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代表長さの選び方 8.代表長さと現象の見え方

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代表長さの選び方

8.代表長さと現象の見え方

 おまけです。図10は 層流 に見えます。



図10 層流に見える流れ


 次に、図11を見てください。これは 乱流 に見えますよね。



図11 乱流に見える流れ


 種明かしをします。図10は図11の一部を拡大して表示した流れだったのです。



図12 図10と図11の関係


 このように、現象の見え方というのは観察するスケールによって変わってくるのです。同じ流れでも、小さなスケールで観察すれば、層流に見えます。大きなスケールで見れば乱流に見えます。実は、これも代表長さと関係があります。

 図11の流れのレイノルズ数を計算するとき、普通は代表長さに流路の幅を選びたくなります。これは、そういうスケールで流れを観察しているからです。ここでもし、図11の状況を知らない状態で、図10だけを見せられて、レイノルズ数を計算しなさい、と言われたら、どうしますか?特に手がかりも無いので、しかたないのでの直径あたりを代表長さに選びたくなりませんか?そうすると、図10を見て思い浮かべる代表長さと、図11を見て思い浮かべる代表長さはまったく違うものになります。その結果、図10のレイノルズ数は小さく、図11のレイノルズ数は大きくなり、それに対応するかのように、図10は層流に、図11は乱流に見えます。どちらも同じ流れなのに。面白いですよね。別の観点で考えてみます。乱流とは無数の小さな渦を含んだ流れだと言われています。この「小さな」とは、何に対して小さいのでしょうか?ここまでの話を考えれば、代表長さに対して小さい、と考えるのが自然ですね。このように、代表長さとは、観察のスケールを反映したものでもあるのです。

本日のまとめ:現象は観察のスケールによって見え方が変わる。代表長さは観察のスケールを反映している。





著者プロフィール
吉井 佑太郎 | 1987年2月 奈良県生まれ
名古屋大学大学院 情報科学研究科 複雑系科学専攻 修士課程修了

学生時代は有限要素法や渦法による混相流の数値計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、技術サポートやセミナー講師、ソフトウェア機能の仕様検討などを担当。

 

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