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もっと知りたい! 熱流体解析の基礎32 第4章 伝熱:4.5.2 密度変化と浮力

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もっと知りたい! 熱流体解析の基礎

4.5.2 密度変化と浮力

 流体 中にある物体は流体から力を受けますが、このうち重力方向と逆向きの力のことを 浮力 といいます。物体の 密度 が流体の密度よりも大きければ、浮力よりも重力のほうが大きくなり物体は沈みます。逆に物体の密度が流体の密度よりも小さければ、重力よりも浮力のほうが大きくなり物体は浮かびます。

 多くの流体は 温度 が上がると膨張して密度が小さくなります。また、温度が下がると収縮して密度が大きくなります。これは例えばガリレオ温度計を見るとよくわかります。

 ガリレオ温度計とは、図4.11に示すような 液体 が満たされた容器の中に、複数の小さな容器が浮かべられた温度計のことです。小さな容器はそれぞれの密度が少しずつ異なっているため、気温の変化によって液体の密度が変化すると容器の浮き方が変化します。その浮き方によって温度がわかる仕組みです。


ガリレオ温度計の構造
図4.11 ガリレオ温度計の構造


 大きな容器に満たされる液体には、パラフィンなど温度変化に伴う密度変化が比較的大きな物質が用いられます。気温が高くなると、液体の密度が小さくなるため小さな容器は次第に沈んでいきます。逆に気温が低くなると、液体の密度が大きくなるため小さな容器は浮かんでいくというわけです。

 余談になりますが、ガリレオ温度計では図4.12 (a) のように液体の中ほどに漂う容器がある場合にはその値を読み取ります。図の場合には22 ℃になります。一方、(b) のように容器が上下に分かれた場合には、浮かんでいる容器の中で最も温度が低いものと沈んでいる容器の中で最も温度が高いものの中間がそのときの気温にあたります。図の場合には24 ℃と26 ℃の中間で約25 ℃となります。


ガリレオ温度計が示す温度
図4.12 ガリレオ温度計が示す温度


 ガリレオ温度計は液体中の物体の例でしたが、流体のみの場合であっても、流体の温度が均一ではなくなると、温度が高く相対的に密度が小さい流体では浮力の影響が大きくなります。図4.13のように熱気球が浮かんだり、浴槽で水面に近いところの温度が高くなったりするのも、暖かい空気や水が浮力によって上昇することによるものです。


身近な浮力の例
図4.13 身近な浮力の例





著者プロフィール
上山 篤史 | 1983年9月 兵庫県生まれ
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程修了
博士(工学)

学生時代は流体・構造連成問題に対する計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、既存ユーザーの技術サポートやセミナー、トレーニング業務などを担当。執筆したコラムに「流体解析の基礎講座」がある。 

 

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