滅菌装置や無菌バルブといった機器から、各種の自動検査装置まで幅広い装置を開発してきた。とくに低濃度塩素水の特性を食品製造工程に活用する微酸性電解水製造装置「ピュアスター」は日本食品工学会賞技術賞を受賞するなど注目を集めている。

 食品製造で一番重要視されることの1つが衛生、殺菌に関する事項だ。冷蔵で2週間持つ製品と常温で3カ月持つ製品では、殺菌の方法やレベルは変わってくる。

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写真2 装置開発研究所 マネージャー
博士(工学)宮本 哲夫 氏


 ほかにも粉末製品は作る際の乾燥する技術、ヨーグルトには発酵技術、アイスクリームなら冷凍技術に対する理解も必要だ。そういった装置の開発には流体力学が密接にかかわってくる。これらの開発は従来、経験や教科書的な発想で行なわれてきたが、数年前からCFDを活用し始めていると森永乳業 装置開発研究所 マネージャーの宮本哲夫氏(写真2)は言う。

クリームの拡販にCFDを適用、パティシエの納得する品質を

 SCRYU/Tetra®は2008年ごろに導入され、宮本氏は2010年ごろから使い始めた。ちょうど当時、森永乳業として科学的なアプローチからよい製品をつくりたいという方針が上がっていた。今までは主に経験的知識とテストに基づいて改良・開発してきた製造装置に対し、科学的な分析を加え、より価値ある商品を効率的に製造する方法や条件を見出そうということになった。その中で生クリームの撹拌冷却用タンクの解析・改良を行ったという。

​ クリームは牛乳から遠心分離などにより脱脂乳を除去した結果得られる、乳脂肪分の豊富なO/W型(水中油滴型)エマルションの液状食品である。また、砂糖や香料を加えて泡立てると洋菓子に使用されるホイップクリームとなり、さらに激しいストレスを与えると相転換が起こりW/O型(油中水滴型)エマルションのバターになるという不安定な性質を持っている。したがって、クリームの製造工程においては、クリームに極力ストレスを与えないことが重要なポイントのひとつとなっているそうだ。

 なかでも最終工程である撹拌冷却保持工程は、エージングと呼ばれる脂肪球を安定化させる工程であり、冷却による脂肪球内の脂肪分の再結晶化や、脂肪球皮膜の安定化がおこなわれる、クリームの品質を決める重要な工程のひとつだという。クリームの品質劣化のひとつとしては、クリーム中の脂肪球凝集による粘度上昇を挙げることができるが、この脂肪球の凝集は、ストレスを受ける時間が長く、強度が強く、温度が高い(5 ~ 15℃)ほど多い傾向がある。したがって、よりよい品質のクリームを得るためには、冷却保持槽内を均一かつ速やかに冷却することと、撹拌によってクリームに与えるストレスを極力抑えることの二つが重要な管理ポイントだという。

撹拌槽を実験とCFDで検証

 装置の概要は図1のようになっている。撹拌槽は冷却ジャケット付きのコニカル底槽で、撹拌は邪魔板なしのアンカータイプ翼で行われる。この翼のスマートな形状は、クリームへのダメージの低減や洗浄しやすさから決められ、長い間使われ続けてきた。しかしクリームの品質への影響を気にするあまり、異なった翼形状や運転条件などの検討はほとんど行われてこなかった。「速やかに冷却はしたい、だが撹拌は可能な限り穏やかにしたい」という撹拌伝熱操作としては相反する課題に挑戦した。すなわち、撹拌によるストレスがクリームの品質に悪影響を及ぼさず、冷却効率と槽内均一性を向上させることを目的としたアンカー翼の改良を検討した。

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図1 実験装置の概略図(翼1)

 まず現行設備である5m3冷却保持槽の1/10スケールを基本とした、槽径0.20mの小型実験槽を用いて、好ましい改良翼と、その回転方向を決定した。続いてSCRYU/Tetra®を用いて、同サイズでの解析を行った。解析対象は撹拌する流体、撹拌翼、撹拌槽とした。メッシュ数は約550万要素で、流れ場についてのみ定常解析を行ったうえで、得られた流れ場を用いて温度場について非定常解析を行った。

 現行の直動部壁面をかき取り方向に回転する「上翼」と、底面をかき上げる方向に回転する「下翼」を持つ特殊アンカー翼を基本とし(翼1)、ほかに下翼の取り付け角を逆にしたもの(翼2)と、上下翼の位相差を90°としたもの(翼3)の3種類の翼に対してそれぞれ正転、逆転の計6パターンの解析、比較検討を行った。

 翼1において実験とシミュレーション結果を比較したところ、図2のように良好な一致を得た。さらにこの解析結果から、逆転時の上翼に生じる壁面への押し付け方向の流れが熱流束を増大させていることや、上翼の下端で発生する下降流と下翼の翼端で発生する上昇流が槽内の均一性を向上させていることが明らかとなった。また撹拌の上下翼に位相差をつけることによって,動力やせん断応力が抑えられる傾向も見いだすことができた。(図3~6)。この知見をさらに大きな 実機タンクでの改良に応用することで、製品品質及び生産効率の向上に成功したということだ。

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図2 実験値とシミュレーションの比較

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図3 r-θ断面とr-z断面における速度ベクトル分布
(翼1、正転)

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図4 r-z断面における温度分布(翼1、θ = 0°, t=600s)

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図5 壁面熱流束分布とr-θ断面における温度分布
(翼1、z = 0.14m, t=600s)

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図6 壁面およびr-θ断面におけるせん断応力分布
(翼2と翼3)

 

可視化の威力は思いのほか大きい

 今回の解析のなかで得た収穫は、層流場における伝熱シミュレーションが予想していた以上に実測値と合うということだったそうだ。また、大型のかき上げ翼のかき上げ 効果は予想より小さいということや、流れには上がるところがあれば必ず下がるところがあるといった当たり前の現象が、可視化によって改めて図にすると実感でき、社内への説明もスムーズに行えることが非常に有益だという。
 

省エネ撹拌や殺菌時にも適用

 ほかにも様々なタンクの解析に利用しているという。上記のようにダメージを与えずかつ早く冷やすほかにも、省エネルギーかつ早く混ぜるといったものについて、撹拌物の物性や効率を見ている。

 また食品をパッケージに充填する際に触れてしまう空気の流れや、パッケージの内部殺菌時の熱風の流れの解析にも使用している。200℃以上の高温の熱風により、迅速な温度上昇がみられると考えがちだが、実際は周りの空気を巻き込むことで温度が下がる。そういったことも可視化することによって改めて理解し、それによって改善方法を考えることができるという。このように可視化の効果を実感する場面は多いそうだ。
 

強力なポストのビジュアル性能

 SCRYU/Tetra®導入時は解析ツールよりもむしろ解析モデルをつくるための3次元CADの操作をマスターするほうが大変だったという。2Dはいつも機械配置図などで使用していたものの、3Dは操作感が全く違ったそうだ。

 SCRYU/Tetra®に関しては、新しい解析を行うたびに勉強している最中だという。その際はサポートに連絡するなどして、その都度マスターしているそうだ。特に結果を可視化するポストの機能がバージョンアップごとによくなっているという。「流れる矢印機能など非常に見やすくビジュアル性も高いので気に入っています」(宮本氏)。

より高度な解析に取り組みたい

 さらに取り組みたいと考えているのが、果肉の入ったヨーグルト、ソースやナッツの入ったアイスクリームの解析だという。これらの製造工程は、気泡の分散と氷結晶の成長が同時に起こるとても複雑な現象であるが、CFD解析を適用することで、アイスクリームのおいしさと製造過程の関係を科学的に解明し、新しい価値ある商品の提供につなげていきたいそうだ。「状態変化を伴う三相混相流の解析なのでとても複雑になりますが、これらがより正確に解析できるようなSCRYU/Tetra®の性能アップに期待しています」(宮本氏)。

 より科学的なアプローチから“おいしい”を追求する森永乳業。その取り組みをSCRYU/Tetra®がいっそう後押ししているのは間違いないようだ。

 
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森永乳業株式会社

  • 創業:1917年
  • 設立:1949年
  • 事業内容:牛乳、乳製品、アイスクリーム、飲料その他の食品等の製造、販売
  • 代表者:代表取締役会長 大野 晃 代表取締役社長 宮原 道夫
  • 本社所在地:東京都港区
  • 資本金:21,704百万円(平成26年3月31日現在)

 

※SCRYU/Tetraは、日本における株式会社ソフトウェアクレイドルの登録商標です。
※その他、本パンフレットに記載されている会社名、製品・サービス名は、各社の商標または登録商標です。
※本パンフレットに掲載されている製品の内容・仕様は2014年11月現在のもので、予告なしに変更する場合があります。また、誤植または図、写真の誤りについて弊社は一切の責任を負いません。


  

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