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もっと知りたい! 熱流体解析の基礎27 第3章 流れ:3.5.7 循環

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もっと知りたい! 熱流体解析の基礎

3.5.7 循環

 浴槽の栓を抜くと、水は を作って排水口から流出します。このような 旋回流 の強さを表したものを 循環 といい、単位は m2/s です。 流れ の中に置かれた物体周りの流れが循環を持つ場合には、流れに垂直な方向に 揚力 が発生します。この揚力を与える式を クッタ・ジューコフスキーの定理 といいます。

 図3.54に示すように一様流中に置かれた円柱が回転し、円柱の周りに時計回りの循環が生じている場合を考えます。このとき、円柱周りの流れは上側で速く、下側で遅くなります。 ベルヌーイの定理 に基づけば、流れが速くなると 圧力 が低くなり、流れが遅くなると圧力は高くなるため、上側よりも速度が遅い下側の圧力のほうが高くなることがわかります。この圧力差によって、円柱には上向きの揚力が生じます。


流体要素の運動
図3.54 循環


 野球の変化球などもこれと同じ原理によるもので、ボールに回転をかけることによって揚力を発生させ、軌道を変化させています。回転する円柱や球に揚力が働く現象のことを マグヌス効果マグナス効果 )といいます。


野球の変化球(右ピッチャーのカーブ)
図3.55 野球の変化球(右ピッチャーのカーブ)


 もっと知りたい   飛行機が飛ぶ理由
 飛行機が滑走路を走行すると、翼の周りには循環が発生します。その結果、翼の上下の流れには速度差ができ、圧力差が生まれます。この圧力差によって生じた揚力で飛行機は飛んでいます。

 この速度差を生じる理由として、循環ではなく「同着理論」による説明がなされている場合があります。同着理論とは『翼の 前縁 で上下に分かれた流れが翼の 後縁 で同じ時間に合流するためには、距離が長い翼上面の速度のほうが速くならなければならない』というものですが、これは誤りです。


同着理論
図3.56 同着理論


 翼の前縁で分かれた流れが後縁で同じ時間に合流しないことは、いくつかの可視化実験によって証明されています。また、同着理論が正しければ、翼の上下の距離が等しい翼は揚力を発生できず、紙飛行機は飛ばないことになります。ところが実際には紙飛行機が飛ぶことからも、飛行機が飛ぶ理由を同着理論では説明できないことがわかります。





著者プロフィール
上山 篤史 | 1983年9月 兵庫県生まれ
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程修了
博士(工学)

学生時代は流体・構造連成問題に対する計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、既存ユーザーの技術サポートやセミナー、トレーニング業務などを担当。執筆したコラムに「流体解析の基礎講座」がある。 

 

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