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事例で学ぶ!これだけは知っておきたい最適化の使い方~熱流体編 第27回 電子機器の吸込み口・吐出し口の最適レイアウト設計(1)

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事例で学ぶ!これだけは知っておきたい最適化の使い方

開放型の電子機器のマクロな冷却性能すなわち放熱量については、主に換気流量に依存しますが、各部の温度といったミクロな冷却性能については、開口部の位置が大きく影響します。そこで、熱設計PACあるいはSTREAM(以降、熱設計PACと表示)およびEOoptiを用いて、開口部の最適レイアウトを検討した例を3回に渡って紹介します。
第1回目では、強制空冷筐体における開口部の最適レイアウトの概要とモデル作成について説明し、第2回目で最適レイアウトの検討結果について説明します。第3回目では、自然空冷筐体における開口部の最適レイアウトの検討結果について説明します。なお、EOopti操作の手順は共通しているため、第3回目では説明を一部省略します。

図1.1に一般的な電子機器の形状と部品構成を示します。箱型の筐体内に電子部品を搭載したプリント基板が収納され、パワー素子などの発熱量の大きな部品では冷却用にヒートシンクが用いられます。強制空冷型筐体では、この他に、換気用のファンを搭載しています。図1.1の構成では、吸込み口から流入した空気は筐体内を通過してファンから筐体外に流出します。図1.1では部品は左手前にありますが、吸込み口の位置、発熱素子の位置、ファンの位置は、ある程度自由に設定でき、これらの位置関係が、発熱素子の温度とプリント基板の温度に大きく影響します。すなわち、発熱素子の温度とプリント基板の温度が最小となるような、吸込み口の位置・発熱素子の位置・ファンの位置を求めることが、筐体レイアウトの最適化につながります。



図1.1 強制空冷型電子機器の形状および部品構成


図1.2に詳細寸法を示します。装置の横方向をX軸、奥行き方向をY軸として、筐体の前面に矩形で示した吸込み口は、X軸方向に0~180mmの任意の位置に設置できます。また、筐体天面に矩形で示したファンは、左手前を基準として、X軸方向に0~180mm、Y軸方向に0~130mmの任意の位置に設置できます。ヒートシンクとパワー素子については、装置が左右対称であるため、X軸方向については最大移動量の半分の0~90mm、Y軸方向に0~130mmの任意の位置に設置できます。設計変数の数は、5であるため、サンプル数は2次の多項式で近似すると仮定して、(5+1)×(5+2)=42とします。
最適化ツールEOoptiを起動し、設計変数を5、目的関数を2、サンプル数を42として、図1.3に示すように、設計変数の名称とその範囲を入力します。「作成」ボタンをクリックし、モデルの組み合わせを作成します。次に、熱設計PACを起動し、図1.4に示す諸元でモデルを作成します。モデルを作成したら、一度解析を行ってみて、問題がないことを確認した後、EOoptiで作成したモデルの組み合わせにしたがって、吸込み口、ファン、ヒートシンクおよびパワー素子の位置を修正したモデルを作成し、メッシュを生成します。以上のようにして、すべての計算モデルが完成したら、熱設計PACのソルバーを起動し、バッチ処理で解析を行います。すべての解析が完了したら、図1.5に示すように、解析結果ファイルからパワー素子および基板の平均温度を読み取り、EOoptiに入力あるいは、EOoptiから出力された条件CSVファイルに書き込みます。



図1.2 各部寸法



図1.3 EOoptiでの設定



図1.4 各部仕様



図1.5 解析結果をEOoptiに入力


次回は、EOoptiによる最適レイアウトの検討結果を説明します。


【参考文献】JSMEテキストシリーズ 伝熱工学 日本機械学会、ユーザーズガイド 最適化編(オプション)





著者プロフィール
御法川 学 氏 | 法政大学 理工学部 機械工学科 教授
環境計量士(騒音・振動) 1992年 法政大学大学院 工学研究科 機械工学専攻

1992年 株式会社荏原総合研究所 入社
1999年 法政大学工学部 助手
2001年 東京工業大学にて学位取得、博士(工学)
2004年 法政大学工学部 助教授
2010年 法政大学理工学部 教授




著者プロフィール
伊藤 孝宏 氏 | オリエンタルモーター株式会社 技術支援部主席研究員

1982年 筑波大学基礎工学類卒業。新日本製鉄株式会社に入社、加熱・冷却設備の開発に従事
1988年 オリエンタルモーター株式会社に入社、送風機の羽根・フレームの開発・設計に従事
2008年 法政大学にて学位取得、博士(工学)
2014年1月現在、オリエンタルモーター株式会社 技術支援部主席研究員

 

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