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事例で学ぶ!これだけは知っておきたい最適化の使い方~熱流体編 第4回 流体抵抗が最小となる形状の探索(1)

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事例で学ぶ!これだけは知っておきたい最適化の使い方

第4回 流体抵抗が最小となる形状の探索(1)

流れの中の物体には流れ方向に力が働き、この力を抗力と呼びます。抗力は物体が大きいほど大きく、また、物体の形状により異なることが知られています。つまり、体積が大きく、かつ、抗力が小さい形状というものが存在すると考えられます。今回は、EOoptiを用いて、体積が大きく、抗力が小さくなるような形状の探索を行ってみます。

探索の方針として以下のように考えます。解析が容易なように、2次元解析として、任意断面形状の柱の抗力係数を求めます。断面積ができるだけ大きく、抗力係数ができるだけ小さくなるような断面形状を求めることにします。ここで、断面積については代表長さを辺とする正方形の面積との比で無次元化します。
また、流体の粘性とスケールによる違い、例えば、昆虫のように小さくて比較的低速のものと自動車のように大きくて高速のものとでは、最適形状が異なるのかを調べるために、レイノルズ数が異なる条件において、最適形状の探索を行ってみます。

解析を行う前に、今回の最適化の際にキーとなる抗力係数とレイノルズ数について簡単に説明します。抗力係数CD は下記の式で表されます。




ここで、Dは抗力[N]、ρは流体の密度[kg/m3]、Uは物体と流体との相対速度[m/s]、Sは流れ方向への物体の投影面積[m2]です。投影面積SはCADで算出できます。また、抗力Dについては、SCRYU/TetraによるCFD解析により求められます。相対速度UはSCRYU/Tetraの境界条件の流入流速と同じです。また、密度ρは空気の物性値を用います。

SCRYU/Tetraによる抗力の算出について説明します。抗力は、摩擦抗力(物体表面の粘性による摩擦力)、形状抗力(流れの剥離により生ずる圧力差に起因する力)、誘導抗力(縦渦の発生による力)、造波抗力(衝撃波あるいは水面の波の発生による力)、干渉抗力(物体間の相互作用による力)からなりますが、今回、対象となるのは摩擦抗力と形状抗力です。摩擦抗力はSCRYU/Tetraの出力項目のうち、物体表面に働くせん断力の流れ方向成分になります。また、形状抗力は、同じく、物体表面に働く圧力の流れ方向成分となります。

SCRYU/Tetraにより解析を行うためにはモデルを作成する必要があります。今回のモデルは、図1.1に示すような、中心に任意断面形状の穴のある平板を作成し、平板部分を空気として、任意断面形状の空間周りの流れを解析します。これは、コンピュータ上で行う一種の風洞実験であり、数値風洞実験と呼ばれます。



図1.1 数値風洞モデル


レイノルズ数Reは下記の式で表されます。



ここで、Uは物体と流体との相対速度[m/s]、Lは代表長さ[m](代表長さとは基準となる寸法で、円柱の場合、直径が代表長さ)、νは動粘性係数[m2/s]です。レイノルズ数は、流れの慣性力と粘性力との比を表します。慣性力は流れを乱れやすくさせる方向に働き、粘性力は乱れにくくさせる方向に働くため、レイノルズ数が同じ状態では、流れの様子は同じとなります。このため、模型実験では実在の流れとレイノルズ数が同じとなるように条件を設定します。今回の解析では、モデルの寸法を1/10にしたものと、同じくモデルの寸法を10倍にし、流速を10倍にしたもの、すなわち、寸法100倍×流速10倍で、レイノルズ数が1000倍異なる2つの条件で解析を行います。

任意形状の作成方法について検討します。EOoptiは実験計画を前提としているため、あらかじめ形状を作成しておく必要があります。ここでは、任意形状として、完全な自由形状ではありませんが、図1.2に示すように、代表長さの直線の端点をそれぞれ始点と終点として、X座標が-D/2~D/2、Y座標が0~D/2の中間点を通るスプライン曲線を描き、流れ方向中心線を対称軸とするような断面形状を作成します。中間点のX座標とY座標を設計変数として、任意断面の面積と代表長さを辺とする正方形の面積との比、および、任意断面形状柱の抗力係数を目的関数として、面積比が最大、抗力係数が最小となるような最適解を求めます。なお、Y座標が0だと直線となってしまうため、Y座標の最小値は0より大きな値とします。



図1.2 任意形状の断面曲線



次回は、モデルの作成と条件設定を行います。


【参考文献】 機械工学便覧 流体工学、ユーザーズガイド 最適化編(オプション)





著者プロフィール
御法川 学 氏 | 法政大学 理工学部 機械工学科 教授
環境計量士(騒音・振動) 1992年 法政大学大学院 工学研究科 機械工学専攻

1992年 株式会社荏原総合研究所 入社
1999年 法政大学工学部 助手
2001年 東京工業大学にて学位取得、博士(工学)
2004年 法政大学工学部 助教授
2010年 法政大学理工学部 教授




著者プロフィール
伊藤 孝宏 氏 | オリエンタルモーター株式会社 技術支援部主席研究員

1982年 筑波大学基礎工学類卒業。新日本製鉄株式会社に入社、加熱・冷却設備の開発に従事
1988年 オリエンタルモーター株式会社に入社、送風機の羽根・フレームの開発・設計に従事
2008年 法政大学にて学位取得、博士(工学)
2014年1月現在、オリエンタルモーター株式会社 技術支援部主席研究員

 

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