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建築デザイナー必見!ビル風コラム 第11回:「ビル風6」:防風対策について

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建築デザイナー必見!ビル風コラム

11.1 対策の方針

 防風対策の目的はビル風による突風の影響を緩和することです。防風といっても通常は風を完全に遮断することを目的とはしません。風を適度な強さに弱めることが目的となります。

 ビルが無くても突風は吹きます。ビルが有るとその周辺では局所的にさらに強い突風が吹くことがあります。その局所的に強くなる突風をほどほどに弱めることが重要です。弱めすぎると他の箇所の風が強くなってしまいます。

 また、防風対策によって、その場所の機能性や景観を損ねてしまう場合も考えられます。風は常に吹いているわけではないので、防風対策によるメリットとデメリットのバランスを考えながら対策を講じていく必要があります。

11.2 植栽による対策

 最もポピュラーな対策です。防風対策のための樹木は常緑樹である必要がある・・・と思っている人が多いようですが、落葉樹でもかまいません。むしろ落葉樹を積極的に利用して、冬の採光性を保つなどの設計をしてください。当然、落葉樹は冬に葉っぱがありませんので、それを考慮した解析が必要になります。弊社では基準風のワイブルパラメータを季節ごとに分解し、風速比も季節ごとに解析します。手間は掛かりますが、落葉樹も考慮した評価を行うことが出来ます(図1)。


植栽による防風対策イメージ
図1 植栽による防風対策イメージ


 ただし、注意点があります。東京都の総合設計制度における風環境評価の際は、落葉樹を考慮するのはNGとされています。理由は・・・前例が無いからのようです(汗)。

 防風植栽は樹高が高いほど防風効果も高い・・・と思っている人も多いようですが、歩行者に対する防風効果は、吹き降ろしを伴うような箇所では樹高が効いてきますが、水平方向にしか風が吹いていない箇所では樹高よりも樹冠幅の方が効いてきます。防風対策をする箇所がどのような風の流れ方をするのかよって、有効な植栽の形状が変わってきます。

 なお、総合設計制度における風環境評価に限らず、防風植栽を評価基準(建設後、新たにランク3以上を発生させない)ギリギリでクリアできるように設定される設計者が多いかと思いますが、その際、防風植栽と定義しない樹木を含めた評価も必ず忘れずに行ってください。樹木は多ければ多いほどあらゆる箇所の風環境が良くなるわけではありません。植栽を多く植えることで、ある箇所の風が弱くなっても、他の箇所の風が強くなる場合もあるのです。

 植栽による防風対策は、緑化のメリットである「美しい景観、大気の浄化、ヒートアイランド現象の緩和等」を伴うので、特に都市部では使われやすい対策と言えます。一方で、植栽は年月と共に形態が変化していくため、防風効果も年月と共に変化することに注意を払う必要があります。すわなち、維持と管理に手間やお金が掛かる場合があることを忘れてはいけません。

 また、風が強い箇所に植える植栽は乾燥しやすいため、乾燥に強い樹種を選定するようにしてください。例えば、最近、関東でもシマトネリコを植栽することが多いようですが、一応常緑樹のため防風植栽として設定する設計者がたまにいます。しかし、シマトネリコは寒さにも乾燥にも弱いので、関東の空っ風には耐えられず、うまく育たない場合が多いようです。こういった樹種は防風植栽としてはNGですのでご注意を。

 防風植栽としてよく使われる樹種例(関東):タブノキ、シラカシ、ケヤキ等

11.3 フェンス等構造物(建物本体以外)による対策

 植栽の次によく使われる対策です。フェンスといっても開口率0%の物もありますし、開口率が様々なメッシュ状フェンスやルーバー状フェンスもあります。基本的には開口率によって防風効果の特性が異なりますが、通常は適度に風が抜ける状態が望ましいため、開口率は20~30%程度の物が採用されることが多いと思います。

 開口率が0%の場合、その風下側直近の風はかなり弱くなるのですが、すぐに風が巻き込んでしまい、風が弱くなる範囲が風下方向に狭いことも多いです。また、フェンスの上は風が強くなりやすく、フェンスに作用する風荷重も大きいため、メリットよりもデメリットの方が目立つこともあります。

 開口率が数十%程度の場合、風下側の風はほどほどに弱くなり、弱くなる範囲が風下方向に比較的長くなる傾向にあります。開口率0%に比べると、フェンスの上の風はそれほど強くはなりませんし、風荷重も小さくなります。ただし、開口部の形状や構造によっては風切音や振動音が発生する場合があるので注意が必要です(図2)。


フェンスによる防風対策イメージ
図2 フェンスによる防風対策イメージ


 フェンス以外では広範囲をカバーするための防風ネットやスクリーン、パーゴラ等もあります。風の抵抗となるようなものであればどんな構造物でも結果的には防風対策となる可能性があり、例えば機械式駐車場は意図せずとも防風効果を発揮する場合が多いです。

11.4 建物本体の形状による対策

 風が物に当たると風の抵抗を受けます。風の抵抗の大きさは物の形状に大きく依存しています。角ばった物よりは丸まった物の方が、風の抵抗が小さいことは経験的にも感覚的にも理解しやすいと思います。

 風は物の周辺を通り過ぎる際にスムーズに流れておらず、風下に行きたいのに一旦横方向に迂回したり、迂回した際にその勢いで物から剥がれながら風下へ向かおうとし、一部の流れは物との隙間で渦を巻き、物を通り過ぎる際にまた剥がれ、物の風下側で大きな渦を形成したり、大きな乱れを伴ったりします。以上の現象は風の抵抗が大きいほど顕著になり剥離流が発生しやすく、強風域が大きくなりやすいのです。

 建物の場合も平面形状を工夫して防風対策を行うことができます。形状的に風の抵抗を小さくすれば、剥離流が発生する範囲は小さくなる傾向があり、建物に作用する風荷重も小さくなります。ただし、このような対策は一部の大規模な建物でしか採用されず、比較的小規模な建物の場合はほとんど行われていないのが現実です(図3)。


隅角部の切除・円形化による防風対策のイメージ
図3 隅角部の切除・円形化による防風対策のイメージ


 平面形状の工夫以外にも吹き降ろしを歩行者レベルまで到達させないという発想で、あえて建物を高層化した上で、低層部を大きめに作る考え方もあります(図4)。


低層部を設ける防風対策のイメージ
図4 低層部を設ける防風対策のイメージ


また同じような考え方で歩道上にアーケードを設けるのも有効です(図5)。


アーケードを設ける防風対策イメージ
図5 アーケードを設ける防風対策イメージ


 日影規制によりセットバックしている建物が多いですが、セットバックは結果的に防風対策にもなります(図6)。


セットバックによる防風対策のイメージ
図6 セットバックによる防風対策のイメージ


 はめ込みガラスで表面がつるっとした商業ビルなどよりも、ベランダ等による凹凸のあるマンションなどの方が、強い風が小さな乱れに変換されることで風のエネルギーが吸収され、周辺の風を弱める効果があるとされています(図7)。

 ただし、すでに乱れが大きな市街地の中ではさほど大きな効果が現れないことが多いので、ご注意を。


表面に粗さを設ける防風対策イメージ
図7 表面に粗さを設ける防風対策イメージ


 中空化も原理的には有効なのですが、一般的な建築物ではあまり採用されることは無いと思います。中空化の例としては東京都港区にあるNEC本社ビルは有名です。中空化部分に風力発電機を設置するなどプラスアルファのメリットがあれば、採用されるケースも増えるかもしれませんね(図8)。


中空化による防風対策イメージ
図8 中空化による防風対策イメージ


11.5 建物の配置による対策

 建物の配置を工夫することで防風対策を行うことも可能です。例えば十分に広い敷地であれば、強風域が発生する範囲を見越して、それが敷地内に収まる配置にすることが考えられます(図9)。


空地調整による防風対策イメージ
図8 空地調整による防風対策イメージ


 地域によって風がよく吹く風向には特性があります。板状の建物などは、そういった風の吹く頻度の高い風向に対して、建物の妻面を向けることで防風対策をする考え方もあります(図10)。

 ただし、マンションなどではリビングを南寄りの住戸としたいという理由から板状建物の多くは東西方向に長いことが多く、南北方向に風が吹きやすい関東では、残念ながら防風対策には繋がらず、逆に東西側に強風域を作ってしまっていることが多いです。


風の抵抗が小さい方向を卓越風の風上にする防風対策イメージ
図10 風の抵抗が小さい方向を卓越風の風上にする防風対策イメージ


隣棟の向きを調整することで防風対策を行う考え方もあります(図11)。


隣棟の配置を考える防風対策イメージ
図11 隣棟の配置を考える防風対策イメージ


 建物の配置調整は防風対策だけではなく、風の道を作ったりすることも可能なため、都市開発のレベルでは非常に重要な考え方となります。

11.6 まとめ

 今回はビル風の防風対策について説明しました。次回は防風対策の解析例をご紹介したいと思います。

※ 参考 「日大教科書:丸田栄蔵著 建築防災工学プリント」






著者プロフィール
松山 哲雄 | 1973年1月 新潟県生まれ
⽇本⼤学⽣産⼯学部 建築⼯学科 耐⾵⼯学専攻

1998 年に熊⾕組⼊社。技術研究所にて、⾵⼯学の基礎研究に従事。超⾼層建物の空⼒振動シミュレーション技術の開発やCFD 解析による⾵環境評価技術の普及展開等を実施。2003 年に独⽴し、WindStyle を設⽴。CFD 解析や⾵洞実験および実測調査を通して、ビル⾵問題を中⼼に⾵⼯学に関わる様々な問題を解決するためのコンサルティングサービスを展開し、現在に⾄る。 

 

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