もっと知りたい! 熱流体解析の基礎13 第3章 流れ:3.2.2 圧力
3.2.2 圧力
圧力 は単位面積あたりに作用する力の大きさのことで、単位は Pa です。 圧力は スカラー量 であり、圧力に面の面積を掛けたものは、面の垂直方向に作用する力になります。単位の Pa は N/m2と等しいため、これに面積を掛けて得られる力の単位は N です。
図3.9 圧力によって面に作用する力の向き
地上における標準大気圧は 101,325 Pa になりますが、これは、1 m2の面積に作用する力で考えると、約 10 t の物体が置かれている状態に相当します。
図3.10 圧力と力
圧力の表現方法には、絶対圧力 と ゲージ圧力 の二種類があります。絶対圧力は完全な真空状態を基準として定義された圧力です。先ほどの標準大気圧は絶対圧力にあたります。一方、ゲージ圧力は測定時の大気圧を基準として定義された圧力です。そのため、気候や場所などの違いによって大気圧が異なれば、同じゲージ圧力であったとしても絶対圧力は異なります。絶対圧力とゲージ圧力の関係を図3.11に示します。多くの圧力計で計測される圧力はゲージ圧力です。
図3.11 絶対圧力とゲージ圧力の関係
もっと知りたい 圧力の単位
圧力は多くの単位が用いられている量の一つです。 天気予報で用いられている hPa には、1 hPa = 100 Pa の関係があります。また、90年代初頭まで天気予報で用いられていた mbar には、1 mbar = 10-3bar = 100 Pa の関係があります。
atm は標準大気圧を基準とする単位で 1 atm = 101,325 Pa の関係があります。
血圧などに用いられる mmHg は圧力とつり合う水銀柱の高さによって定義される単位です。760 mmHg = 101,325 Pa の関係がありますが、これは標準大気圧とつり合う水銀柱の高さが760 mm であることを示しています。なお、Torr は mmHg と同じ値を表したもので、1 Torr = 1 mmHg となります。
また、mmAq は、水銀の代わりに水を用いたときの液柱の高さに基づく単位で、1 mmAq = 9.80665 Pa の関係があります。
単位 | 値 |
---|---|
Pa | 101,325 |
hPa | 1,013.25 |
bar | 1.01325 |
mbar | 1,013.25 |
atm | 1.0 |
mmHg | 760.0 |
Torr | 760.0 |
mmAq | 10,332.3 |
もっと知りたい パスカルの原理
密閉容器が静止した 流体 で満たされているとき、任意の位置の圧力が増加すると流体中の圧力はすべて均等に増加します。これを パスカルの原理 といいます。
この原理を用いている身近な例が図3.12に示す油圧ジャッキです。圧力が力を面積で割ったものであることに注目すると、力を加える側の面(左側)よりも力を取り出す側の面(右側)を大きくしておくことで、面積比に応じて力を増幅できることがわかります。これによって、人力でも重いものを持ち上げられるようになります。
図3.12 油圧ジャッキの構造
著者プロフィール
上山 篤史 | 1983年9月 兵庫県生まれ
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程修了
博士(工学)
学生時代は流体・構造連成問題に対する計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、既存ユーザーの技術サポートやセミナー、トレーニング業務などを担当。執筆したコラムに「流体解析の基礎講座」がある。
最後までお読みいただきありがとうございます。ご意見、ご要望などございましたら、下記にご入力ください