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もっと知りたい! 熱流体解析の基礎53 第6章 熱流体解析の手法:6.3.2 空間の分割 (1)

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もっと知りたい! 熱流体解析の基礎

6.3.2 空間の分割 (1)

 解析領域 を定めたあとは、解析領域内のどの位置で計算を行うのかを決めていきます。これは天気予報に例えれば、天気の観測や予報を行う地点を決める作業になります。

 多くの 熱流体解析 では、計算を行う位置を決めるために解析領域を小さな空間に分割します。この作業をメッシュ作成や要素分割、格子生成などといい、分割された空間やその頂点に対して、有限体積法 差分法 などによって得られた関係式を当てはめて計算を行います。

 分割の一例を図6.16に示します。分割された小さな空間のことを 要素 セル といい、これらの集合を メッシュ 格子 といいます。また、要素の頂点のことを 節点 ノード といいます。図のように隣接する要素同士で節点を共有しているメッシュが、もっとも基本的な分割の仕方となります。



図6.16 空間の分割と語句の意味


 ところで、空間はどのように区切っても良いというわけではありません。粗い区切り方であれば、計算を行う回数は少なくなりますが、隣の情報までの距離が遠くなり、予測の精度は低くなります。これは天気予報に例えると、図6.17(a)のように東京の天気を遠方の北海道と沖縄の天気から予測するようなものです。

 一方、細かい区切り方にすると、計算を行う回数は増えますが、より近くの情報を使って計算を行えるため、予測の精度は高まります。天気の例であれば、図6.17(b)のように都道府県ごとに天気を予測するようなもので、観測地点が多い分、処理の時間は長く掛かりますが、東京の天気を近くの埼玉や神奈川、千葉の天気から予測できるため、精度は高くなります。



(a) 粗い区切り方の場合

(b) 細かい区切り方の場合
図6.17 観測地点の数と天気予報


 計算時間と精度は相反する関係にあり、両立することはできません。したがって、設計の初期段階など、比較を行いたいパターンが数多くある場合には、粗い分割として計算時間を抑えつつ大まかな方向性の検討を行い、ある程度パターンが絞り込まれてきたら、徐々に細かい分割として詳細な検討を行う、というように状況に応じて分割の仕方を変えることも重要といえます。

 もっと知りたい   様々な空間分割
 メッシュには、隣接する要素同士が節点を共有しないものもあります。例えば、ファンなどの回転機器の流れ解析では、図6.18(a)に示すようにメッシュをプロペラとケーシングに分けて作成し、プロペラの部分のみを回転移動させる場合があります。このような手法を 不連続接合 といい、メッシュ同士の接触面では節点が共有されません。

また、空間中を移動する物体周りの流れ解析では、図6.18(b)のように物体の周りと空間のそれぞれにメッシュを作成し、両者を重ねて全体の計算メッシュを構成することがあります。これを 重合格子 といいます。いずれの分割も、メッシュの位置関係に応じて双方で情報を交換しながら計算を行います。



(a) 不連続接合

(b) 重合格子
図6.18 さまざまなメッシュ

 熱流体解析の分野においては今のところメッシュに基づく手法が主流ですが、メッシュを用いない方法もあります。その代表例が 粒子法 です。これは粒子の集合によって流体を表現するもので、液相の分裂や合体が多い自由表面解析に強い手法です。なお、粒子法に対してメッシュに基づく手法を総称して 格子法 と呼ぶことがあります。



図6.19 格子法と粒子法





著者プロフィール
上山 篤史 | 1983年9月 兵庫県生まれ
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程修了
博士(工学)

学生時代は流体・構造連成問題に対する計算手法の研究に従事。入社後は、ソフトウェアクレイドル技術部コンサルティングエンジニアとして、既存ユーザーの技術サポートやセミナー、トレーニング業務などを担当。執筆したコラムに「流体解析の基礎講座」がある。   

 

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