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事例で学ぶ!これだけは知っておきたい最適化の使い方~熱流体編 第17回 模型飛行機の設計 プロペラの翼断面形状(3)

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事例で学ぶ!これだけは知っておきたい最適化の使い方

プロペラの最適翼断面形状をEOoptiとSCRYU/Tetraを用いて検討した例を紹介しています。今回は、EOoptiによる最適解探索結果について説明します。

図3.1に最適設計パレート解分布を示します。横軸が翼トルクで、縦軸が推力を示します。推力は翼トルクに概ね比例して増加しますが、図のプロットは左上に向かって凸となっていて、パレート解の中でも、翼トルクの割合に対して推力が大きい、すなわち、より良い解が存在することがわかります。図3.2は、EOoptiに最悪設計例、すなわち翼トルクが最大で推力が最小となる条件を探索させた結果を赤いプロットで追加したものです。青いプロットで示す最適設計のパレート解に対して、赤いプロットで示す最悪設計のパレート解は、同一推力(例えば25N)において、翼トルクが約1.5倍に増加することがわかります。
 



図3.1 最適設計パレート解分布



図3.2 最適設計パレート解分布と最悪設計パレート解分布


最適設計例として、取付角α=16.9度、厚みパラメータξ0=0.05、反りパラメータη0=0.23のプロペラ形状をモデリングとCFD解析を行った結果を図3.2に最適設計例と示したプロットで示します。また、最悪設計例とし、同様に、α=30.0度、ξ0=0.07、η0=0.00のプロペラ形状での結果を図3.2に最悪設計例と示したプロットで示します。いずれも、最適設計パレート解、および最悪設計パレート解上にあり、EOoptiによる探索結果は問題ないものと考えられます。

最適設計例および最悪設計例の形状を図3.3に示します。図では表面圧力分布をコンター表示しています。最悪設計例を見ると、翼前縁に高い圧力が発生していることがわかります。図3.4は翼周りの相対流速分布を示したものです。最適設計例では、翼に対して平行に流れが流入していることがわかります。最悪設計例においても、翼は流れに対して平行に位置しているものの、翼前縁での流れの衝突と負圧面側での流れの剥離が見られます。図3.5は翼周りの圧力分布を示したものです。最適設計例では、正圧部分と負圧部分とが翼を挟んで回転軸方向に並んでいます。一方、最悪設計例では、翼前縁に高い静圧部分があり、負圧部分と回転方向に並んでいて、回転トルクを増加させる要因となっています。つまり、最適設計すなわち、推力が最大で回転トルクが最小となる翼形状は、正圧部分と負圧部分とが翼を挟んで回転軸方向に並ぶ流れ場を実現できるような形状であることがわかります。

最適設計例
最悪設計例

図3.3 外観形状


最適設計例
最悪設計例

図3.4 翼周りの相対流速分布


最適設計例
最悪設計例

図3.5 最適設計例および最悪設計例での翼周りの圧力分布


具体的にどのような形状で最適設計となるのかを見るために、パレート解の取付角αと厚みパラメータξ0と反りパラメータη0とをプロットしたのが図3.6です。図を見ると、厚みパラメータξ0の最適値は0.05で一定であるのに対して、取付角αと反りパラメータη0とには正の相関があり、取付角αが大きいと反りパラメータη0も大きくする必要があります。ただし、取付角αが10~20度では最適な反りパラメータη0はほぼ一定となっていて、断面形状が変わらずに取付角だけを変えることで推力を変える可変ピッチ翼とすることも可能であると考えられます。



図3.6 最適設計となる取付角・反りパラメータ・厚みパラメータ


次回は、電子機器熱設計における物性値の合わせ込みについて紹介します。


【参考文献】 機械工学便覧 流体工学、ユーザーズガイド 最適化編(オプション)





著者プロフィール
御法川 学 氏 | 法政大学 理工学部 機械工学科 教授
環境計量士(騒音・振動) 1992年 法政大学大学院 工学研究科 機械工学専攻

1992年 株式会社荏原総合研究所 入社
1999年 法政大学工学部 助手
2001年 東京工業大学にて学位取得、博士(工学)
2004年 法政大学工学部 助教授
2010年 法政大学理工学部 教授




著者プロフィール
伊藤 孝宏 氏 | オリエンタルモーター株式会社 技術支援部主席研究員

1982年 筑波大学基礎工学類卒業。新日本製鉄株式会社に入社、加熱・冷却設備の開発に従事
1988年 オリエンタルモーター株式会社に入社、送風機の羽根・フレームの開発・設計に従事
2008年 法政大学にて学位取得、博士(工学)
2014年1月現在、オリエンタルモーター株式会社 技術支援部主席研究員

 

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