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ぺイエット 様

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ぺイエット 様インタビュー

建築設計とエネルギーモデリングプロセスを加速させるCFDツール

米国ボストンに拠点を置くペイエットは、従業員数165名の建築事務所だ。科学機関、医療施設、研究施設などの先端技術関連の建築設計を専門とし、デューク大学の環境学部棟環境ホール(写真1)、ジョージ・ワシントン大学の公衆衛生学部棟など、設計を手掛けた建築物は数々の賞を受賞し、業界の注目を集めている。ペイエットでは、建物全体のエネルギー消費を低減する工夫として、自然換気を生かした空間づくりや、日射熱を利用して温度調節を行うサーマルコリドールと呼ばれる廊下を用いることが多い。2013年からSTREAM®を導入し、建物や周辺の空気の流れを予測することで、省エネ性能を高める建築設計に活かしている。


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写真1 デューク大学 アメリカ・ノースカロライナ州 環境学部棟 環境ホール
©Warren Jagger Photography    



 ペイエットが他の建築事務所と違う大きな特徴は、設計者と科学者が連携してプロジェクトを進めている点だ。アレハンドラ・メンチャーカ博士(写真2)はそのような建築科学者の一人だ。ペイエットで建築科学者として、持続可能性とエネルギー性能の観点から設計を指導し監督する役割を担っている。メンチャーカ氏はメキシコ国立自治大学の機械工学部で学士号を修め、マサチューセッツ工科大学(MIT)で機械・航空工学の修士、および博士号を取得。その後、日本のヒューリック株式会社の建築コンサルタントとして、商業用施設内の自然換気システムの設計に携わるなど、様々な建築設計の経験を持つ。現在はペイエットでの業務のほかに、ハーバード大学デザイン大学院と、母校MITの客員講師として、自然換気の効率性改善などをテーマに講義を行っている。ペイエットで携わる工程は基本設計から細かな仕様決定までにおよび、解析ツールもおおよその値を短時間で簡単に計算できるものから、詳細な日光やエネルギーの解析、CFDをフルに使うシミュレーションツールまで、複数の種類を使い分けているという。

 

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写真2 ペイエット建築科学者
博士(工学) アレハンドラ・メンチャーカ氏   

 

建築設計に効果的なCFDツール

 

 自然換気のスペシャリストであるメンチャーカ氏がペイエットで推進したのは、建物における自然風のシミュレーションだ。自然換気の効果を活かした空間内で、空気の温度成層がどう変化するかを予測するモデルを組み立てた。シミュレーションに必要な解析ツールを探してみたところ、精度も汎用性も高いSTREAM®が目に留まったそうだ。特に精度については申し分なかったという。「評価テストの結果が不十分だったツールは採用しないのが、ペイエットの方針です。STREAM®は私たちが求める条件をほとんど満たしていました。外的な空気の流れだけでなく、輻射や対流による室内の熱移動を正確に捉えることができ、高性能だと感じました」とメンチャーカ氏は語る。他社ツールに比べ、予算面でも性能の面でも満足だったそうだ。「私たちが希望する価格帯のツールの中で、これほど精度の高い結果を出したのはSTREAM®だけでした。テストでは、ある空間を温度が高い壁と低い壁に囲われていると仮定し、STREAM®を使って空気の流れを計算しました(図1)。輻射熱を考慮した場合とそうではない場合で温度と流速を比較したところ、テストした全てのツールの中でSTREAM®による結果が 最も実験値に近い数値だったのです」。


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図1 屋内空間における温度変化の検証例
​検証モデル図(上)と解析結果(下)

 

設計時間の短縮につなげる高いユーザビリティ

 

 STREAM®の大きな強みはGUIだという。「STREAM®が他社のソフトに比べて最も優れている点だと思います。感覚的に操作できるので、最も大変な作業である境界条件の設定も難なくできました。他のソフトでは条件設定のためのウィザードが用意されていてもユーザビリティが悪く結局使わないことが多いのですが、STREAM®のウィザードは分かりやすく、設定も極めて短時間で終わるのでありがたいですね」(メンチャーカ氏)。STREAM®の外部流れ条件設定ウィザードは、6ヶ所の解析領域境界面の設定を数値入力だけで行うことができるというものだ。STREAM®のもうひとつの利点は、メッシュ作成や形状の再現が非常に簡単に行えるところだという。「特に、RhinoやSketchUpのデータを直接読み込める機能はすばらしいですね。解析時間も短縮できますし、建築家が必要なモデルをそのまま使うことができ、とても便利です。この機能はソフト選定の際には考慮に入れていなかったのですが、大きな利点になっています。加えて、メッシュ作成時に様々なオプションが選択できるのも、他社のソフトではない部分ですね。メッシュ作成時の簡便性ではベストなソフトです」(メンチャーカ氏)。

 設計において、解析時間は短い方が良いという。「解析だけに数週間も費やせません。解析時間を短く抑えられるSTREAM®はその点でも優秀です」(メンチャーカ氏)。場合によってはノートPCで計算を流すこともあるという。オフィスに戻らなくても作業ができ、設計時間の短縮につながっているそうだ。

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図2 屋外の風環境解析結果(上:斜視図、下:上面図)

解析結果をもとに、表面や流線、面、体積などの表示に即座に切り替えることができ、アニメーションを作成できるのも、STREAM®のメリットだそうだ。ペイエットのように設計者と科学者が緊密に協力し合いながらプロジェクトを進める設計事務所では、このように使いやすく高品質なポストプロセッサが必要不可欠だという。「アニメーションは粒子を表示させるものも含め、人に説明しやすいのでよく使っています。表示オプションが多いのがうれしいですね。特に、コンター図と半透明の矢印を表示した流線を組み合わせるやり方は気に入っています(図2)。任意の画面表示を動画として録画する機能は生徒達から教わったのですが、こちらもすばらしい機能だと思います。複数の解析結果をビジュアル化し、並べて比較できるのも良いですね」(メンチャーカ氏)。STREAM®のポストプロセッサで最も役立つ機能は、ステータスファイルだそうだ。ステータスファイルを使えば、視点や形状の変更、図やグラフの座標入力の設定が保存できる。他のどの解析結果ファイルでも結果表示を再現することができ、役立っているという。

 CFDツールを検討するにあたって、STREAM®を導入する決定打となったのは、クレイドルの充実したサポートだったとメンチャーカ氏は語る。「質問に対しての回答が的確だったことに加え、レスポンスの速さが見事でした。他社ソフトウェアベンダーのサポートは回答までに数日かかるような問い合わせ内容に対し、クレイドルはすぐになんらかの回答を返してくれ、場合によっては問い合わせから数時間で問題解決に至ることもあり、非常に助かっています」(メンチャーカ氏)。

 

CFDが建築設計にもたらす影響

 

 近年、設計者や技術者が建築設計の改善には何が必要なのかを把握するために、建築設計に流体解析を用いるケースが見られる。しかし、全体の傾向として流体解析にはさほど積極的ではないのが現状だ。「いまの建築設計の現場では、CFDの効果を生かし切れず、満足な解析結果を出すことができていないと感じます。コストや時間、経験が不足しているために、1ヵ月以上かかることもあります。解析に時間がかかると、それだけ全体的なスケジュールに影響が出てしまうのも、設計者がCFDに消極的な理由のひとつかもしれません」(メンチャーカ氏)。また流体解析を専門の業者に委託しても、時間の問題は解決されないという。「結果が出るまでの間に設計自体を大幅に変更する可能性があるので、専門家に解析を依頼する際は全体への影響が少ない部分を抽出し、局所的に依頼することが多くなってしまいがちです。しかも、それでも十分な時間の短縮にはつながらないので、根本的な解決にはなりません。ペイエットでも過去、外部の専門家に解析を委託していましたが、だいたい1ヵ月ほどかかってしまい、全体のスケジュールが圧迫されていました」(メンチャーカ氏)。ペイエットのように、社内に流体解析やエネルギーモデリングを行う担当者がいれば、時間を大幅に短縮できるという。またCFDがさらに建築設計で使われれば、設計の仕方も変化すると語る。「ペイエットでは、これまで外部の専門家に委託してきた風環境や室内の快適性評価シミュレーションを社内で行っています。コストや時間の短縮も狙いですが、社内で解析を行えば、設計の変更に伴い解析の設定を微調整できるからです。また、解析結果をもとに設計をすぐ修正することで、全体のスケジュールの効率化と低コスト化を図っています」(メンチャーカ氏)。

 

 CFDの活用は、建築業界全体においてもプラスに働くだろうとメンチャーカ氏はいう。「精度、速さ、使いやすさ、あらゆる面でCFDツールは進化しています。今後、建築設計の現場で活用される頻度は高くなるでしょう。後付けの検証ではなく、設計自体に活かせるようになるはずです」(メンチャーカ氏)。エネルギーモデリングも、いまでこそ建築設計全体の主要な要素として位置づけられているが、普及以前は試験的に取り入れられ、時間をかけて徐々に活用が拡大していった経緯があるそうだ。CFDも同じように発展していくのではとメンチャーカ氏は見ている。

 

 最後に、今後どういった解析にSTREAM®を使っていきたいか、メンチャーカ氏に聞いた。「粒子拡散機能は私たちにとって非常に関連深い機能ですが、まだ試し切れていないので、今後ぜひ使っていきたいと考えています。特に、医療施設の設計では空気中の粒子の動きを細かく見ることが必須なので、STREAM®を使って検証していきたいですね。またパラメトリックテストでさまざまな仕様による影響を比較したいとも思っています。WindToolのように、その都度モデルを用意しなくても済むようなやり方で、多方向に流れる風の影響を検証してみたいです」(メンチャーカ氏)。

 

 今後もペイエットで意欲的にSTREAM®を使っていきたいと語るメンチャーカ氏。STREAM®の活用は、今後の建築設計においてより大きな役割を担っていくことだろう。

 
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ペイエット

  • 設立:1932年
  • 事業内容:建築設計
  • 代表者:ケビン・サリバン​(代表取締役社長、アメリカ建築家協会フェロー)
  • 従業員数:165名(2014年10月現在)
  • 所在地:マサチューセッツ州、ボストン(アメリカ)
  • URL:http://www.payette.com

 

※STREAMは、日本における株式会社ソフトウェアクレイドルの登録商標です。
※その他、本パンフレットに記載されている会社名、製品・サービス名は、各社の商標または登録商標です。
※本パンフレットに掲載されている製品の内容・仕様は2015年2月現在のもので、予告なしに変更する場合があります。また、誤植または図、写真の誤りについて弊社は一切の責任を負いません。

  

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