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関東精機株式会社 様

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精密液温調整のプロフェッショナル、液温分布の理解にCFDを活用

工作機械などの各種産業機械向けに精密液温調整装置を開発、製造する関東精機。同社は「ブランドを支えるブランドでありたい」との企業使命のもと、高精度なマシニングセンタや半導体露光装置など、究極の温度制御を求められる場面で高い信頼を得ている。そんな関東精機が熱に関する知見をより深めるために活用しているのが、熱流体解析ソフトウェア「STREAM」だ。

 関東精機は、国内外の生産現場で広く利用される精密液温調整装置を開発、製造する会社だ。また搬送機械などのFA製品も手掛ける。主力製品の「オイルマチック」(写真1)は、工作機械をはじめとする各種の産業機械に使用される油温調整装置だ。温調装置は一般的にチラーと呼ばれるが、海外を含む多くの生産現場では、他社の製品も含めて「オイルマチック」のブランドが浸透している。



写真1 関東精機の主力製品「オイルマチック」の一例
ノンフロンオイルマチックVnx2200(写真左)オイルマチックCシリーズ(写真右)


 同社のルーツは、かつて金属加工を行っていたため、熱変位抑制の観点から、工作機械の油圧作動油向け温調装置を開発したことに始まる。1965年には「オイルマチック」と名付けて販売を開始し、工作機械のNC(数値制御)化、高速・高精度化と合わせて広く普及した。現在はオイルマチックのほかにも金型を冷却する「モールドマチック」、水・純水向けの「ピュアマチック」や、超低温に対応し研究機関などで使用される「アイスマチック」などを展開する。近年では高精度、高効率だけでなく環境関連の開発にも注力している。世界で初めてフロンの代わりに二酸化炭素を冷媒に採用したオイルマチックや、省エネルギーの装置開発に積極的に取り組む。

 ものづくりの現場における液温調整のプロフェッショナルである関東精機の最大の強みは、エンドユーザーの要望にきめ細かく対応するカスタマイズ力である。同社の製品は基本的にオーダーメイドであり、要望に応じた最適な仕様で提供される。温調機能をはじめ、現場に設置しやすい形状や、故障した場合にモジュールごと素早く入れ替えられるといった要望にきめ細かく応え、エンドユーザーから非常に高い評価を得ている。

顧客の設計にまで踏み込んだアドバイスも

 関東精機では、熱流体シミュレーションソフトウェア「STREAM」を導入してさまざまな熱問題を検討している。「当社の装置はただ冷却できれば終わりというものではありません。お客様の望む条件の元で、冷却効果が高くかつ省エネであることなども追求しており、その際にシミュレーションを活用しています」(並木氏・写真2)。

 解析を行った例の一つが、プレス金型内を流れる冷却水の様子だ。顧客が設計した金型全体の形状は円筒形で、素材を押出し成形する。素材には潤滑剤が塗布されているが、成形は何度かにわたって行われるため、塑性発熱により高温になるのは避けられない。そのため金型には冷却水を流す構造が組み込まれている。だが冷却が十分に行われず、潤滑剤の効果が下がってしまっていたという。そこで最も効率のよい冷却水の流し方を検討するため、STREAMを用いて解析を行った。

 解析の結果、冷却水の流れている部分と発熱部分が離れすぎているため、冷却効果が低下してしまっていることがわかった(図1)。また赤い部分は200度以上の高温になっていた。さらに解析の結果から流速分布を確認したところ、冷却水は円筒状に囲むように満たされているが、冷却水の流れには偏りがあり、流れが集中している場所と流れがほぼない場所がある事がわかった(図2)。



写真2 関東精機株式会社 商品開発室 並木 渉 氏


図1 プレス金型の断面における温度分布 流路と発熱部が離れており冷却効率が大幅に低下している。


図2 金型における冷却水の温度分布図(左)と流速分布図(右)
左では流速が遅い場所ほど液温が高くなっている。右では入り口と出口を最短距離で結ぶような場所に流れが集中していることがわかる。


 解析によって、このままの構造ではどうしても高温になることは避けられないことがわかった。そこで依頼者に、このまま低温の冷却水を送るだけでは問題の解決は難しく、設計変更の必要があるとアドバイスしたという。

 「実際に内部で流体がどう流れるかまでを、従来の手計算で求めることは難しいです。私自身、思ったより流れの偏りが大きいという解析結果に驚きました。この結果を参考に、お客様が行った設計にまで踏み込んだ提案を行いました。このような提案ができることは、当社の強みとなっています」(並木氏)。

熱交換器や装置全体の排熱も検討

 関東精機では、同社の製品内部に組み込む熱交換器の解析にもSTREAMの適用を進めている。熱交換器は内部で、冷媒のフロンガスと冷却対象となる液体の間を薄い金属で隔てている。冷凍サイクルにより、フロンガスの圧力および温度をコントロールすることで、使用者の流す液体を冷却する。熱交換の効率を高めるほど、装置の小型化が可能だ。

 そこで、どのような条件であれば熱効率を上げられるかを検討するために、STREAMを使用している。効率を高めるためには冷媒と液体の双方の流れ方が重要になる。先ほどのプレス金型と同様に、流れに偏りがあると効率的な熱交換ができなくなってしまう。

 「熱交換器は小さくはないため、装置全体のサイズを決めてしまうところもあります。そのため熱効率を高めることは、設置面積の縮小に直結します」(並木氏)。流速が速ければ基本的に効率は上がるため、流速や構造などの検討を行い、熱の流れが均一になることを目標に検討を行っているという。

超精密制御に欠かせない混合器

 また関東精機では、流れの温度分布を均一にするための混合器の解析も行った(写真3)。混合器は円筒状の金属部品で、パイプ状の流れの途中に取り付けて使用する。円筒にいくつか空けられた穴によって流れを分岐させたのち合流させることにより、温度のムラをなくすパーツだ。



写真3 水路内で温度分布を均一にするための混合器について解析しているところ。
光学部品の製造装置など、とくに高精度の温度制御が求められる装置に使用され、内部の形状は様々な工夫が凝らされる。


 先ほどの金型の解析例における赤い部分も均一に見えるが、詳細に見ると温度の揺らぎが存在する。ユーザーによっては100分の1度から1000分の1度もの温度制御精度を求められることもあるという。たとえば天体望遠鏡の鏡を加工する装置であれば、表面の凹凸差を100万分の1ミリメートルのレベルに抑える必要があるため、温度調整にもそれに応じた精度が求められる。ほかにもスマートフォン用プラスチックレンズの金型や露光装置などの光学分野、複合加工機なども高い精度が必要になる。関東精機の製品のうち、超精密温調用モデルであるオイルマチック「cμシリーズ」などにも、混合器が組み込まれている。

 混合器内の流れを解析してみたところ、初期の設計では分岐後に液体同士を衝突させても、異なる温度の液体が混ざり合う効果はあまり見られなかったという。「液体がぶつかり合うだけでなく、逆向きの流れも必要だということが解析により確認できました。そのため壁にぶつかるような構造を検討しました」(並木氏)。



写真4 関東精機株式会社 商品開発室 主任 小野 和孝 氏


 「頭の中ではこうすれば混ざるだろうと思っても、実際に加工できる形状でなければ意味がありません。より混ざるようにしようとすると加工が難しくなるため、加工性と温度の均一化とのバランスも考える必要があります」(小野氏・写真4)。また小さいがモーター類やポンプ、ファンなどもある。これらを装置内にどのように配置し、またどうやって熱を外に逃がすのかといった検討に活用している。

 また関東精機では装置内の発熱部の配置検討にもSTREAMを使用している。特にコンプレッサなどはかなりの高温になる。また小さいがモーター類やポンプ、ファンなどもある。これらを装置内にどのように配置し、またどうやって熱を外に逃がすのかといった検討に活用している。

思いついたアイデアを気軽に試せるように

 解析の導入によって最も大きく感じているメリットは、日ごろ思いついたアイデアを、より手軽に試せるようになったことだという。以前は試してみたいアイデアがある場合、装置を試作して実験、評価までを行う必要があった。だが時間もコストも掛かるため実施することは容易ではない。実施できたとしても再実験を行う必要が出たりすれば、簡単に2、3か月が過ぎてしまうこともある。

 だがシミュレーションを導入することにより、開発期間の短縮とコストの両面で効果が表れるようになったという。さらに「熱や流れの様子を見ることが可能になったので、興味があること、やりたいことが増えました」と並木氏は話す。「高いコストをかけて金型を作り、多くの人の手を借りるほどではない、ちょっとした知りたいことも、シミュレーションソフトを使えば試すことができます。現実的には不可能だった検討が可能になっています」(並木氏)。

 従来の手法である手計算によって検討することもできるが、予測できるのはおおよそ8割程度までだという。関東精機が今までの研究によって蓄積してきた知見と、解析ツールの力を併用することにより、さらに社の強みが強化されていると言えるようだ。

多様な結果の見せ方で伝達力大

 STREAMはプリプロセッサ、ソルバーおよびポストプロセッサをそれぞれ独立して使用できる点が便利だという。ソフトウェアによっては、これらが一体になっているものもある。その場合は解析中に別の作業ができない。別の人が解析用モデルを準備したくても不可能だ。またソルバーを常に稼働させられないため、利用効率が悪くなってしまう。STREAMの導入によって、運用面での煩わしさが減り、よりシミュレーションに取り組むハードルが下がったという。

 小野氏は「STREAMは解析結果をさまざまな見せ方で見せることができます。そこがとても魅力のある製品だと感じます」と話す。STREAMはただ温度分布を表示するだけでなく、流線などと合わせて表示したりすることができる。解析をしている人は、それほど分かりやすい表現でなくても内容を理解することができるが、専門以外の人には難しい場合もある。「STREAMは簡単に多彩な見せ方ができるよう作ってあると感じます。特にプレゼンテーションの場で力を発揮していますね」(小野氏)。

 またソフトウェアクレイドルのサポート体制については、「初めて解析した時は戸惑うところもありましたが、まずしっかりサポートをしていただけたことが、とても助かりました」と並木氏は語る。海外で開発された製品だと、質問したものの代理店ではわからず、開発元に問い合わせて1週間後に回答が返ってくるといったこともあるという。「ソフトウェアクレイドルはレスポンスが早く、ほぼその日のうちに回答をいただいています。そのため作業を止めることなくスムーズに進めることができています」(並木氏)。

熱効率を極めたい

 現在は一部のメンバーがSTREAMを使用しているが、いずれは設計者全員がシミュレーションツールを使って検討できるようになるのが理想だという。関東精機では設計業務の中にシミュレーションを組み込んでいきたいと考えており、今はその準備段階にあたるということだ。

 また現状は個別の顧客向けの提案の際にSTREAMを使って検討することが多いが、いずれは標準的な部品まわりにも活用していきたいという。今までは当たり前と考えられてきた熱の流れに関して、新たな知見を得ることにつながるかもしれないと期待しているという。常に顧客目線で熱効率を追求する関東精機。シミュレーションの活用により革新的な製品が生み出される日も遠くはなさそうだ。



関東精機株式会社

  • 設立:1961年5月10日
  • 事業内容:・工作機械、半導体製造装置、高精度液温制御装置の開発、設計、製造、販売
    ・産業用ロボット、自動組立機、専用機の開発、設計、製造、販売
  • 代表者:代表取締役社長 魵澤 剛史
  • 本社所在地 群馬県前橋市
  • URL:https://www.kantoseiki.co.jp/

 

※STREAMは、日本における株式会社ソフトウェアクレイドルの登録商標です。
※その他、本インタビュー記事に記載されている会社名、製品・サービス名は、各社の商標または登録商標です。
※本インタビュー記事の内容は2017年7月現在のもので、予告なしに変更する場合があります。また、誤植または図、写真の誤りについて弊社は一切の責任を負いません。

  

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