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事例で学ぶ!これだけは知っておきたい最適化の使い方~熱流体編 第11回 ルーバーの最適形状(3)

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事例で学ぶ!これだけは知っておきたい最適化の使い方

ルーバーの最適設計として、ルーバー長さと角度を設計変数として、損失係数とピッチあたり長さが最小となる条件を探索しています。今回は、EOoptiにより最適解を探索した結果を説明します。

第9回の説明で、ピッチとルーバー長さと角度との関係から、ピッチあたり長さは角度のみによって決まることがわかっています。損失係数についても同様のことが言えるのか、応答曲面を見てみます。図3.1は損失係数の応答曲面を示したもので、図を見ると、長さLが変わっても図の縦軸の損失係数はほとんど変化しないことがわかります。すなわち、損失係数も角度のみに依存することがわかります。



図3.1 損失係数ζの応答曲面


最適解分布が図3.2になります。また、ピッチあたり長さ、損失係数ともに、角度のみに依存することから、ピッチあたり長さと損失係数の角度による変化を示したものが図3.3になります。図3.2、図3.3を見ると、ピッチあたり長さが2を超えるあたりから、角度を小さくしても、損失係数はさほど減少しなくなることがわかります。また、ピッチあたり長さが1.5を下回るあたりから、角度を大きくすると、損失係数が急速に増加することがわかります。ピッチあたり長さと損失係数とはトレードオフの関係にあり、損失係数を重視するか、ルーバーのコスト・サイズを重視するかによって最適な角度は変わります。ただし、トレードオフの効果の大きい角度範囲が存在し、図3.3から、30~40度が最適な角度範囲と考えられます。

つまり、ルーバー長さは数mmとか数百mmなどの極端な例を除けば、損失係数には、ほとんど影響せず、任意に設定できること、また、ルーバー角度が損失係数とピッチあたり長さに影響し、30~40度が最適な範囲であることがわかります。



図3.2 最適解分布



図3.3 損失係数ζとピッチあたり長さのルーバー角度による変化


図3.4、図3.5に、角度30度のルーバーの流速分布、圧力分布を、また、図3.6、図3.7に、角度40度のルーバーの流速分布、圧力分布を示します。 図3.4と図3.6を比べると、角度40度では、ルーバー先端での剥離域が増加し、ルーバー間の流速も大きいことがわかります。また、図3.5と図3.7から、角度40度では、ルーバー先端の流れの衝突する部分での圧力の高い領域も、流れの剥離域での圧力の低い領域もともに角度30度での結果よりも広いことがわかります。



図3.4 ルーバー長さ50mm、角度30度の流速分布



図3.5 ルーバー長さ50mm、角度30度の圧力分布



図3.6 ルーバー長さ50mm、角度40度の流速分布



図3.7 ルーバー長さ50mm、角度40度の圧力分布

 次回は、EOoptiとSCRYU/Tetraを用いて、模型飛行機の主翼の設計を行ってみます。


【参考文献】 機械工学便覧 流体工学、 ユーザーズガイド 最適化編(オプション)





著者プロフィール
御法川 学 氏 | 法政大学 理工学部 機械工学科 教授
環境計量士(騒音・振動) 1992年 法政大学大学院 工学研究科 機械工学専攻

1992年 株式会社荏原総合研究所 入社
1999年 法政大学工学部 助手
2001年 東京工業大学にて学位取得、博士(工学)
2004年 法政大学工学部 助教授
2010年 法政大学理工学部 教授




著者プロフィール
伊藤 孝宏 氏 | オリエンタルモーター株式会社 技術支援部主席研究員

1982年 筑波大学基礎工学類卒業。新日本製鉄株式会社に入社、加熱・冷却設備の開発に従事
1988年 オリエンタルモーター株式会社に入社、送風機の羽根・フレームの開発・設計に従事
2008年 法政大学にて学位取得、博士(工学)
2014年1月現在、オリエンタルモーター株式会社 技術支援部主席研究員

 

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