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代表長さの選び方 4.相似則

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代表長さの選び方

4.相似則

 無次元数 と切っても切り離せないのが 相似則 です。物理現象には相似則というものがあります。ところで相似とはなんでしょう。半径 1 m の円と、半径 5 m の円が相似であるというのはわかると思います。あるいは一辺が 30 cm の正三角形と、一辺が 90 cm の正三角形は相似です。相似かどうかは、その図形から寸法を取り去ったときに見分けがつくかどうか、ということです。では長方形はどうでしょう。1 cm × 2 cm の長方形と、5 cm × 10 cm の長方形は相似ですが、3 cm × 4 cm の長方形は相似ではありません。寸法を取り去っても見分けがつくからです。





図3 相似(円AとB、正三角形CとD、長方形EとFは相似だが、長方形EとGは相似ではない)


 物理現象の相似則とはまさにこれと同じです。下図は円柱に流れを当てたときの カルマン渦 を見ています。





図4 流れの相似


  AとBは寸法がなくても見分けがつきます。渦の大きさがぜんぜん違いますね。ではAとCはどうでしょう。寸法を取り去るとまったく見分けはつきません。実は、カルマン渦列は交互に放出されるので、その放出の周期(周波数)によって寸法が違うことがばれてしまうのですが、その場合は時間方向の寸法も取り去って比較します。つまり渦放出の周期が同じになるように、片方を早送りにするのです。ここまでして初めて見分けがつかなくなりますが、この場合も相似と言っていいことになっています。

 このように、物理現象では寸法が違っても現象は相似になる場合があります。それには条件があります。現象に関連する全ての無次元数が同じになっていることです。このコラムはクレイドルのコラムなので、おそらく皆さん レイノルズ数 Re というのはご存知でしょう。Re = ρUL/μで、ρ  流体 密度 代表速度 代表長さμ は流体の 粘性係数 です。詳しくは流体力学の教科書や別コラムなどにおまかせしますが、簡単にいえば、分母が 粘性 による力、分子が慣性(流れの勢い)による力で、レイノルズ数はこれらの比を表しています。分母と分子の次元が同じになっていることを確認してください。

 円柱の周りの空気の流れに関連する無次元数は、レイノルズ数だけであることが知られています。つまり、図4のAとCは、レイノルズ数が同じなわけです。もちろん厳密にいえば、他の無次元数、例えば マッハ数 速度 音速 の比)や フルード数 (慣性力と重力の比)なども、無関係とはいえないでしょう。その意味で厳密にレイノルズ数だけで決まる流れとは、単相流 で、完全に 非圧縮 とみなせる流れです。ただ、厳密にそうではなくても、それに近ければ(例えば低マッハ数の単相流)、ほぼレイノルズ数だけで決まると言っても差し支えありません。

本日のまとめ:関連する無次元数が全て同じ現象は、お互いに相似である。





著者プロフィール
吉井 佑太郎 | 1987年2月 奈良県生まれ
名古屋大学大学院 情報科学研究科 複雑系科学専攻 修士課程修了

学生時代は有限要素法や渦法による混相流の数値計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、技術サポートやセミナー講師、ソフトウェア機能の仕様検討などを担当。

 

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