もっと知りたい! 熱流体解析の基礎55 第6章 熱流体解析の手法:6.3.3 メッシュの種類

6.3.3 メッシュの種類
空間分割に用いられる メッシュ は 構造格子 と 非構造格子 の2種類に大別されます。構造格子は図6.23に示すように 要素 が規則的に配置されたメッシュです。
図6.23 構造格子の例
構造格子では、独立な方向における要素アドレスをi, j(3次元の場合はi, j, k)とした場合に、iとjの組み合わせによって一意に要素が定められます。また、構造格子というと図6.23の左図に示すような直交格子がイメージされがちですが、右図のように曲がったメッシュであっても要素が規則的に並んでいるものは構造格子に含まれます。なお、このように境界に沿ったメッシュのことを 境界適合格子(Boundary Fitted Coordinate: BFC)といいます。これに対して、図6.24に示すように不規則に要素が配置されたメッシュを非構造格子といいます。
図6.24 非構造格子の例
円柱・三角柱・球をそれぞれのメッシュで分割すると、その結果は図6.25のようになります。
図6.25 構造格子と非構造格子による分割例
3次元の場合、それぞれのメッシュは主に図6.26に示す要素から構成されます。構造格子では通常、6面体(ヘキサ)要素のみが用いられますが、非構造格子では6面体要素を含めた複数種の要素の組み合わせによってメッシュが構成されます。
図6.26 代表的な要素形状
構造格子では、メッシュに沿わない面が階段状の形状表現になる短所があるものの、メッシュをコントロールするパラメータが少ない分、非構造格子に比べてメッシュ生成が容易に行えます。また、要素が規則的に並んでいるため、メッシュ作成に要する時間や要素数あたりの計算時間が短いという長所も有しています。
一方で、非構造格子の長所や短所は構造格子とは逆になります。要素配置が不規則であるため、構造格子よりもメッシュ生成の難易度が高く、メッシュ作成に要する時間や要素数あたりの計算時間が長くなります。その反面、要素配置の自由度が高く形状表現に優れていることが最大の長所です。形状抵抗 の評価や回転機器の解析などのように形状を再現することが重要な解析では、非構造格子の一択となるケースも数多く存在します。
もっと知りたい 変数の配置メッシュは変数配置によっても分類され、代表的なものとして スタガード(スタッガード)格子 と コロケート格子 が挙げられます。
スタガード格子は、スカラー変数(圧力 や 温度 など)を要素の中心、面に垂直な 速度 成分を要素面の中心に配置したメッシュです。スタガード(staggered)は「互い違いの」という意味で、スカラー変数と速度成分が千鳥状の配置となっていることからこのように呼ばれます。
図6.27 スタガード格子
一方、コロケート格子は速度成分とスカラー変数のすべてを要素の中心に配置し、さらに補助変数として、要素面に流束(フラックス)成分を配置して計算を行うメッシュです。
図6.28 コロケート格子
一般には、メッシュの分割方向と速度成分の定義方向が一致する直交構造格子ではスタガード格子、要素面の向きと速度成分の定義方向が異なる非構造格子ではコロケート格子というように使い分けられます。
著者プロフィール
上山 篤史 | 1983年9月 兵庫県生まれ
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程修了
博士(工学)
学生時代は流体・構造連成問題に対する計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、既存ユーザーの技術サポートやセミナー、トレーニング業務などを担当。執筆したコラムに「流体解析の基礎講座」がある。
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