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関東学院大学 建築・環境学部 様

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関東学院大学 建築・環境学部 様インタビュー

室内環境のイメージと理解を促すSTREAM®を演習授業に採用

室内の温熱分布や空気の流れ、また照度分布などについて学生がイメージしやすくするには。関東学院大学の遠藤智行准教授(写真1)は、コンピュータシミュレーションを演習授業に取り入れ、建築環境に関わる現象をより身近に感じられるように工夫している。数あるソフトウェアのなかから選んだのが、熱流体解析システムSTREAMである。

 関東学院大学内の学部・学科再編によって2013年に生まれた建築・環境学部建築・環境学科。主に3・4年生を対象とした「環境シミュレーション」という演習授業では、流体工学の理解を助ける手段としてSTREAMが使われている。

 この授業を2015年に開講して受け持っているのは、建築・環境学科の遠藤智行氏。遠藤研究室では、換気設備や空調設備により形成される室内空気・温熱環境や、自然換気による省エネルギー効果、通風の効果的な取り込み手法など、室内空気環境に関する研究を主に行っている。

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写真1 関東学院大学 建築・環境学部
建築・環境学科 准教授・博士(工学) 遠藤 智行 氏 


温度分布や空気の流れが視覚を通じて把握しやすい

 遠藤氏は、シミュレーションソフトを授業に導入する背景に、建築環境を扱う座学の講義では分かりにくい現象が理解しやすくなることを挙げる。「講義で教える温熱指標などは、どうしても平均値という1点に限られます。空間という概念よりも平均の温度が何℃かに注目する。実際には、部屋で不均一に温度が分布しています。空気環境も、部屋に必要な換気量がどれほどかということしか一般的には習わず、部屋のなかでの空気の流れや効率ということまでは扱いません。建物の設計では、人がいる居住域の空気清浄度が問われるという場合もあります。そうした現象について、シミュレーションソフトを使うことでイメージしやすくなるのです」。


 関東学院大学の建築・環境学部では専用の実験棟を持ち、建築環境設備に関わる各種実験を行っている。例えば、排水管についての実験では管に水を流し、そこで起こる現象を目の前で確認できる。しかし、熱や空気は目に見えないので、学生が理解しにくく普段意識する機会を逃してしまう。「視覚的に確認できることが、学生にとってよい勉強になっています。3年生までに学生が習った講義の内容を、シミュレーションを通して復習をする役割もあります。普段の生活のなかで、学生が熱や空気環境を考えるようになる意義は大きい」と遠藤氏。


 また、実際の建築設計でシミュレーションの活用が急速に進んでいることも大きな理由だ。関東学院大学の建築・環境学部が入る5号館(建築・環境棟)も、遠藤氏らが関わって基本設計時から自然換気や省エネルギー化の手法が検討され、大々的に取り入れて建設された意欲的な建物である。


 遠藤氏は(公社)空気調和・衛生工学会でCFDによる室内環境設計のガイドブック編纂に関わっていることもあり、各種ソフトの特性に精通している。また、シミュレーションソフトを演習で使うことを検討した際には、すでに他大学の授業でソフトが導入されていたという。そうしたなかで、遠藤氏がSTREAMを導入したのにはいくつかの理由がある。まずは、GUIが日本語であること。丁寧で詳細なマニュアルも用意されており、学生にとっての心理的なハードルは格段に下がるという。サポート体制も手厚く、質問への回答には時間がかからない。また、チュートリアル(例題)が充実しており、初心者でも扱いやすいこと。「丁寧なウィザードに沿っていけば、無理なく進められます」(遠藤氏)。そして、建築環境分野の企業でSTREAMは高いシェアを占めること。学生が授業でソフトに慣れ親しんでいれば、就職してから実務でスムーズに扱える。「多くの企業で採用されているSTREAMは、シミュレーション結果も信頼できる。STREAMは知っておいて損はないソフトだと確信していたので、導入しました」 と遠藤氏は語る。

 

1人に1台のパソコンでシミュレーションの基礎と操作を習得

 実際に遠藤氏が演習を行っている「環境シミュレーション」の授業にお邪魔した(写真2)。1時間半を2回続ける授業で、秋から春まで半年間のうち、後半に入った段階であった。この日の出席者は14名で、そのうち3年生が12名、4年生が2名。各自がノートパソコンを開いてSTREAMを操作していた。遠藤氏は、教室前方のスクリーンにプロジェクタで自身のノートパソコンの画面を映し出しているが、演習内容の説明を簡潔に終えた後は生徒の間を巡っている。生徒からの質問などがあれば、適宜受け付けてサポートする体制だ。

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写真2 「環境シミュレーション」の授業風景

 

 ここで用いられているのはSTREAMの授業用ライセンス(詳細はこちら)で、学生人数に合わせて本数が用意されるというもの。機能や操作面での制約は特にない。演習では、STREAMに用意されている例題から遠藤氏が選んだものを、適宜解説を交えながら進めている。「授業の最初は、建築環境分野でシミュレーションを行う意味、解析用ソフトにはどのようなものがあるかを説明することからはじめました。次に、CFDの考え方とSTREAMの扱い方を話し、例題へと進みました」と遠藤氏。



 学生はマニュアルの抜粋を手元に置き、「基礎編」から手順に従って例題を解きながら学んでいく。初期の段階では遠藤氏が30分ほどプロジェクタで手元画面を映しながら説明した後、10 ~ 15分単位で学生が操作することを繰り返したという。「他の学校では、用意されるパソコンが複数人で1台や、先生が教壇から離れずにレクチャーする形式もあります。しかし、ソフトの操作は自分で触ってみないと習得しにくい。1人1台で各自が進めていき、疑問が出てきたら質問するように促しています」(遠藤氏)

豊富で身近な例題に各自が取り組む

 取材時に多くの学生が取り組んでいたのは、STREAMに用意されている例題のうち、日射に関するもの。「STREAMは、建築環境に関連する例題が豊富にあります。そして、建築空間での解析に長けていて、温熱・空気・光が解けるので、建築環境を全般的に学ぶ学生には向いている。例えば窓際で起こるコールドドラフト現象の例題では、温度の分布や空気の流れなどがアニメーションで視覚化され、実感が強まったようです。条件ごとの現象の違いもすぐに計算出来るため、何をどのように設定すると、どう変化するのかを確かめるのにも役立ちます」と遠藤氏は語る。

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図1 学生が取り組んだ解析例

 室内で太陽光の当たるところの温度や照度、また照明をつけた時の照度分布を見る例題も、学生にとっては身近なものだ。また「結露について、冷たい水をコップに注いだときの様子で説明するのではなく、空間での分布が出て説明できるのは建築を学ぶ学生には有益。3年生ともなれば、空間のなかをどのように考えるかという意識を高めてもらいたい」(遠藤氏)。その他、大気への煙の拡散状況をシミュレーションする例題でも、学校の位置する横浜で必要な環境アセスメントの話題に結びつけることができ、授業が進めやすかったという。

 日射の例題が終わった学生は、自分が設計している建物の計算準備を行っていた。これは、他の設計授業の課題で考えている建物について、CADデータをインポートしてSTREAMで解析するもの。光や風を取り入れる設計をした建物が、自分が想定したとおりになっているかと検証するのである。「空間設計との相乗効果を狙っています。授業同士のコラボレーションでもありますね。自分の想定と違えばどうしてだろうと考えますし、シミュレーションソフトは 空間を意識した設計をする際のいいツールとなるのではないか」と遠藤氏。学生に対して、プロの卵として総合的なスキルアップと意識向上に期待を寄せる。

予想以上にソフトを使いこなす学生

 遠藤氏は授業開始にあたって、学生用のノートパソコンを自身の研究室で用意したという(写真3)。学校共有のパソコンには、他の学部と共通で使用するソフトしかインストールできなかったためである。また、1台当たりにかけられる金額は研究費の関係で数万円と限られているため、パソコンのスペックは必然的に大きな制限を受けた。結局、遠藤氏は14インチでメモリ4GB、AMDチップのノートパソコンを選択。演算に時間がかかることが懸念されたが、「まずまず十分です。普通の例題であれば、数分のうちに終わります。日照や日射の演算では負荷がかかりますが、1室の気流計算程度であれば、問題なく結果が出ます。自分のパソコンの持ち込みもよしとしましたが、多くの学生が用意したパソコンで受講していました」と遠藤氏は語る。

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ノートパソコンを1人1台使用しての演習

 それでも、負荷の高い演算用に、授業には1台のデスクトップパソコンを持ち込んでいる。各自は自分が進めているデータをUSBに保存しておき、時間がかかりそうなときにはデスクトップパソコンで計算を行う。

「計算自体の設定は簡単ですし、学生たちは、自分が思っていたよりも習得が早いですね」という遠藤氏。実際の使い勝手について、授業に出席していた学生に伺った。「シミュレーションソフトは扱いたいと思っていたので、いい機会でした。AutoCADは1年生の頃から扱い、3Dを起こすこともしていたので、モデルを扱うことに抵抗はありません。STREAMでは細かい操作の違いはありましたが、特に問題は感じないですね」というのは、3年生の本村雄大氏(写真4)である。ただし、AutoCADから書き出したデータをSTREAMにインポートする際に必要な修正作業には、まだ慣れていないという。遠藤氏は「STREAMでもCADのように複雑な形態をつくり込めればいいのですが、そのぶん操作が難しくなってしまう。海外ベンダーのメッシャーとの連携のように、ネイティブデータをそのままSTREAMに取り込めるようになれば、よりスムーズに進められそうですね」と補足する。

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写真4 本村 雄大 氏(3年生)


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     写真5 眞野 俊輝 氏(写真左・4年生)​田中 英 氏(写真右・4年生)

 4年生で遠藤研究室に所属する眞野俊輝氏(写真5・左)は、流体解析にOpenFOAMを用いているという。「この授業で始めて触れたSTREAMはUIが分かりやすく操作しやすい。日本語のウィザードに従っていけば無理なく扱えます。自分は通気管の研究をしてきましたが、今春に就職するゼネコンの仕事でも活かせればいい」と語る。同じく4年生で遠藤研究室で修士課程に進む田中英氏(写真5・右)は、「やはり空気・熱の動きやPMVなどが、設定すると結果がすぐに出てひと目で分かるのが嬉しい。実感が湧いて、次にこうしようという発展性がありますね」という。操作性については「マニュアルを見ながら進められました。設定をしたはずなのに計算が回らないときなどには先生に質問しましたが、それ以外は特に問題ありません」と語る。遠藤氏も「先生に質問するまでもなく、出席者同士で話し合って解決している様子も多く見受けられました」という。


実際の環境計測にも役立てる

 この授業は、今回が1年目。遠藤氏はこれから授業内容をアップデートしていく予定だという。「当初、光の分布の演習の際には模型をグループごとに置いて光を当て、実際の光の入り方と比較しながらシュミレーションすることも考えました。これは来季以降に引き継いで行いたいと思います」。また、学部の入る5号館では、ダブルスキンを通じて風や日射を室内に取り入れたり、輻射冷暖房を取り入れたりしているため、その効果をSTREAMで分析するつもりだという。

 すでに4年生の田中氏は取材時点で、5号館の熱や空気の流れのシミュレーションをSTREAM(研究用ライセンスを使用)で始めており、遠藤氏と空気の動き方を話し合っていた。「実測も合わせて行う予定ですが、測定するにしても効果的な測定点のアタリを付けるための分析は必要です。気流の測定は、ポイントが少しずれるだけでも結果が大きく変わるためです。全体の傾 向を大きく把握するには、STREAMは向いています」と遠藤氏は語る。

 流体の解析と分析について、初歩レベルから実践的な内容まで学内でカバーする遠藤氏。そのツールとして、もはやSTREAMは不可欠なものとなっている。STREAMの演習を通じて建築環境の知識と勘所をつかんだ学生たちが、実社会で大きく羽ばたく日は遠くない。

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関東学院大学 建築・環境学部 建築・環境学科

※STREAMは、日本における株式会社ソフトウェアクレイドルの登録商標です。
※その他、本インタビュー記事に記載されている会社名、製品・サービス名は、各社の商標または登録商標です。
※本インタビュー記事の内容は2016年1月現在のもので、予告なしに変更する場合があります。また、誤植または図、写真の誤りについて弊社は一切の責任を負いません。

  

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