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事例で学ぶ!これだけは知っておきたい最適化の使い方~熱流体編 第25回 強制空冷型ヒートシンク用ファンの最適設計(2)

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事例で学ぶ!これだけは知っておきたい最適化の使い方

強制空冷型ヒートシンク用ファンの最適形状を、より冷却能力が大きく、より省エネルギであるということをポイントに探索します。冷却能力については、強制対流伝熱の式からヒートシンク近傍の流速が大きくなるようにすればよいことがわかりました。また、省エネルギであることについては、回転エネルギの式から羽根車に加わるトルクが小さくなるようにすればよいことがわかりました。以上のことを観点に羽根車の形状を探索します。応答曲面による最適化ではあらかじめモデルを作成しておく必要があります。今回は中心に遠心型ファンを有し、外周にフィンが放射状に配列されたヒートシンクとしてモデルを作成します。図2.1にモデル形状と寸法を示します。遠心ファンは、羽根車の内径が30mm、外径が50mmで、上から見て時計回りに3000r/mで回転するものとします。図では放射状に11枚の羽根が見えますが、この羽根の入口角と出口角を任意に変更することでファンの性能を変えられます。今回は、羽根入口角と出口角を設計変数とし、ヒートシンク近傍の流速と羽根車トルクを目的関数とします。



図2.1 強制空冷型ヒートシンク寸法


羽根車をモデリングする際に必要になる翼中心線の作図方法について説明します。翼中心線形状は各種ありますが、ここでは、1円弧からなる形状について説明します。 図2.2は翼中心線の形状を示したもので、図中、D1が羽根車内径、D2が外径、β1が入口角、β2が出口角です。始めに、xy軸と原点を中心としたD1、D2の同心円を作図します。次に、翼中心線の半径Rを(1)式で求めます。

翼中心線の円弧の原点は、原点を中心とした(2)式で表される半径rの円とy軸との交点となります。



(1)式でRを求め、次いで、(2)式でrを求めた後、原点を中心として半径rの円を作図し、先の円とy軸との交点を原点として半径Rの円を作図すると、羽根車内径D1から外径D2間の円弧が翼中心線となります。



図2.2 翼中心線形状


翼中心線が描けたら、図2.1にしたがって羽根車のモデルを作成し、ヒートシンクモデルと組み合わせて、図2.3に示すようなSCRYU/Tetra用のモデルを作成します。メッシュ作成は解適合格子を用いることとして、メッシュ作成から解析までをジョブファイルでコントロールします。問題なく解析できるようになったら、解析用ファイルのひな型とします。



図2.3 モデル全体


次に、EOoptiを起動し、実験計画を行います。ここでは、翼入口角、出口角の範囲は30~90度とします。目的関数については、ヒートシンク表面近傍の流速を最大値探索、羽根車トルクを最小値探索とします。「作成」をクリックし、図2.4に示すように実験計画を行い、入口角と出口角の組み合わせを作成します。入口角と出口角の組み合わせから羽根車をモデリングして、SCRYU/Tetra用の3次元モデルを作成します。次に、SCRYU/Tetraプリプロセッサを起動し、CADモデルのインポートからmdlファイルの作成までを行います。ここで、ひな型のジョブファイルとSファイルのファイル名を、作成したmdlファイル名に合わせて書き換えて、解析用ファイルとして再利用することで、メッシュ作成と解析を効率化させることができます。



図2.4 EOopti設定画面


以上のようにして解析した結果から、ヒートシンク近傍の流速については、ポストプロセッサで表面の領域としてヒートシンク表面を指定し、スカラー積分で流速の大きさの平均値を求めます(物体表面では流れは静止しているため、近傍流速を求めるには、あらかじめSファイルのFLDファイル変数で壁面での流速を、「壁近傍での値に」設定します)。また、羽根車トルクについては、あらかじめSファイルで圧力モーメントを出力する領域として羽根車表面を設定し、Lファイル中の圧力モーメントを読み取ります。 ヒートシンク表面近傍での流速と羽根車トルクが得られたら、それぞれの値をEOoptiのVelocity欄とTorque欄に入力し、「次へ」をクリックすると最適化計算を行うことができます。
 
次回は、最適形状の探索結果について説明します。


【参考文献】ターボ機械 入門編、ターボ機械協会、ユーザーズガイド 最適化編(オプション)





著者プロフィール
御法川 学 氏 | 法政大学 理工学部 機械工学科 教授
環境計量士(騒音・振動) 1992年 法政大学大学院 工学研究科 機械工学専攻

1992年 株式会社荏原総合研究所 入社
1999年 法政大学工学部 助手
2001年 東京工業大学にて学位取得、博士(工学)
2004年 法政大学工学部 助教授
2010年 法政大学理工学部 教授




著者プロフィール
伊藤 孝宏 氏 | オリエンタルモーター株式会社 技術支援部主席研究員

1982年 筑波大学基礎工学類卒業。新日本製鉄株式会社に入社、加熱・冷却設備の開発に従事
1988年 オリエンタルモーター株式会社に入社、送風機の羽根・フレームの開発・設計に従事
2008年 法政大学にて学位取得、博士(工学)
2014年1月現在、オリエンタルモーター株式会社 技術支援部主席研究員

 

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