Cradle

 

投稿一覧

装置設計者のための騒音の基礎 第11回

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
装置設計者のための騒音の基礎

音響パワーレベルの計測方法

 今回は、音響パワーレベルの計測方法について説明します。

 音響パワーレベルの計測方法については、各種ありますが、マイクロホンを用いる方法としては、無響室法、半無響室法、残響室法、基準音源法の4つの方法があります。

 無響室は、音の反射がないように壁、天井、床をすべて吸音構造にした部屋です。無響室内では、音は無限空間に広がる状態となり、自由音場と呼ばれます。無響室法では、無響室内に設置した音源の周りに音源を原点とした半径r[m]の仮想球面上で20か所にマイクロホンを設置して、音圧レベルを計測します。測定された音圧レベルの平均値から下記の式により、音響パワーレベルLWを求めます。


 ここで、Lpmは測定点の平均音圧レベル、Srは半径r[m]の球表面積(Sr =4×π×r2)、S0は、基準面積(S0=1m2)、Cは温度や大気圧の影響による補正係数で通常はC=0
したがって、(1)は測定半径r[m]を用いて、であるので、



となります。

 半無響室法は、無響室のうち、床面が音を反射する素材(コンクリートなど)で構成した部屋(半無響室)を用いる方法です。半無響室内に設置した音源の周りに音源を原点とした半径r[m]の半球面上で10か所にマイクロホンを設置して、音圧レベルを計測します。半球面を通過する音響インテンシティは床からの反射成分も含むため、(1)式のSrは、半径r[m]の半球の表面積すなわちSr =2×π×r2となります。したがって、(1)式は、半径r[m]を用いて、であるので、



となります。

 無響室に対して、残響室は、壁面と天井と床が音を反射させる部屋であり、残響室内での音圧レベルはほぼ一定となり、拡散音場と呼ばれます。残響室法は、残響室を用いて音響パワーレベルを計測する方法で、音源を設置した残響室内で3点以上の音圧レベルを計測した平均値を用いて、下記の式により、音響パワーレベルLWを求めます。


 ここで、Lpmは測定点の平均音圧レベル、Tは残響時間[s]、Vは室容積[m3]で、T0=1sは基準時間、V0=1m3は基準容積です。
残響時間Tは、音源が停止してから音圧レベルが60dB低下するまでの時間で、音源が停止してからの音圧レベル変化の傾きを測定により求め、60を音圧レベル変化の傾きで割ることで求められます。

 (4)式について、詳しく説明します。
 残響室内での音の強さIは、下記の式で表されます。



 ここで、Wは音響パワー[W]、Sは残響室の表面積[m2]、αは壁面の平均吸音率
 したがって、音圧レベルは音響インテンシティレベルと等しいことから、




 一方、壁面の吸音率αと室表面積Sとの積は、残響時間Tと室容積Vとから、以下のように表せます。


 したがって、(6)式に(7)式を代入して、基準音響パワーW0=10-12Wを考慮すると、



 となります。(4)式は、(8)式からLWを求め、TとVを無次元化させるため、それぞれ基準値T0とV0で割っています。
 
 ここで、音響パワーが既知の音源を残響室内に設置して、音圧レベルを測定すれば、(4)式の第2項と第3項は、以下のように求められます。



 既知の音源の音響パワーをLWr、既知の音源を設置した際の残響室内の音圧レベルとLprとすると、(4)式は以下のようになり、残響時間を計測する必要がなくなります。



 これが基準音源法と呼ばれる方法で、基準音源法では、あらかじめ残響室内で音響パワーが既知の音源の音圧レベルを測定した後、測定したい音源の音圧レベルを測定し、(10)式を用いて、音源の音響パワーを求めます。

 次回は、騒音計のしくみについて説明します。

 

【参考文献】 機械音響工学 鈴木ほか コロナ社 





著者プロフィール
御法川 学 氏 | 法政大学 理工学部 機械工学科 教授
環境計量士(騒音・振動)

1992年 法政大学大学院 工学研究科 機械工学専攻
1992年 株式会社荏原総合研究所 入社
1999年 法政大学工学部 助手
2001年 東京工業大学にて学位取得、博士(工学)
2004年 法政大学工学部 助教授
2010年 法政大学理工学部 教授




著者プロフィール
伊藤 孝宏 氏 | オリエンタルモーター株式会社 技術支援部主席研究員

1982年 筑波大学基礎工学類卒業。新日本製鉄株式会社に入社、加熱・冷却設備の開発に従事
1988年 オリエンタルモーター株式会社に入社、送風機の羽根・フレームの開発・設計に従事
2008年 法政大学にて学位取得、博士(工学)
2014年1月現在、オリエンタルモーター株式会社 技術支援部主席研究員

 

最後までお読みいただきありがとうございます。ご意見、ご要望などございましたら、下記にご入力ください

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ピックアップコンテンツ