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もっと知りたい! 熱流体解析の基礎52 第6章 熱流体解析の手法:6.3.1 解析領域

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もっと知りたい! 熱流体解析の基礎

6.3 空間の取り扱い

6.3.1 解析領域

 電卓で無限の計算ができないように、コンピューターが扱えるのは有限の値のみです。そのため、熱流体解析 を行う際には、ここからここまでというように、解析を行う有限の範囲を決めなければいけません。この範囲を定めた空間のことを 解析領域 といいます。

 室内の空調解析のように、閉じた空間の解析を行うのであれば、その定義は比較的容易です。部屋の形がそのまま解析領域となります。また、閉じた空間であっても円管内の 流れ の解析のように、上流や下流に空間が広がっている場合には、図6.13に示すように知りたい範囲を取り出して解析領域を定義します。



図6.13 円管内の流れと解析領域


 より難しいのは、明確な境界が存在しない場合です。例えば、航空機周りの流れを解析する場合を考えてみます。航空機の周囲には限りなく空が広がっており、素直に考えれば、解析領域は際限のない空間となります。しかし、これは無限と同じことであり、コンピューターで扱うことができません。そのため、図6.14に示すように現実の空間を適当なところで切り出して、解析領域とする必要があります。



図6.14 航空機周りの流れと解析領域


 さて、図6.13における上流側と下流側の切断面や、図6.14における解析領域周辺の面のように、解析領域の定義に伴ってできる境界面は、実在する面(壁)ではなく、あくまでも解析上の制約によって作られる仮想的な面となります。

 これらの面と流れが干渉し合うと、境界面の影響が着目している範囲に及び、本来とは異なる結果を与える場合があります。したがって、解析領域は対象物ぎりぎりの範囲に設定するのではなく、周辺に余裕を見た大きさにすることが推奨されます。

 例えば、図6.15の良くない例に示したように、流れの一部が境界面に重なってしまうと、破線で示した部分の流れは境界面の影響を受けたものになり、本来とは異なった結果が得られてしまう可能性があります。一方で、必要以上に解析領域を大きくすると、解析範囲が拡がった影響で無用な計算時間が増えることになります。



図6.15 解析領域の取り方


 理想は、境界面が着目している流れに影響を及ぼさない範囲で、大きさが最小となる解析領域を設定することです。そのためにはどのような流れになるのかをある程度予測できる必要があり、一定の経験や慣れが必要となります。推測が困難な場合には、解析領域の大きさを変えていくつか計算を行い、結果の傾向から最適な解析領域の大きさを見積もるというアプローチも有効です。





著者プロフィール
上山 篤史 | 1983年9月 兵庫県生まれ
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程修了
博士(工学)

学生時代は流体・構造連成問題に対する計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、既存ユーザーの技術サポートやセミナー、トレーニング業務などを担当。執筆したコラムに「流体解析の基礎講座」がある。   

 

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