装置設計者のための騒音の基礎 第18回

フーリエ解析
今回からフーリエ解析を行う際の基本事項について説明します。今回は、フーリエ解析の概要について説明します。
フーリエ解析は、信号を正弦波関数の組合せにより周波数成分に分解する手法を言います。例えば、音あるいは振動を低減することを考えてみます。計測の結果、図1に示すような波形が得られたとしても、このままでは、2msピッチの繰り返しが大きそうだというくらいの手がかりしか得られません。そこで、この信号波形にフーリエ解析を行うと、図2に示すような結果が得られ、周波数が1500Hzの成分が最大であることがわかります。したがって、1500Hzの発生源がないか、あるいは、1500Hzでの共振が起きていないかを検討するといった具体的な方針が立てられます。図2は周波数スペクトルとも呼ばれ、一連の解析はスペクトル解析とも呼ばれます。
図1 信号波形
図2 フーリエ解析結果
ここで、用語について簡単に説明します。数学の分野では、フーリエ解析は、関数をフーリエ級数に展開することを言います。これに対して、工学分野では、フーリエ解析は、離散化された信号を周波数成分に変換する手法、すなわちDFT(Discrete Fourier Transform、離散フーリエ変換)を指します。DFTのうち、データ数が2のべき乗のときにフーリエ変換を高速化できる手法がFFT(Fast Fourier Transform、高速フーリエ変換)です。
FFTアナライザあるいはFFT解析ソフトは、信号波形から周波数スペクトルへの変換を自動で行うため、利用者は、フーリエ変換について理解する必要はありません。しかしながら、結果を解釈したり、より良い解析を行ったりするためには、フーリエ解析についてのある程度の知識は必要となります。
次回から、DFTの実際、ナイキストの標本化定理と周波数スペクトルとの関係、時間波形と周波数スペクトルとの量的関係を示すパーシバルの定理とパワースペクトル、窓関数といったことについて説明します。
次回は、エクセルを用いてFFT処理を行ってみます。
【参考文献】 機械音響工学 鈴木ほか コロナ社
著者プロフィール
御法川 学 氏 | 法政大学 理工学部 機械工学科 教授
環境計量士(騒音・振動)
1992年 法政大学大学院 工学研究科 機械工学専攻
1992年 株式会社荏原総合研究所 入社
1999年 法政大学工学部 助手
2001年 東京工業大学にて学位取得、博士(工学)
2004年 法政大学工学部 助教授
2010年 法政大学理工学部 教授
著者プロフィール
伊藤 孝宏 氏 | オリエンタルモーター株式会社 技術支援部主席研究員
1982年 筑波大学基礎工学類卒業。新日本製鉄株式会社に入社、加熱・冷却設備の開発に従事
1988年 オリエンタルモーター株式会社に入社、送風機の羽根・フレームの開発・設計に従事
2008年 法政大学にて学位取得、博士(工学)
2014年1月現在、オリエンタルモーター株式会社 技術支援部主席研究員
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