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装置設計者のための騒音の基礎 第17回

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装置設計者のための騒音の基礎

量子化誤差

 今回は、量子化誤差について説明します。量子化誤差は、アナログ量を離散化する際に生じる誤差です。

 エクセルで量子化の実験を行ってみます。前回、標本化の実験で用いたエクセルシートに、図1に示すようにビット数を入力する欄を設け、C列にINT(B4*(2^($B$2-1)-1))/ (2^($B$2-1)-1)と入力し、セルの右下をダブルクリックすると、量子化されたデータが得られます。


図1 正弦波信号の量子化

 図2は4ビットで量子化した場合の結果で、青い線が元のデータを、赤い丸が量子化された結果を表します。同様に、図3が8ビットで、また図4が16ビットで量子化した場合を示します。4ビットでは青い線で示す元のデータと、赤い丸で示す量子化された結果とは大きくずれていることがわかります。一方、8ビットでの量子化を示す図3を見ると、青い線で示す元のデータと赤い丸で示す量子化された結果とは、ほぼ一致しますが、赤い丸の並びはわずかに乱れていることがわかります。図4に示す16ビットでの量子化では、赤い丸の並びも滑らかなものになり、青い線で示す元のデータと良く一致していることがわかります。


図2 4bitでの量子化


図3 8bitでの量子化


図4 16bitでの量子化

 このように、ビット数を増やせば、元のデータを忠実に表せることがわかります。次に、どのくらいのビット数が必要なのかを検討してみます。
 誤差を評価する際は、信号の最大値との比、すなわちSN比(シグナル・ノイズ比)を用いると便利です。SN比は、信号の最大振幅をβ、誤差をσとして、レベル表示では下記で表され、ダイナミックレンジとも呼ばれます。

 ここで、信号をnビットの符号付二進数で表すとすると、最大振幅は β = 2 n-1 -1 となります。一方、誤差は、最大で1/2となります(離散化された値は整数となり、元の値がその中間にあった場合に離散化された値ともっとも離れるため)。したがって、

 これは、レベル表現なので音圧レベルなどとの比較が可能です。例えば、4ビットでデジタル化した場合、24dBとなり、下限の値を20dBで計測すると、44dBまでしか計測できないことになります(44dBを超えた値は44dBとして計測)。16ビットでは、ダイナミックレンジは96dBと可聴域のほとんどをカバーするため、コンパクトディスクへの音楽の収録に使われています。ただし、計測に対しては、不十分であり、16ビットの計測器では、計測したい信号にあわせて計測範囲を設定する必要があります。これが24ビットになると、ダイナミックレンジは144dBと、一般的な騒音計測では十分なダイナミックレンジが得られます。

 次回からフーリエ解析について説明します。


【参考文献】 機械音響工学 鈴木ほか コロナ社 





著者プロフィール
御法川 学 氏 | 法政大学 理工学部 機械工学科 教授
環境計量士(騒音・振動)

1992年 法政大学大学院 工学研究科 機械工学専攻
1992年 株式会社荏原総合研究所 入社
1999年 法政大学工学部 助手
2001年 東京工業大学にて学位取得、博士(工学)
2004年 法政大学工学部 助教授
2010年 法政大学理工学部 教授




著者プロフィール
伊藤 孝宏 氏 | オリエンタルモーター株式会社 技術支援部主席研究員

1982年 筑波大学基礎工学類卒業。新日本製鉄株式会社に入社、加熱・冷却設備の開発に従事
1988年 オリエンタルモーター株式会社に入社、送風機の羽根・フレームの開発・設計に従事
2008年 法政大学にて学位取得、博士(工学)
2014年1月現在、オリエンタルモーター株式会社 技術支援部主席研究員

 

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