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装置設計者のための騒音の基礎 第6回

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装置設計者のための騒音の基礎

A特性音圧レベル

 今回は、A特性音圧レベルについて説明します。

 A特性音圧レベルは、音圧レベルに人間の聴感に近い補正を行った音圧レベルで、LAで表します。通常の音圧レベルと区別するために、単位もdB(A)のように表示する場合があります。以前は、騒音レベルと呼ばれていましたが、計量法の改正により、A特性音圧レベルに呼称が統一されました。

 マイクロホンは同じ音圧であれば、周波数によらず出力は同じになります(厳密には感度の周波数特性がありますが、ほぼフラットになります)。ところが、人間の聴感は、低い周波数や高い周波数では、同じ音圧でも、小さな音と感じます。そのため、マイクロホンの出力をもとに騒音対策を行うと、さほど大きく感じられない周波数帯に対策を施すといった過ちを犯しかねません。そこで、騒音を評価する際は、人間の聴感にあわせて補正を行ったA特性音圧レベルが用いられます。

 例として、表1に同じ音圧の500Hz、1kHz、5kHz、10kHzの純音をWaveファイルで用意しました。クリックするとメディアプレイヤが動作し、音を10秒間再生します(あらかじめボリュームを低めに設定して試しに再生するなど、音量は適宜設定してください)。1kHzの音に対して、500Hzや10kHzの音は小さく感じられると思います。A特性補正は、1kHzの純音を基準に、同じ大きさと感じられるように、周波数ごとに補正値が定められています。A特性補正曲線を図1に示します。A特性補正は、音圧レベルに周波数ごとに補正値を加え合わせます。例えば、周波数500Hz成分の音圧レベルが50dBであったとすると、A特性音圧レベルでは、50-3.2=46.8dBとなります。騒音計には、A特性補正を行うフィルタ回路が内蔵されていて、A特性補正に設定すると計測結果は自動で補正されます。

表1 各種の周波数の純音
500Hz純音
500Hz.wav
1kHz純音
1kHz.wav
5kHz純音
5kHz.wav
10kHz純音
10kHz.wav

 
 なお、A特性補正曲線は、1kHz、40dBの純音と同じ大きさに聞こえる聴覚の周波数特性をおおよその形で表現したものです。実際には、より複雑な応答曲線であり、その曲線は音圧レベルによっても異なります(詳細は第8回の「音の大きさ」で説明します)。


図1 A特性補正曲線

 騒音は、必ずしも常時同じ値であるとは限りません。例えば、工場の機械や建設機械などは、動作状態によって騒音値も変動します。こうした場合、その状態を表すのに適した評価量をA特性音圧レベルから導いたものを用います。

 次回は、代表的な評価量である時間率騒音レベルと等価騒音レベルについて説明します。

【参考文献】 機械音響工学 鈴木ほか コロナ社 





著者プロフィール
御法川 学 氏 | 法政大学 理工学部 機械工学科 教授
環境計量士(騒音・振動)

1992年 法政大学大学院 工学研究科 機械工学専攻
1992年 株式会社荏原総合研究所 入社
1999年 法政大学工学部 助手
2001年 東京工業大学にて学位取得、博士(工学)
2004年 法政大学工学部 助教授
2010年 法政大学理工学部 教授




著者プロフィール
伊藤 孝宏 氏 | オリエンタルモーター株式会社 技術支援部主席研究員

1982年 筑波大学基礎工学類卒業。新日本製鉄株式会社に入社、加熱・冷却設備の開発に従事
1988年 オリエンタルモーター株式会社に入社、送風機の羽根・フレームの開発・設計に従事
2008年 法政大学にて学位取得、博士(工学)
2014年1月現在、オリエンタルモーター株式会社 技術支援部主席研究員

 

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