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株式会社丸山製作所 様

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株式会社丸山製作所  様インタビュー

農業用機械の流体制御をシミュレーション品質工学との組み合わせで効率的な開発を実現

農業機械や工業用ポンプなどを設計、製造する老舗企業の丸山製作所。同社ではポンプにおける流体制御解析にSCRYU/Tetra®を活用している。さらに品質工学と組み合わせることで、試作を減らし効率的な開発環境を実現している。


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株式会社丸山製作所 千葉工場


 丸山製作所は1895年に新潟県で創業され、農業用機械や防災機械、工業用機械、洗浄用機械などを設計、製造する歴史のある企業だ。農業機械では農薬を散布するための動力噴霧機や果樹園で使われるステレオスプレーヤ、水田や畑で利用する作業車のハイクリアランスブームスプレーヤ(以下、ハイクリブーム)などの製品を展開する(図1)。工業用ポンプは工場での採用をはじめ、身近なところでは冷却のために屋外に配置されるミストや、アミューズメントパークのアトラクションの水を使った演出、また最近需要の高まっている海水の淡水化装置にも同社の製品が採用されている。

 丸山製作所は消火器の製造、販売を行う企業としてスタートした。量産製品としての消火器の製造は日本初となるという。当時の消火器は、ガラス瓶に入れた濃硫酸と重曹を封入しておき、使用するときは割って二酸化炭素を発生させ、その圧力で消火液を噴出させるものだったそうだ(図1)。



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図1 日本で初めて発売された消火器(左)と、業界初の乗用水田管理機として日本の農法を大きく変えたハイクリブーム(右)



  1956年には高速動力噴霧機(強制平弁機構)を開発。従来より大幅なポンプ部分の軽量化、高速化を可能とし、同技術を採用した動力噴霧機のクライスホープ号は大ヒットした。その後、工業用ポンプの開発、ハイクリブームや刈払機、ステレオスプレーヤなどの開発が続く。1991年には日本では最後発としてのエンジン製造会社を設立し、丸山オリジナル2サイクルエンジンを開発した。2004年にはピストンを上下2段に配列させた独特の形状を持つ5連動力噴霧機を開発。これによって吐出液の脈動の低減に成功した。2010年にはこれも最後発の自社開発チェーンソーを発売。2013年には千葉工場にソーラーパネル発電システムを設置した。2015年には創業120周年を迎える。日本全国および海外にも多くの拠点を置き、世界規模での事業展開を進める。同社の持つコアテクノロジーが、創業時から続く防災技術、そしてポンプ技術、エンジン技術だ。この中で特に流体解析ツール「SCRYU/Tetra®」を活用しているのが、ポンプ技術に関連する製品だという。


ポンプ内部の部品形状を検討

 ポンプの噴霧圧力を設定するための部品として、圧力制御弁がある。流体解析を行った例の一つが、この圧力制御弁のピストン形状の検討である。これは上部からのバネ荷重によって流路のすき間を調整し、噴霧圧力を変化させる仕組みである(図2)。圧力を制御するということはすき間を制御するということに等しい。「狭い場所を通過させる場合、なるべく流速は均一にすることが望ましいです」(丸山製作所 千葉工場 量産品事業部 技術部 設計二課の油橋信宏氏)。油橋氏は設計者から、いくつかあるピストン形状のアイデアのうち、どれがよいかと相談を受けて、流体解析ツールで検討することになったという。そこで図3のように、形状Aと形状Bの場合の流れ解析を行った。すると形状Aでは余水口付近に非常に速い流れが見られたため、形状Bを採用した。また実際に検証実験を行ってみたところ、形状Aでは局所的に強い流れが発生したが、形状Bでは問題がなかったという。


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図2 圧力調整バルブ部のピストン形状を検討

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図3 バルブ部の流速分布の評価結果


 ユニフロー式ポンプの弁部における流れの評価も行っている。ユニフロー式ポンプは農業用動力噴霧機などに使用されるものだ。弁部には同社が特許を取った強制平弁機構が採用されている(図4)。これは簡単に言うと、自転車のタイヤチューブの空気入れと同じような構造だという。従来のポンプよりも小型軽量で、かつ高速で回転できるのが特徴であるという。


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図4 ユニフロー式ポンプの構造


この強制平弁機構において、より効率を高めるために内部の形状検討を行うとともに、解析を行うことでその効果を可視化した。従来は吸水弁ストッパーの形状は図5の形状Aのように三角形に近い形状をしていた。流れは三角形の辺上にあるすき間(灰色の部分)から吐出方向に流れる。この形状は加工しやすさなどの理由から採用されて以来ずっとこのままだったが、効率向上の観点から見直しが検討されたという。


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千葉工場 取締役 量産品事業部技術部長 松田一郎氏(中央)
千葉工場 量産品事業部 技術部 設計二課 油橋信宏氏(右)
​生産本部 品質ものづくり統括部 品質ものづくり統括課 市川孝氏(左)

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図5 ポンプ内の吸水弁ストッパー形状2種を検討


 新規形状として、図5の形状Bのように円形で内側4か所に穴の空いた構造の解析を行った。流速分布を確認したところ、図6のように形状Aでは下部の非常に流速の大きかった箇所が、約半分の流速になった。「流れがよくなるということは、騒音も低減し、ポンプの効率もよくなるということです」(丸山製作所 千葉工場 取締役 量産品事業部技術部長の松田一郎氏)。実験ではポンプ内部の流れを見たり各場所の流速を測定することは不可能に近い。この解析図は、吸水弁ストッパーの形状変更による性能向上の効果を社内で説明する上で、非常に役に立ったという。


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図6 解析結果(流速分布)


品質工学との組み合わせで効率的な条件を探索

 丸山製作所では流体解析と品質工学(タグチメソッド)を組み合わせて、より効率の良いステレオスプレーヤの開発にも成功した。ステレオスプレーヤは大規模または中規模の果樹園で農薬を散布する機械だ(図7)。車の後ろの部分に噴霧のための送風機部がある。軸流ファンによって吸い込んだ風を、送風機の内部で90°曲げて霧を放射状に出して、果樹の葉にまんべんなく農薬を到達させるものだ。樹高の高いものでは5m以上になるものもあるが、自然風に影響されずに樹木の隅々までむらなく霧が届くことが求められる。「リンゴ園などで使われますが、農薬のかけ残しが出たところから病害虫が発生するため、均一に噴霧することが要求されます」(松田氏)。その噴霧形状は「大きくきれいな扇形、つまり噴霧方向に関わらず均一で、より遠くまで到達することが理想とされています」(油橋氏)。


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図7 果樹園で農薬散布に使用するステレオスプレーヤとその概要図


 従来は風速分布のばらつきが大きく、改良が求められていた。だがその開発手法は、手探りでいろんな条件を変更しながら、試作と試験を繰り返して検討していくため、多大な時間と労力を要していた。実験する際は試作機を製作し、空間に座標をとりセンサーを配置するため、大がかりで時間も費用も掛かる。またこの風は40m/sにもなるため、騒音が大きく危険も伴う。そこで品質工学を適用し、最適な送風機部分の 形状パラメータの組み合わせを検証することで、あらかじめ最適な送風機の条件を絞り込むとともに、流体解析を行うことで、試作および試験回数の低減を図った。

 品質工学を適用し、各パラメータについて最適な組み合わせを見つけて、従来の形状と新しい形状でシミュレーションしたところ、風速分布が全体的に大きくなり改善される結果となった。この形状の送風機を試作し、試験を行ったところ、図8のように実際に以前よりも風速のばらつきが改善することが確認できた。


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図8 実機による確認実験の結果



 丸山製作所では以上のように、設計段階での性能予測に使用することで、試作の回数低減やコストダウン、さらに開発期間短縮につなげることに成功している。事前に流体解析を行うことで手直しが減ったのは、導入において1番大きな効果だという。また可視化することで、設計変更の効果を一目で納得してもらうことができるのも非常に大きなメリットだということだ。


バランスが取れていて使いやすい

 ​ソフトウェアクレイドルのソフトについては、バランスの取れた使いやすいソフトだという評価だ。計算精度を確保しながらも、比較的短時間で解析でき、かつ国内ソフトのため価格も高すぎないという。プリに実装されているメッシャーやポストの品質についても満足しているという。またモデル修正機能を利用することで、メッシュ作成時のエラーを減らすことができ、手戻りがほとんどなくなり、大幅に労力が低減しているいうことだ。

 また非構造格子なので、複雑な形状を再現できる。オートメッシャーで境界層もきちんと挿入できるという。特に「ほかのCFDに比べてポストの表示が非常にきれい」(油橋氏)だという。ポストの結果表示機能が豊富なので、視覚的な情報伝達に大きな力を発揮しているそうだ。


国内ソフトであることが決め手に

 1996年、3次元CADを本格的に導入しようという話が進んでいた。それまではある3次元CADを1台だけ導入していたものの、操作が困難で、費用面からも技術部門全体に広めていくのは難しいと考えられた。そこで3Dへの移行の準備として、改めてSolidWorks®を2ライセンス導入した。そして「どのように社内で3Dを展開していくか考えた時に、CAEにも取り組もうという方針になった」(丸山製作所 生産本部 品質ものづくり統括部 品質ものづくり統括課市川孝氏)とCAD、CAEの導入や展開の中心的役割を担っていた市川氏は当時を振り返る。

 その後、SolidWorks®の構造解析機能での経験を重ねたのち、自社製品の特徴をふまえると液体や気体の流れのシミュレーションに取り組むことが適切だと考えられた。そこで検討の末、2000年にSCRYU/Tetra®の導入を決定したという。

 「SCRYU/Tetra®を選んだ理由の一つは、国内ソフトなので未経験の自分たちでも安心してサポートを受けられるだろうという期待が大きかったです。」(市川氏)選定に当たっては他社の2つのツールも検討した。ある解析ツールは曲面のメッシュがうまく切れず、細かいメッシュコントロールができなかった。また一方はメッシュ作成は可能だったが価格面では非常に高価だった。それに対し、SCRYU/Tetra®は望んだメッシュを切ることができ、十分に使用できると判断した。2002年にSolidWorks®を本格導入し、3D設計に移行するとともに、SCRYU/Tetra®も本格使用へと進んだ。並列計算ができるためフローティングライセンスを導入しており、有効に活用できているということだ。

 今後は、得られた解析技術を蓄積してさらに進化させていけるよう「人材育成を進めていきたい」と松田氏は言う。その際は、解析を単なるツールの一部としてブラックボックス的に使用しないよう、きちんと教育を行っていきたいということだ。またキャビテーションも取り組んでいきたい課題の一つだという。プランジャーポンプなどに発生する問題を解決する助けになればということだ。さらに熱も含めた解析への拡張や流体騒音、流体構造の連成解析などを今後は進めていきたいという。着々と流体解析の経験を蓄積していく丸山製作所。今後も同社のよりよい製品づくりにSCRYU/Tetra®が貢献していきそうだ。

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株式会社丸山製作所

  • 創業:1895年
  • 設立:1937年
  • 事業内容:農林業用機械(防除機、林業機械ほか)消防機械、自動車その他農業関連車輛等の製造・販売
  • 代表者:取締役社長 尾頭 正伸
  • 本社所在地:東京都千代田区
  • 資本金:4,651百万円(2014年12月1日現在)
  • URL:http://www.maruyama.co.jp/

※SCRYU/Tetraは、日本における株式会社ソフトウェアクレイドルの登録商標です。
※その他、本パンフレットに記載されている会社名、製品・サービス名は、各社の商標または登録商標です。
※本パンフレットに掲載されている製品の内容・仕様は2014年11月現在のもので、予告なしに変更する場合があります。また、誤植または図、写真の誤りについて弊社は一切の責任を負いません。

  

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