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事例で学ぶ!これだけは知っておきたい最適化の使い方~熱流体編 第3回 缶詰の形状最適化(3)

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事例で学ぶ!これだけは知っておきたい最適化の使い方

EOoptiではユーザーがサンプル数を決定する必要があり、目安として設計変数の数をNとして( N+1 )x( N+2 )以上としています。しかしながら、複雑な変化をする現象に対しては、( N+1 )x( N+2 )では足りないかもしれません。では、どの程度のサンプル数が必要となるのか、簡単な関数を用い異なるサンプル数で応答曲面の形状や最適解がどのように変わるかを見てみます。

実験に用いた関数

例として、の範囲で、が最大となる条件を探索させてみます。この関数の形状は、図3.1に示すように複数の極大値を持ちますが、においては、x=0, y=0 で最大となり、最大値は2となります。



図3.1 cos(x)+cos(y)


変数は x, y の2つであり、サンプル数としては、( 2+1 ) x ( 2+2 ) = 12 以上必要です。そこでサンプル数が12、24、36でEOoptiによる最適化を行い、応答曲面の形状と最適解が正しく求められるかを見てみます。

図3.2がサンプル数12での応答曲面です。一見して分かるように、x=0, y=0 を中心とした対称性が損なわれています。また、最大値も約1.56と低い値となっています。



図3.2 サンプル数12での応答曲面


図3.3がサンプル数24での応答曲面です。図3.2と比べて対称性は改善されてきましたが、yに対しては左右非対称となっています。なお、応答曲面の形状はサンプリング点の配置により異なるため、同じ結果となるとは限りません。 図3.4がサンプル数36での応答曲面です。図3.1に示す解析的に描いた形状とよく似た形状となっています。また、最大値も2と解析的に求まる最大値とも一致します。



図3.3 サンプル数24での応答曲面



図3.4 サンプル数36での応答曲面


次に最適解の探索結果を見てみます。図3.5は、応答曲面の値が最大となる x と y との組み合わせを横軸に x 、縦軸に y としてプロットしたものです。サンプル数12では、x=-0.19、y=-0.73で応答曲面が最大となり、サンプル数24では、x=0.22、y=0.06で応答曲面が最大となります。一方、サンプル数36では、x=-0.0002、y=-0.0031で応答曲面が最大で、その値は2.0となります。これは、解析的に求めたx=0、y=0 で最大値2とほぼ一致します。



図3.5 サンプル数による最適解の変化

一方、応答曲面全体の形状ではなく最適解付近の形状を改善するのであれば、Efficient Global Optimizationという手法を用いて、より少ないサンプル数の追加で達成することが可能です。EOoptiの最適解探索を目的関数からEI値(現在得られているサンプル値の最小値・最大値に対してサンプル点を追加したときに、新たな最小値・最大値となり得る度合い)にして、EI値が最大となる設計変数と目的関数の組み合わせをサンプルとして追加し、再度EOoptiでEI値の最適解探索を行わせます。以上を4回繰り返した結果が、図3.6に示す応答曲面です。図3.3に示すサンプル数24での応答曲面よりは劣りますが、図3.7に示す最適解の位置を見ると、x=-0.025、y=-0.108で最大値が1.98と、サンプル数36での結果に匹敵するような精度が得られています。

なお、EI値をもとにしたサンプル数の追加と精度の改善の詳細については、EOoptiのヘルプファイルをご覧ください。



図3.6 サンプル数12での結果にEI値最大となるサンプルを4個追加



図3.7 サンプル数による最適解の変化


次回は流体抵抗ができるだけ小さく、かつ断面積ができるだけ大きくなるような形状をSCRYU/Tetra®とEOoptiとにより求めてみます。

【参考文献】 ユーザーズガイド 最適化編(オプション)





著者プロフィール
御法川 学 氏 | 法政大学 理工学部 機械工学科 教授
環境計量士(騒音・振動) 1992年 法政大学大学院 工学研究科 機械工学専攻

1992年 株式会社荏原総合研究所 入社
1999年 法政大学工学部 助手
2001年 東京工業大学にて学位取得、博士(工学)
2004年 法政大学工学部 助教授
2010年 法政大学理工学部 教授




著者プロフィール
伊藤 孝宏 氏 | オリエンタルモーター株式会社 技術支援部主席研究員

1982年 筑波大学基礎工学類卒業。新日本製鉄株式会社に入社、加熱・冷却設備の開発に従事
1988年 オリエンタルモーター株式会社に入社、送風機の羽根・フレームの開発・設計に従事
2008年 法政大学にて学位取得、博士(工学)
2014年1月現在、オリエンタルモーター株式会社 技術支援部主席研究員

 

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