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代表長さの選び方 5.模型試験

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代表長さの選び方

5.模型試験

 物理現象に 相似則 が成り立つということは非常に重要なことで、相似則がないと模型試験は成り立ちません。寸法を変えたら直ちに物理現象が変わってしまうのであれば、縮小模型を使った試験に意味はなくなってしまいます。寸法を変えても、無次元数 さえ合わせれば、実物大と同じ現象を再現できることが、模型試験の妥当性を保障しています。

 例えば自動車に作用する空気抵抗を、縮小模型で調べることを考えます。自動車の周りの空気の流れは 単相流 非圧縮 とみなせるので、流れは レイノルズ数 だけで決まると考えられます。つまりレイノルズ数を実物大の車体のものに合わせれば、模型試験でも同じように空気抵抗を調べることができます。

 実物のレイノルズ数が10万なら、模型でも同じように10万にします。もちろん実物と模型では寸法が違うので、その分は他のパラメータ(例えば 速度)を変更する必要があります。一例として、1/2の縮小模型を使う場合、それを速度で補おうとすれば、レイノルズ数を同じにするためには、速度は2倍にしなければなりません。



図5 模型試験


 ジェット機の 空気抵抗 揚力 を縮小模型で調べる場合は、単相流である点は自動車と同じですが、速度が速く、もはや非圧縮流れとみなすことができないので、レイノルズ数以外に マッハ数 も合わせる必要があります。

 船舶の造波抵抗を縮小模型で調べる場合、非圧縮とはみなせますが 気液二相流 となるので、レイノルズ数以外にも、フルード数ウェーバー数(慣性力と 表面張力 の比)、気液の密度比、粘性比といった、他の多数の無次元数も現象に関連します。厳密に試験をするなら、これら全てを実物と合わせる必要がありますが、実際にはこれら全てを合わせるのは極めて難しいので、影響の度合いが最も大きいと見込まれるフルード数を揃えて試験が行われます。

本日のまとめ:模型試験ができるのは、相似則のおかげである。





著者プロフィール
吉井 佑太郎 | 1987年2月 奈良県生まれ
名古屋大学大学院 情報科学研究科 複雑系科学専攻 修士課程修了

学生時代は有限要素法や渦法による混相流の数値計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、技術サポートやセミナー講師、ソフトウェア機能の仕様検討などを担当。

 

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