Cradle

 

投稿一覧

事例で学ぶ!これだけは知っておきたい最適化の使い方~熱流体編 第22回 自然空冷型ヒートシンクの最適設計(2)

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
事例で学ぶ!これだけは知っておきたい最適化の使い方

最適化ツールEOoptiと熱設計PACによるヒートシンクの最適形状の探索について説明しています。今回は、モデル作成について説明します。

はじめに、設計変数とその範囲を決めます。今回はプレートフィン型のヒートシンクですから、フィンの縦横寸法とフィン数を対象とします。すなわち、図2.1でWidthと表示されたフィンの幅、同じくLengthと表示されたフィンの長さ、Finという変数のフィン数を変化させます。変化させる範囲は、フィン幅、フィン長さともに、25~50mm、フィン数は10~20とします。また、フィン数は離散値となるため、本来であれば連続量のフィン間隔を用いるべきですが、熱設計PACではフィン数をフィンモデルの諸元としていることから、今回は最適化にフィン数を用いることにします。設計変数はフィン縦横寸法とフィン数の3種類であるため、サンプル数は、(3+1)×(3+2)=20とします。



図2.1 ヒートシンク寸法


次に、目的関数は、ヒートシンクの熱抵抗Rth[℃/W]とヒートシンク外形の体積Volume[cm3]、すなわち、幅×長さ×奥行き寸法とし、いずれも最小値を探索とします。
ここで、ヒートシンクの熱抵抗は、図2.1に示すような水平に設置した状態と、フィン間の隙間が縦方向になるように90度回転させた状態との2種類で最適形状を求めてみます。水平設置と垂直設置とはCFDでは重力の方向が変わるだけなので、モデルやEOoptiのファイルはできるだけ共用するようにします。すなわち、水平設置での熱抵抗を例えばRth1として、熱設計PACモデルの重力方向はz軸負方向としたら、垂直設置については、水平方向でのEOoptiファイルの変数を例えばRth2として、同じくモデルの重力方向をy軸負方向とします。

EOoptiを起動し、図2.2に示すように、設計変数とその範囲、目的関数と設計指針などを入力し、実験計画を行います。作成されたデータを保存し、エクセルなどの表計算ソフトで保存したCSVファイルを開き、図2.3に示すような設計諸元表を作成します。
なお、実験計画はランダムに配置されるため、必ずしも図2.3と同じ結果となるとは限りません。



図2.2 EOopti設定画面



図2.3 設計諸元および結果入力表


図2.3の設計諸元表を基に熱設計PACでモデルを作成・解析することを行います。ここで、最初の行のモデルを作成から解析および結果表示までを行ってみて、問題ないことを確認した後、このモデルのフィンモデルの諸元だけを書き換えるようにしてすべてのモデルを作成し、バッチ処理で解析を行うようにします。こうすることで、ミスを減らすことと解析からモデル作成までの手間を省くことができます。
図2.4に解析モデルの全景を示します。解析空間をプレートフィンよりも十分大きくとり、境界条件は流出入と熱輻射の開放空間とします。なお、雰囲気温度は20℃とします。 図2.5はプレートフィン部分を拡大したものです。プレートフィン材質はアルミ合金とし、すべての条件で同じ位置になるようにプレートフィン諸元を入力します。発熱体は□20×2mmのアルミナとして、発熱量を10Wとします。発熱体とプレートフィン間には接触熱抵抗として0.6℃/Wを設定します。次いで、水平設置では重力をZ軸負方向に、垂直設置では重力をY軸負方向に切り替えて、メッシュを生成し、Sファイルを作成するといった一連の作業を設計諸元表に基づいて行います。その後、ソルバーを起動し、すべてのSファイルをバッチ処理により解析を行うと、結果が得られます。
参考までに今回の解析では、64ビットのワークステーションで、解析に要した時間は1モデルあたり11分で、20モデル×水平・垂直設置では7時間ほどになります。前日にモデルを作成して、夜間に解析を行わせれば、翌日には結果が得られることになります。



図2.4 解析モデル



図2.5 解析モデル(ヒートシンク部拡大)

次回は、EOoptiによるヒートシンク最適形状の探索結果について説明します。


【参考文献】JSMEテキストシリーズ 伝熱工学 日本機械学会、ユーザーズガイド 最適化編(オプション)





著者プロフィール
御法川 学 氏 | 法政大学 理工学部 機械工学科 教授
環境計量士(騒音・振動) 1992年 法政大学大学院 工学研究科 機械工学専攻

1992年 株式会社荏原総合研究所 入社
1999年 法政大学工学部 助手
2001年 東京工業大学にて学位取得、博士(工学)
2004年 法政大学工学部 助教授
2010年 法政大学理工学部 教授




著者プロフィール
伊藤 孝宏 氏 | オリエンタルモーター株式会社 技術支援部主席研究員

1982年 筑波大学基礎工学類卒業。新日本製鉄株式会社に入社、加熱・冷却設備の開発に従事
1988年 オリエンタルモーター株式会社に入社、送風機の羽根・フレームの開発・設計に従事
2008年 法政大学にて学位取得、博士(工学)
2014年1月現在、オリエンタルモーター株式会社 技術支援部主席研究員

 

最後までお読みいただきありがとうございます。ご意見、ご要望などございましたら、下記にご入力ください

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ピックアップコンテンツ