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事例で学ぶ!これだけは知っておきたい最適化の使い方~熱流体編 第19回 電子機器熱設計における物性値の合わせこみ(2)

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最適化ツールEOoptiを用いて、物性値を合わせこむ方法について説明しています。第18回の説明では、熱伝導率や熱伝達率を設計変数として、EOoptiを用いてCFD解析結果が測定結果にもっとも等しくなる解を求めればよいことを説明しました。今回は対象となるモデルとEOoptiの設定項目について説明します。なお、今回は任意値への探索を行わせるため、EOoptiはV12RC1を用います。

図2.1に計算に用いたモデルを示します。パワートランジスタ5個、ダイオードブリッジと電源ICとが絶縁シートを介してヒートシンクに固定されています。絶縁シートは薄いため、CFD解析ではモデル化せず、接触熱伝達率として表現します。発熱部品は、この7点のほか、自立型のトランジスタで、その他については、発熱のない部品とします。 第18回の説明のように、素子の熱伝導率、基板の熱伝導率、素子とヒートシンク間の熱伝達率は、モデリングあるいは組み立て条件などにより変化しやすいため、これらを設計変数としてEOoptiで予測することにします。なお、解析を容易にするため、電源ICの熱伝導率、ダイオードブリッジの熱伝導率、パワートランジスタの熱伝導率は、同じ値と仮定します。

物性値などの公開値をもとに、それぞれの設計変数の範囲を決めます。ここでは、素子の熱伝導率は0.5~2.0W/mK、プリント基板の熱伝導率は0.2~0.8W/mK、素子とヒートシンク間の熱伝達率は1000~5000W/m2Kとします。



図2.1 DC電源


EOoptiを起動し、図2.2に示すように、設計変数名とその範囲を入力します。また、目的関数としては、電源ICのCFD解析による温度、ダイオードブリッジの温度、パワートランジスタ5の温度、プリント基板の温度の4種類とし、設計指針を「任意値を探索」とし、探索値に試作品での温度測定結果を入力します。 モデル数は設計変数が3つであるため、(3+1)×(3+2)=20とします。実験計画法の作成をクリックし、モデルの組み合わせを作成します。



図2.2 EOoptiの設定項目


STREAMあるいは熱設計PACのプリプロセッサを用いて、モデルを作成します。自然対流伝熱、開放空間への輻射として、図2.3に示すように、上下左右前後の面に流出入、開放空間への輻射を境界条件として設定し、メッシュ分割を行い、計算条件を指示するSファイルを出力します。 確認のため、ソルバーで計算してみます。問題なく解析結果が得られるようであれば、EOoptiの実験計画で作成された条件でSファイルを作成します。すべてのSファイルが揃ったら、ソルバーでバッチ処理を行います。



図2.3 熱設計PACでのCFDモデル作成


すべての結果が揃ったら、ポストプロセッサで結果を表示し、図2.4に示す測定結果に相当する箇所での温度を読み取ります。ポストプロセッサのピック機能を使い、測定結果の位置に相当する箇所の温度を表示させます。設定情報をステータスファイルとして保存し、以降、別な解析結果を読み取ったら、ステータスファイルを用いて該当する箇所の温度を表示させ、読み取ります。 読み取った結果をEOoptiに入力し最適化計算を行うと、熱伝導率と熱伝達率の予測結果が得られます。今回の例では、測定結果もCFDによる解析結果で代用しているため、EOoptiで予測した熱伝導率と熱伝達率とが、測定結果に相当するCFDモデルで設定された熱伝導率と熱伝達率と、どの程度一致するものかも見てみます。



図2.4 温度計測点


次回は、EOoptiでの合わせこみ結果について説明します。

【参考文献】JSMEテキストシリーズ 伝熱工学 日本機械学会、ユーザーズガイド 最適化編(オプション)





著者プロフィール
御法川 学 氏 | 法政大学 理工学部 機械工学科 教授
環境計量士(騒音・振動) 1992年 法政大学大学院 工学研究科 機械工学専攻

1992年 株式会社荏原総合研究所 入社
1999年 法政大学工学部 助手
2001年 東京工業大学にて学位取得、博士(工学)
2004年 法政大学工学部 助教授
2010年 法政大学理工学部 教授




著者プロフィール
伊藤 孝宏 氏 | オリエンタルモーター株式会社 技術支援部主席研究員

1982年 筑波大学基礎工学類卒業。新日本製鉄株式会社に入社、加熱・冷却設備の開発に従事
1988年 オリエンタルモーター株式会社に入社、送風機の羽根・フレームの開発・設計に従事
2008年 法政大学にて学位取得、博士(工学)
2014年1月現在、オリエンタルモーター株式会社 技術支援部主席研究員

 

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