Cradle

 

投稿一覧

金沢工業大学 工学部 様

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
金沢工業大学 工学部 様インタビュー

写真1 金沢工業大学 工学部 機械系 航空システム工学科 担当 准教授
博士(情報科学) 佐々木大輔 氏

工学部の教育現場でCFDを活用 
基礎的な知識の習得に貢献

金沢工業大学工学部航空システム工学科および機械工学科では、航空部門で欠かせないCFDの基礎的な活用法を学ぶため汎用ツールとして熱流体解析ソフトウェアのSCRYU/Tetraを授業に使用している。どのようにCFDを教育現場に取り入れているのか、航空システム工学科の佐々木大輔准教授(写真1)に話を聞いた。 



 金沢工業大学では、工学部航空システム工学科および機械工学科において、汎用CFDを活用した授業や卒業研究などに汎用CFDツールを広く使用している。そこで採用されているのが、ソフトウェアクレイドルの流体解析ツール「SCRYU/Tetra」だ。同大学で空力設計および数値流体力学を専門とする工学部航空システム工学科 准教授の佐々木大輔氏に、授業においてどのように使用しているかや学生の感想などを聞いた。

 佐々木氏の研究テーマの一つは、航空機や流体機械に対して、直交格子を使って、複雑形状に対して効率よくかつ高精度での解析を行う手法であり、解析者ごとの(解析結果の)ばらつきを減らすことも期待できる。流体解析の場合にはSCRYU/Tetraのように非構造格子でメッシュを切ることが多いが、直交格子であれば解析者によって格子の作り方に比較的差が出にくい。そのため解析者ごとの解析結果のばらつきを抑えることができる。また格子を作る手間も非構造より簡略化できる。また、CFDを使ったロバスト最適化にも取り組んでいる。ここでのロバストとは、設計形状や使用条件が設計時の条件と少しくらい差があったとしても、性能が大きく変化しないという意味だ。飛行機であれば、少しマッハ数が変わっただけで抵抗や揚力などの性能が大きく変化してしまうのは、よい設計とは言えない。例えば金沢工業大学は人力飛行機を製作し、飛行距離および飛行時間を競う大会の出場を毎年目指しているが、機体は手作りのため、作りたい形と実際に製作された形状に違いが出てくる場合がある。こういった、ある程度形状が変わっても性能が保証できるような設計手法に取り組んでいる。

パッケージツールを導入

 SCRYU/Tetraは先生が2012年に金沢工業大学に赴任した当時から導入されていたそうだ。ただし買取タイプのライセンスだったため、古いバージョンを5、6年使い続けていた。当時Windows 8がリリースされたことから、機械工学科の先生と相談して更新することにした。タイミングよくSCRYU/Tetraの教育機関向けの「授業用ライセンス(詳細はこちら)」ができたため、これを導入したという。授業用ライセンスは大学や専門学校をはじめとする教育機関で利用可能な専用ライセンスだ。ソフトウェアクレイドルではほかに「ゼミ・研究用ライセンス」も提供している。

 佐々木氏は、「SCRYU/Tetraのよい点は、パッケージツールであることです」と話す。「前処理からソルバー、後処理までが1つのパッケージになっている。そうでなければ格子生成ツールをはじめばらばらに購入しなければいけません。授業で使用する際には、一連の作業がまとめてできるのがよいですね」という。

圧縮性流れなども講義で一通り体験

 金沢工業大学では航空システム工学科3年次の「数値シミュレーション」および専門実験・演習、機械工学科3年次の「流体力学」などの講義でSCRYU/Tetraを使用している。また修士課程(博士前期課程)の講義や卒業研究などでも使用している。航空システム工学科では3年後期に「数値シミュレーション」という科 目ではじめてCFDツールを操作する(写真2)。


kanazawa_picture2.png写真2 航空システム工学科「数値シミュレーション」授業風景


 この授業は、全16週のうち前半の8週で構造解析、後半の8週でCFDの汎用ツールを用いて、解析ツールがどのようなものか、ツールの操作方法など、基本的なことを学ぶ。この流体解析ツールにSCRYU/Tetraが採用されている。

 CFDでは2週間ごとに1つのテーマに取り組んでレポートを提出する。4つのテーマは、高速流れ、非定常流れ、乱流、そして学生自身が問題を設定して解くものからなる。1つ目の高速流れでは、モデル化も含め、非粘性の状態で衝撃波の発生するテーマになる。また格子生成の重要性についても解説する。2つ目は円柱周りの流れを解析する。3つ目は、翼型における乱流解析を行う。

 授業では、はじめの30分程度CFDの基礎事項を解説し、残りの1時間ほどは演習を行う。演習では配布資料に基づいて、学生自身がメッシュの作成から解析、計算、可視化までを行う。学生同士で相談しながら進めたり、ティーチングアシスタントに質問したりしながら進めていくという。

流体解析がどういうものかをまずは知ってほしい

 佐々木氏は授業での目標について、「流体解析ツールがどう動いているかという一連の流れを理解できること」を挙げる。1つ目のテーマに衝撃波を伴う圧縮性流れを取り上げているのは、ソフトウェアは圧縮性で解くべきところを非圧縮性として解析しても解が出るため、卒業研究などで解析を行った際に、それで正しいと思ってしまい気づかない可能性があるからだという。格子の切り方についても、なぜ格子をそこに切らなければいけないのか、多くしすぎるとどうなるかなど、解析に必要な最低限の知識を身に付けてほしいとする。その上で必要であれば自分で勉強してもらうが、そのために必要な最低限の知識は身に付けてほしいということだ。

 数値シミュレーションの講義は取材の時点で、流体解析の1週目が終わったところだった。受講している学生に感想を聞いてみたところ、口をそろえていたのが、「格子が切りやすい」という感想だった。「講義の前半で取り組んだ構造解析は数値で範囲を入力しなければならないが、SCRYU/Tetraではモデル上で範囲指定ができるので簡単でした」(航空システム工学科 3年の井村祐基氏/写真3・左)。一方、「CFDならではの用語が出てくるので、慣れないうちは大変です」(同、西井健介氏/写真3・右)という。


kanazawa_picture3.png
写真3 航空システム工学科3年
井村祐基 氏(左)、西井健介 氏(右)


 佐々木氏によると、やはり一度目はスムーズに進めるのは難しいようだ。「構造解析より設定が多いので、それに慣れるまでが大変だと思います」(佐々木氏)。境界条件の設定の間違いが一番多く、6面それぞれの指定が間違っていたりする。また計算が途中で止まったり、出てきた結果がおかしかったりすることもある。一度うまくいけば、あとは自分でできるようになっていくだろうということだ。

 同じく授業を受けている丹治沙織氏(写真4)は、昨年インターンで設計を行う企業に行き、丸一日SCRYU/Tetraの使い方を教わり、また社内で整備されているマニュアルを用いながら作業したことがあるという。「次の日に振り返ると、どういうことをやっていたか理解できた」(丹治氏)ということからも、操作は大変だが、一通りの作業を体験することで、CFDの使用の流れを理解し、有用な結果を得られるようだ。


kanazawa_picture4.png
写真4 航空システム工学科3年 丹治沙織 氏


人力飛行機など自由な形状を解析

 講義の4つ目のテーマでは、用意された翼型のモデルを使用するか、または自分の計算したいもののモデルを用意して解析を行い、レポートを提出する。物性や流れの情報を設定したりするため、自分で調べなければ解析ができない。昨年は半数ほどが各自の興味のあるものを解析し、すでにある翼型に独自のパーツを取り付けて性能がどう変わるかを調べたり、アイスホッケーのパックの動きを調べた学生がいたそうだ。

 また金沢工業大学では、ものづくり系の課外活動として人力飛行機プロジェクトや小型無人飛行機プロジェクトなどがある。これらに参加する学生も多いため、自分たちが使っている翼型について計算して流れを見たいという学生もいるそうだ。同じく講義を受講中の西岡航太氏(写真5)は、昨年は人力飛行機のパイロットを務め、今年は設計者として機体の設計を担当しているという。昨年からSCRYU/Tetraを設計に利用しており、機体の抗力がどれくらい減るかをシミュレーションしている。またフェアリング(人の乗る部分)内部の空気流れも計算したいという。インテーク位置が適切でないと内部を冷却できず、非常に高温になるためだ。


kanazawa_picture5.png
写真5 航空システム工学科3年
西岡 航太 氏


マニュアルを見れば初心者でも一通りのことがわかる

 ティーチングアシスタントのお二人にも話を聞いた。機械工学専攻修士課程2年の廣瀬拓也氏(写真6・右)は、研究室に配属された際に初めてSCRYU/Tetraを使用したという。初めのころに取り組んだ2つの入り口、1つの出口のバルブには苦労したという。様々なパーツが組み合わさっており、干渉面を取り除くといったことが大変だったそうだ。現在は,直交格子法による自作の固体ロケット燃焼室内部流解析プログラムの検証に使用しているそうだ。SCRYU/Tetraのよいところは、計算が安定しているところだという。

 同じく修士1年の國塩泰希氏(写真6・左)は、この講義でSCRYU/Tetraに触れて以来、現在まで使用している。初めのころは手順通りにやっているつもりでもエラーが出て、原因もわからず大変だったが、現在は格子や境界条件など、原因が何か予測がつくようになったそうだ。またわからないことは、ソフトウェアクレイドルのマニュアルを見ればたいてい解決するそうだ。「CFDに初めて取り組む人を想定しているので、基本的な言葉も解説されていて、初心者でも一通りのことが分かります」(國塩氏)。

 佐々木氏は、応用力を高めるために、クレイドルのマニュアルも参考にしてほしいという。解析対象と似たような演習問題が載っているとのことだ。2つ目のテーマである円柱周りの非定常流れ(図1)は、3年次の専門実験で、同様の円柱周りの流れを風洞実験で行っている。こういった対比も可能になっているので、より流体現象への理解を深めてほしいということだ。


kanazawa_figure1.png
図1 円柱周りの非定常層流解析。非定常流れ場を理解する。


 ソフトウェアについては、一貫して作業でき授業に使いやすいということだが、授業用ライセンスについては2並列までしか対応していないため、作業に時間が掛かるそうだ。大学の設備自体も全学で利用するもののため、利用するパソコンにほかのツールが入っていたり様々な制限があるため一概には言えないが、この点はもう少し融通が利くとよいだろうということだ。

CFDの需要は確実に高まっている

 流体解析は、航空機や流体機械のように流体との関わりが必須の分野以外にも使われている。工学系の実験をメインとする分野でも流体と関わるものは多いため、そういった分野でも解析ツールを役立てていけるのではという。たとえば同大学には日本刀の研究グループもあり、機能美や構造材料など多角的なアプローチの中で、風洞実験およびCFDによる風切り音の研究もあるという。一方で企業においても流体解析を取り入れたいというニーズも高まっている。特に中小企業は関心があっても導入できていないところも多く、そういった点でも学生への教育は重要であるといえるようだ。

 今後はSCRYU/Tetraも活用しつつ、移動体、回転体などに研究応用を進めていければという。とくに最近、流体解析のニーズが高まっているのがドローンだ。なかでもドローンの安全性をより高めたり、電池寿命を延ばすための空力性能の向上といった需要は高い。そういった課題に空力的な面から検討、アドバイスができるだろうという。

 またロバスト設計を進め、適切な設計条件や、少ない回数での効率的な最適化手法の検討を進めていく。基本的に佐々木氏の研究する最適化プログラム(設計ツール)についてはSCRYU/Tetraなどの商用ツールと組み合わせられるような形で開発されているという。SCRYU/Tetraとのコンビネーションによって、教育および研究の進展がますます期待できそうだ。

maruyama_logo.jpg


金沢工業大学 工学部 航空システム工学科・機械工学科

 

※SCRYU/Tetraは、日本における株式会社ソフトウェアクレイドルの登録商標です。
※その他、本インタビュー記事に記載されている会社名、製品・サービス名は、各社の商標または登録商標です。
※本インタビュー記事の内容は2016年11月現在のもので、予告なしに変更する場合があります。また、誤植または図、写真の誤りについて弊社は一切の責任を負いません。

  

教育機関向けライセンスのご紹介

教育機関向けライセンスは、企業向けライセンスと同じフル機能がご使用いただけます。またソフトウェアクレイドルによる技術サポートも受けられますので安心してご導入いただけます。
以下の2種類の教育機関向けライセンスをご提供しています。

●ゼミ・研究用ライセンス
●授業用ライセンス

教育機関向けライセンスの価格、その他ご質問は下記の各営業部までお問い合わせください。

<ソフトウェアクレイドル 営業部>
電話: 大阪本社 06-6343-5641 / 東京支社 03-5435-5641

  

PDFダウンロード

 

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ピックアップコンテンツ